BRAHMAN

2月7日にアルバム『梵唄 -bonbai-』を発売、その2日後の2月9日には日本武道館でのワンマン公演を行ったBRAHMAN。この日の武道館は360度包囲の八角形のステージが端でも横でもなく真ん中に凛と構えており、まるで武道館が武道館として在るがままの姿でBRAHMANを迎えているかのように感じた。集まった1万2千人ひとりひとりに「次はお前が問う番だ」とバトンを繋いだBRAHMAN。それは彼らが先人から受け継いできたものであり、これからも大事にしていくものだと思う。これまで4人としてのBRAHMANを貫いてきた彼らが多くの仲間と共に作り上げたアルバム『梵唄 -bonbai-』、そして仲間と共に立った武道館でのライブは「縁」が生んだ賜物である。武道館公演を終えたばかりのTOSHI-LOWに話を訊く。

Q.武道館、素晴らしかったです。
TOSHI-LOW:本当?だったら良かったよ。

Q.武道館でのライブはいつ頃から考えていたのですか?
TOSHI-LOW:1年前くらいかな。最初は武道館が空いている日が1日あるんだけどどうする?って話から始まって。 でもいざやろうと思ったら、武道館側に「こんなバンドです」って資料を色々見せなきゃいけないんだけど、やっぱりそこは武道館だから規制がいっぱいあって。俺達の映像とか見たんだろうね。「これはちょっとうちでは無理です」って。だから最初から規制ありきだったわけ。

Q.確かに普段のBRAHMANのライブのままでは全NGですよね(笑)。
TOSHI-LOW:絶対に全NGだよ。あともうひとつ「猥褻行為をしない」って書いてあったんだけど、猥褻行為ってなんだよって(笑)。

Q.RONZIさんがいる以上そこも危ぶまれますけど(笑)。
TOSHI-LOW:存在が猥褻だからね(笑)。まあそれは置いておいて、どうやってやろうかなって思ったけど、他の人の武道館を観にいって思うのは武道館の一面を潰してやるような不細工な形にはしたくなかったんだよね。だってそれは本来の形じゃないから。自分達がやるなら在るがままの武道館でやりたかったんだよね。

Q.それで八面玲瓏だったんですね。
TOSHI-LOW:そうそう。本当に形に出来るとは思ってなかったけどね(笑)。

Q.360度囲まれたステージでのライブはやはり全然違いますか?
TOSHI-LOW:後ろにも客がいる訳だから全然違うよ。俺はバンドをやってるから普段から袖で観たりアンプの裏から観たりするけど、本当にかっこいいバンドは何処から観てもかっこいいんだよね。武道館の翌々日に消毒GIGでGAUZEを観たんだけど、背中越しのシンさんとか超かっこよかったからね。

Q.普段観れない角度からBRAHMANのライブを観れるのは面白かったですね。
TOSHI-LOW:昔、上野美術館に日光菩薩と月光菩薩を見にいったんだけど後ろに回れるから興奮してずっと後ろから見てたんだよ。あれは面白かったよね。子供が疲れて泣き出すまで見てたから(笑)。

Q.ゲストが出てくるトンネルも良かったですね。
TOSHI-LOW:あれも逆転の発想なんだけど、ゲストを呼んでライブの進行がグダグダになるのが嫌だったんだよね。俺達のライブってそもそも曲間がないでしょ。だからそこをどう詰めるか考えた結果、ステージのギリギリまでトンネルを作ることにして。その結果、みんながステージにポンって現れる感じになったんだよね。

Q.アルバムにも武道館のライブにもゲストが参加することはBRAHMANとしては新しい試みだなと思いました。
TOSHI-LOW:4人だけのライブを観たい人がいるのは分かるんだけど、今の自分達らしい自分達って、仲間達も含めて自分達だっていうのが自然なことで。それでせっかく武道館みたいな仲間を呼び込める場所でやるんだったら仲間にも出てもらった方が楽しいじゃんっていう。

Q.震災以降のBRAHMANの行動や活動が繋いだものがひとつの形になったアルバムであり、ライブだったなと。
TOSHI-LOW:人と付き合うってことだよね。今の俺達はそこを解放しているから。逆を返せば4人が強くなったからだと思うよ。この4人がいれば誰が入ってきてもBRAHMANであるってことはもう揺ぎ無いものになったから。だからこそ、むしろウェルカムなんだよね。自分達を写してくれる鏡だって人な訳だし、4人で閉じ篭ってやることは散々やってきたからね。それよりまだ俺達がやってないこと、やってこなかったことに興味があるんだよ。残されているバンド人生がどれくらいなのかは分からないけど、人と鳴らす機会があったらやりたいなって。

Q.ここにきて新しい音楽の楽しみ方を知ったと。
TOSHI-LOW:うん。今回スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)とやったでしょ?BRAHMANでギターとベースとドラム以外の音が入るのは初めてだからね。それも凄く面白かった。だからってオーケストラをいれてみようとかは思わないけどさ(笑)。

