2017年2月のワンマンをもってベースの彩菜が懐妊、結婚の為にバンドを脱退しサポートメンバーを迎えて活動してきたサイフォニカ。彩菜の突然の脱退は関係者、リスナー、そして信太郎、ちゃんかなにも衝撃を与える出来事だった。作品を重ねるごとに着実に成長しトリプルヴォーカルとしてのスタイルを確立してきた中での脱退はバンドにとって試練だった。だがバンドは止まらなかった。新メンバーにルカを迎え、新生サイフォニカとして始動したのだ。早くも届いたアルバム『生キタ、カセキ』からは変化を受け入れることで人間としてもバンドとしても成長した彼らの覚悟と決意を感じることが出来るだろう。ここから始まるサイフォニカ第2章に期待して欲しい。
Q.今作から新メンバーとしてルカちゃんが加入しましたが、どのように出会ったのですか?
ちゃんかな:彩菜ちゃんの脱退が決まってすぐに私が昔通っていた音楽の専門学校に「女の子のベースを紹介して!」って駆け込んだんですよ。それで先生が「良いベースいるよ」ってルカちゃんの動画を見せてくれたんです。
Q.その動画を見た印象は?
ちゃんかな:髪の毛が短くてメンズっぽさがあったので私と近い匂いを感じました。あと雰囲気も良い感じで暗そうだったのでサイフォニカっぽいかなって(笑)。それで学校で待ち伏せしたんです。
ルカ:いきなり声を掛けられてサイフォニカのミュージックビデオを見せられました(笑)。
ちゃんかな:かなり一方的に喋った記憶が(笑)。そのままその場で勧誘しましたし(笑)。
Q.ルカちゃんはメンバーに誘われてどう思いました?
ルカ:ミュージックビデオを見てメンバー全員が歌っているのがかっこいいと思ったし一緒にやってみたいなって思いました。それでしばらくサポートメンバーとして活動することになり、今回正式に加入することになりました。
Q.アルバムの制作はいつ頃から行っていたのですか?
信太郎:彩菜ちゃんが脱退する前から曲自体は作っていました。でも歌詞は脱退が決まってから書き上げたものが多いですね。
Q.サイフォニカの最大の魅力はメンバー全員が歌うことであったり個性が重なったときの三原色だと思うのですが、その内のひとりが変わるのはバンドにとって大きな出来事ですよね。
信太郎:かなり大きいですね。僕は変化を受け入れるのに時間が掛かるタイプなので彩菜ちゃんの脱退を頭で理解するまで時間も掛かったんですよ。実際に受け入れることが出来たのも脱退ライブが終わって彩菜ちゃんの結婚式に参加したくらいのときだったので。スタジオに入っても「彩菜ちゃんはもういないんだな」ってずっと思っていましたから(笑)。
ちゃんかな:失恋したみたいだったよね(笑)。
信太郎:うん。でもかながルカちゃんを誘って僕も動画を見させてもらったら凄く良かったんですよ。それでサポートをしてもらうことになったんですけど無理矢理でも正式メンバーに引きずり込みたいなって割と早い段階で思いました(笑)。
ルカ:引きずり込むって(笑)。
信太郎:言葉は悪いけどそれくらいの気持ちでいかなきゃなって思っていたよ。
Q.それくらい信太郎君にとっては別れも出会いも大きかったと。ちゃんかなはどうでした?
ちゃんかな:私はずっと前向きだったのでメンバーが変わっても前に進むことしか考えてなかったですね。
信太郎:僕も前に進みたい気持ちは強いんですよ。だけど出てくる言葉がマイナスの言葉ばかりなんです。変化に対する免疫がないというか。
Q.変化をどう受け入れるかというのはアルバム全体のテーマにもなっていますよね。
信太郎:メンバーが抜けてバンドが変化せざるを得ない状況になり、サイフォニカとして僕が今書きたかったテーマが変化についてだったんですよ。やっぱり僕は変化を受け入れることが中々出来なくて、バンドって変わっちゃいけないと思っていたし周りのバンドが変わっていくのも許せないタイプなんですよ。
Q.はい。だけどサイフォニカは変わらざるを得なかった訳で。
信太郎:そうなんです。その変化を受け入れられたのもアルバムを作る直前のことで、
その変化をやっと受け入れることが出来たのが彩菜ちゃんの結婚式に参加したときなんですよね。それが僕にとって前に進むことなのかどうかは今でも分からないけどそう思えたってことはきっと変わったんだと思います。人間として成長出来たのかな?
ちゃんかな:彩菜ちゃんが私と信太郎の間に挟まれることが多かったようにきっとルカちゃんも私達の間に立たされることが多いと思っていて。だからこそ守ってあげたいって感情も芽生えているんですよ。私達より年齢も若いので何処か親心みたいなものもあって。そういう面でも成長させてもらっている気がしますね。
Q.モーニング娘。に2期生が入ってきたことで1期生が成長したような。
ちゃんかな:あははは。それ凄く分かります。私が前のバンドでこういう世界に入ったときってまだ学生だったから右も左も分からなかったんですよ。だから当時の私は今のルカちゃんと同じ状況だった訳だしルカちゃんの気持ちが分かってあげられると思うんですよね。だから上手くバランスを取りながら新体制のサイフォニカを楽しく進めていければなって思っています。
Q.ルカちゃんはサイフォニカに入ってみてどうですか?