Q.アルバムにも武道館にも多彩なゲストが参加されましたが、武道館のライブでは、みなさん一瞬にかける思いが凄かったですね。
TOSHI-LOW:武道をする場所だからね。戦いから逃れられないんだと思うよ。勿論競り合ってる訳じゃないけど、ミュージシャン同士、まだ負けねえよって心はきっとみんなあるし、なにより武道館のセンターステージには個々が己と戦わないと立てないから。前とも横とも後ろとも戦わないといけないし、己とも戦わないといけないんだから。そりゃ凄いライブをしてくれる訳だよね。

Q.TOSHI-LOWさんは武道館のステージに立って何を思いましたか?
TOSHI-LOW:武道館でどんなステージにするか飲み屋で絵を描いて話したんだけど、俺の下手糞な絵がそのまま形になっていて、何だか夢の中にいるみたいな感じがしたね。「チャーリーとチョコレート工場」みたいな。なんかあの感じがしたんだよね。だから緊張とかは全くなかったかな。

Q.思い描いていたものが現実になったと。
TOSHI-LOW:そう。「武道館ってこうだよね」っていう理想が形になってた。

Q.あのステージで「守破離」を歌うKOさん(SLANG)の存在感の大きさは衝撃でした。
TOSHI-LOW:タマネギに頭が届いちゃうんじゃないかってびっくりしたよ(笑)。日の丸をのれんみたいに潜った人は初めてなんじゃない?(笑)。

Q.KOさん、BOSSさん(THA BLUE HERB)の札幌のお二人には本当に痺れました。
TOSHI-LOW:かっこ良かったよね。俺も横で観てて「かっけー!」って思ったもん。

Q.ハナレグミの永積タカシさんとの「ナミノウタゲ」も素晴らしかったです。この振り幅はBRAHMANならではですよね。
TOSHI-LOW:俺達は人間として芯がある人とやりたいんだよ。ジャンルとかは関係ない。逆に音楽を商売としてしか捉えていない奴や音楽を名声の手段にする奴とは噛み合わないと思う。音楽的にいくら上手かったとしても興味がないね。

Q.音だけじゃなく、誰と何故やるかっていう。例えばホーンの音が欲しいだけだったら極端な話、ホーンの音を鳴らせばいいだけじゃないですか。そうじゃなくて、縁があって、スカパラのあの4人と音を鳴らしたくて呼んでいるのがあのライブからしっかり伝わりました。
TOSHI-LOW:そう、大事にしているのは縁なんだよ。縁のないものを取ってつけても意味がないから。俺達はこれまで縁があっても一緒に音を鳴らすことをしてこなかったから、今やれて良かったよね。そういうタイミングが来たんだと思うよ。

Q.それは細美武士さんと歌う「今夜」の歌詞でも歌われていますよね。
TOSHI-LOW:東日本大震災が起きなかったら仲良くなってないだろうしね。地震が起きて福島に突っ走っていくときに「俺も行く」って言ってくれたのはあいつだけだったから。そのときは「お前は行かなくていいよ」って言ったけど心の中では嬉しかった。

Q.95年1月17日に阪神淡路大震災が起きて「満月の夕」が歌われて、2011年の東日本大震災でその歌を沢山のミュージシャンが歌い、2018年にBRAHMANが日の丸の下で中川敬さん、山口洋さん、うつみようこさんと「満月の夕」を歌うことは音楽の役目というか、強さを感じました。
TOSHI-LOW:23年前にあの人達が種を植えたから17年後に起きた東日本大震災では動くミュージシャンがいたんだと思うしね。

Q.本当はこの曲が必要じゃなくなる日が来たら良いのかもしれませんが。
TOSHI-LOW:勿論。でもこの日本では必ず震災は起きるからね。「絶対安全です」とかアホかと。絶対安全なんてないんだよ。だから人間は自然に畏怖の念と尊敬を抱いて、自然を汚さない、生きさせてもらってることを忘れちゃいけないんだよ。

Q.震災後、岩手で話した人が自然を恨んでいないと話してくれたことがあって。
TOSHI-LOW:そうだよね。自然からは豊かなものも貰えるし資源も魚も貰っている。「満月の夕」も95年の1月17日に震災が起きて、その1ヶ月後に満月が出たんだけど、まだ余震がある中で巨大地震がまた来そうで怖いっていう被災地の人達がいたんだって。その中で生まれた曲なんだよね。月を見るのが怖いって人達の前で当時あの歌が歌われたことで安心した人は沢山いるんじゃないかな。

Q.音楽にはそういう力がありますからね。
TOSHI-LOW:絶対あるよ。もしかしたら太古の昔はそういうもので始まったのかもしれないしね。

Q.原始時代とかそうかもしれないですよね。音楽という概念はなくても狩の歌を歌ったり雨乞いの歌を歌ったり。
TOSHI-LOW:それが踊りが先だったって言われてるんだよね。だからリズムが先で、そこに歌が加わったんじゃないかな。

Q.踊って興奮して声が出ちゃったのが歌になったのかもしれないですね(笑)。
TOSHI-LOW:ヒャッフー!みたいなね(笑)。

Q.武道館のライブを観て、アルバムを聴いて感じたのですが、BRAHMANとしてのTOSHI-LOWさんと普段のTOSHI-LOWさんの差がどんどん無くなっていっている気がしたんですけど。
TOSHI-LOW:普段の生活とステージの上では違うし、気合いを入れないと上がれないんだけど、本当はそうやって生きていくべきなのかもなって。子供と遊んでいるときも武道館でライブするときも同じ熱量でやらないと、例えばそれが子供と遊ぶ最後の日になってしまったら絶対に後悔すると思うのよ。そう思ってずっと歌ってきたんだけど、それでも何処かで分けてしまっていたと思う。だから全部を全力でやりたいなって思っているんだよね。それは別にただ汗をかけば良いって話じゃなくて、今出来ることを最大限にやるってこと。何かが起きたときに人間としてどう行動するかだと思うんだけど、そのときにBRAHMANだからとかどうでも良いじゃん。いち人間としてやることが全てだと思うよ。

Q.TOSHI-LOWさんは「真善美」で「お前が問う番だ」と武道館に集まった1万2千人に、アルバムを聴いた人にバトンを渡しました。そのバトンはTOSHI-LOWさんが先人から受け取ってきたバトンであって、そのバトンを受け取った人達がどんな行動をするか、それが凄く楽しみだなと思いました。
TOSHI-LOW:それがあるから俺は武道館みたいなところでライブをやったんだよ。それは自分達だけで終わらせちゃいけないっていう使命感もある。終わらせちゃいけない衝動を伝えたいんだよね。音楽なんて自分のものだけど、自分だけじゃなりたたないんだよ。誰かに伝えられるものじゃないと残らないし、そもそも自分も感動させれないと思う。

Q.あの日武道館にいた1万2千人はBRAHMANと1対1だったと思うんです。全員がそれぞれのバトンをBRAHMANから受け取った。そういう個の山なんだと思うんですよね。
TOSHI-LOW:俺はお前に歌ったからね。それが1万2千通りあったっていう。

Q.確かに受け取りました。ライブが終わってみんなで話していたんですけど、みんながみんな「受け取った」と言ってましたから。
TOSHI-LOW:あの日はバンドマンも沢山来てくれたんだけど、時代が流れて行く中で諦めるバンドマンもいる訳よ。そんな奴らが目をギラギラさせて「受け取ったよ」って俺のとこに来るわけ。俺はそれが本当に嬉しくて。それが若い奴らだったらもっと凄いことをやるだろうしさ。みんなをそう思わせる何かがあの一瞬の熱狂の中にあったんだとしたら、その瞬間こそ真実だし、武道館をやって良かったと思うよ。


BRAHMAN
タイトル:梵唄 -bonbai-
【初回限定盤】(CD+DVD)
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NOW ON SALE

“BRAHMAN Tour 2018 梵匿 -bonnoku-”
3月3日(土)山口 周南RISING HALL
3月4日(日)広島CLUB QUATTRO
3月7日(水)京都MUSE
3月9日(金)新潟LOTS
3月17日(土)Zepp Sapporo
3月21日(水祝)大阪 なんばHATCH
3月23日(金)金沢EIGHT HALL
3月24日(土)富山MAIRO
3月26日(月)奈良NEVER LAND
3月29日(木)和歌山SHELTER
3月31日(土) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
4月1日(日) 米子AZTiC laughs
4月4日(水)高知X-pt.
4月6日(金) 高松festhalle
4月8日(日) 松山W studio RED
4月10日(火) 神戸Chicken George
4月11日(水) 滋賀U-STONE
4月17日(火) 鹿児島CAPARVO Hall
4月19日(木)️熊本B.9 V1
4月21日(土) 福岡DRUM LOGOS
4月23日(月) 岐阜CLUB ROOTS
4月25日(水)長野JUNK BOX
5月8日(火) 水戸LIGHT HOUSE
5月10日(木) 高崎Club FLEEZ
5月24日(木)山形ミュージック昭和セッション
5月26日(土)青森Quarter
5月27日(日)秋田Club SWINDLE
5月29日(火) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
5月31日(木)郡山HIP SHOT JAPAN
6月2日(土) 仙台GIGS
6月5日(火)HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2
6月7日(木)HEAVEN’S ROCK Shintoshin VJ-3
6月9日(土) Zepp Nagoya
6月10日(日) 清水SOUND SHOWER ark
6月13日(水) Zepp Tokyo
6月14日(木) Zepp Tokyo

http://brahman-tc.com/