ルカ:私は人見知りなので最初は不安もありましたけど今はバンドの空気感も掴めてきたので楽しいですね。
ちゃんかな:彩菜ちゃんが脱退するワンマンに本当は来てくれる予定だったんですけど体調不良で来れなくなって、しばらく名古屋のライブがなかったから東京まで着いてきてもらってライブを観てもらったんですよ。固定でサポートしてもらう為にも関係性を築きたかったので。その流れでレコーディングも出来たので良かったと思います。
ルカ:二人ともたくさん喋りかけてくれたんで早く打ち解けることが出来ました。
信太郎:かなも僕も娘が出来た気分なんですよね。彩菜ちゃんがいたサイフォニカも僕は家族だと思っていたけどルカちゃんが入ったサイフォニカはちょっと関係性が違う家族みたいな。前は3兄弟だったのが今は保護者みたいな気持ちもあるんです(笑)。
Q.新体制になり曲の作り方は変わりました?
信太郎:そうですね。前は弾き語りから作ることが多かったんですけど今回はMIDIで作るようになりました。僕が作ったものをかなが壊す編曲の仕方は変わってないですけど(笑)。あと声の扱い方が変わりましたね。彩菜ちゃんが高い声だったじゃないですか。でもルカちゃんはかなと音域が近いから使い分けには試行錯誤しましたね。
ルカ:彩菜さんの声って高くて綺麗だったので私には歌えないなって。そこは不安でした。「私で大丈夫かな?」って。でもサイフォニカは3人が歌ってなんぼだと思うので、上手くちゃんかなさんと信太郎さんの隙間に入り込むような歌が歌えたらなって思っています。
ちゃんかな:昔の曲もまだライブではやってないんですけどそこもルカちゃんと再構築していければなって思っていますね。私が彩菜ちゃんのパートを歌っても良い訳だし。そのバランスはこれから取っていければと思っています。
Q.色んな状況が変化していく中で確実に強くなりましたよね。変化を受け入れたことはバンドのプラスになっていると思います。
信太郎:自分が成長出来たかどうかの判断って自分では中々難しいんですけど、ひとつ思ったのは許せることが増えたなって思ったんですよ。丸くなった訳じゃないけど許せるようになった。そこはアルバムにも出ていると思います。自分達に起きた変化を自分達が前向きに受け入れることが出来たのは許せたからなんだと思うんです。そう考えると成長したなって思いますね。
Q.それはこうやって話をしていても感じますよ。以前のインタビューに比べて信太郎君が軽やかというか楽しそうなんですよね。
信太郎:確かにバンドが和らかくなった気はします。
ルカ:私はスタジオでも信太郎さんにずっと笑ってるんですよ(笑)。
ちゃんかな:ルカちゃんが相手してくれるから信太郎に居場所が出来たんですよ(笑)。
信太郎:居場所って(笑)。
ちゃんかな:前は曲を作るたびに険悪な感じになることも多かったけど、今はお互い笑い合うことが増えた気がします。
信太郎:それは作曲者として作った曲を壊される戸惑いからですね。でも最近になってサイフォニカは一度壊した方が良い曲になることが分かったので。
ちゃんかな:私は信太郎が作った曲を結構がっつり壊すんですよ。しかも何の根拠もなく言いたいことを言うので、試した結果上手くいけば良いんですけど結局ボツになることもあるので、そうなると険悪ですね(笑)。
Q.あははは。そうやってぶつかりながら出来上がったアルバムですが、今回はいつにも増して感情の起伏がありますよね。語弊があるかもしれませんが人間っぽさが増したというか。それは人としての成長がそうさせたのかもしれませんが。
ちゃんかな:ああ、それはあるかも。
信太郎:結局僕はサイフォニカをやれていることが幸せだし楽しいんですよね。その気持ちが前よりも更に強くなっているんですよ。ただ楽しい気持ちとは裏腹に歌詞はダウナーですけど(笑)。でもそれがサイフォニカなんですよね。それに僕らが今サイフォニカを楽しんでやれてなかったらバンドを辞めた彩菜ちゃんが責任を感じてしまうじゃないですか。彼女の為にも、勿論入ってくれたルカちゃんの為にも、サイフォニカを楽しんでやっていきたいと思っています。僕はメンバーが抜けたことを無かったことにしたくないんですよ。積み重ねてきたこと、彩菜ちゃんがいたこと、ルカちゃんが入ったこと、全部大切にしたいんです。点じゃなくて線。サイフォニカはそういうバンドでいたいと思っています。
アーティスト名:サイフォニカ
タイトル:生キタ、カセキ
2017年10月25日発売
タワーレコード流通盤
PSYR-007
メンバー
ちゃんかな(Dr&Vo.)
竹内信太郎(Vo&Gt.)
ルカ(Ba&Vo)
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