クアイフが2ndシングル「ワタシフルデイズ」をリリースする。昨年11月29日に「愛を教えてくれた君へ」でメジャーデビューを果たした彼ら。同曲がテレビアニメ「いぬやしき」のエンディングテーマとして話題となり、これまでとはまた違う層にバンドの存在を知らしめたクアイフから届いた今作「ワタシフルデイズ」は、現代社会を生きていく中で感じる葛藤と希望が同居した曲となっている。「誰かのために書いた曲が自分達の曲になった」と森が語るように、性別、職業問わず、本当の自分をどこかでなくしてしまったような今を生きる現代人が、何か動き出すきっかけとなるような、自分らしさ全開で走り出したくなる曲が「ワタシフルデイズ」だ。大胆不敵に大革命を起こしシーンに大激震を起こすべく歌い続けるクアイフにインタビュー。
Q.「愛を教えてくれた君へ」の反響は凄かったんじゃないですか?
内田:アニメのタイアップということもあって今までの自分達じゃ届けることが出来なかった人達にクアイフの音楽が届いている感触はありました。より多くの人に届けるチャンスを貰っているなって。
Q.前回のインタビューでも話しましたが街で聴く機会が本当に増えましたからね。ライブハウスシーンのクアイフだったのが一般層に届くバンドになってきたんだなって。
森:USENのアニメランキングで1位になったのは驚きました。クアイフを知らない人もアニメを見て反応してくれたんだなって。街で流れたり、コンビニに入ったら流れていたり、そういう機会はインディーズ時代に比べて本当に増えましたね。でもだからこそ感じることもあって。まだまだだなって。
Q.メジャーデビューしたからこそメジャーの壁の高さを知るような。
森:まさにそうですね。街で流れたとしてもそれが誰の歌なのか、「愛を教えてくれた君へ」は知っていてもクアイフを知らない人の方が多いし、そういう現実を思い知りましたね。
内田:今までは名古屋のバンドシーンでのポジションを考えていたんですけど、今は日本の音楽シーンの中に飛び込んでいて、それこそ同じレーベルにはいきものがかりや宇多田ヒカルさんもいる訳ですし、そういうアーティストと僕らは世間から見たら同じメジャーアーティストじゃないですか。メジャーでやっていく以上、僕らも上を目指したいんですけど、実際はその壁の厚さが物凄くあることを痛感しましたね。
Q.改めて1年生になるみたいな。
内田:そうですね。名古屋のバンドでメジャーデビューした仲間も沢山いますけど、そこを意識するんじゃなくて全国各地のアーティストがライバルだし意識する対象にしないとなって思っています。
Q.そんな中で発表される「ワタシフルデイズ」は葛藤と希望が両方歌われていますよね。
森:大人として今の現代社会で生きていくとなると、色んなしがらみとかストレスとかあるじゃないですか。その中で悪くなくても謝らないといけないことがあったり、自分の意見を殺さないといけないことがあったり。大人って色々あると思うんです。ミュージシャンじゃなくて普通の仕事をしている地元の友達と休みの日に会って話すことがあるんですけど、みんなそれぞれストレスも抱えていて。「溜まってるなあ」って飲みながら思う訳ですよ。そういう気持ちって少なからずみんな持っていると思うから、その気持ちを歌にしたんです。
Q.思い通りいくことの方が少ないですからね。それでも周りの意見に合わせるのが大人であったり。だけど突っ張らなきゃいけないときは突き通さなきゃいけないときもある。その両方をこの曲では歌っていると思うんです。
内田:何かを守るために頭を下げるのも、自分を貫くことも、どちらも覚悟がいると思うんですよ。この曲は結果的にその両方を歌っていて、それはクアイフにもリンクするなって思います。
Q.バンドの核にあるものをこの曲ではフラッグに例えていて、曲が展開して行く中でそのフラッグを色んな角度から見ているような気がしました。自信と不安が行ったり来たりする中で最終的には自分達の核にあるものを信じて前に進む決意表明の曲だなって。
森:最初は友達との会話からみんなが思っているようなことを書いたんですけど、それが結果的に自分達の曲になってたんですよね。曲を作る中で、自分が思っていることや経験を曲にしたらみんなに共感してもらうことってあるじゃないですか。でもこの曲は逆で、みんなの気持ちを題材にして書いたら自分達の曲になっていったんです。これは今までと逆のパターンだなって。
Q.そしてその曲が誰かの何かのきっかけになるようなパワーを持っているのが凄い。
森:この曲の題材になった友達は仕事で悩んでいたんですけど「ワタシフルデイズ」を聴いてくれて「私、転職することにした。ありがとう。」ってLINEを送ってくれて。だからもし何かを諦めようとしている人や今の状況に悩んでいる人にも聴いて欲しいなって思います。もしかしたら「ワタシフルデイズ」が動き出す着火剤になるかも知れないなって。
Q.大人になると自分を押し殺さないといけない瞬間や自分の意見を言えないときってあるじゃないですか。でもそんなときに自分をフルで解放して戦うこともたまにはしなきゃなって。ただそれが我儘になってしまう可能性もあるから難しい。
森:そうなんですよ。ワガママが言いたい訳じゃないから難しいんですよね。だからみんなそこで悩むんだと思う。でもそれを考えるきっかけになったら嬉しいですね。
内田:どっちかを貫くことが正義って話でもなくて、そのせめぎ合いの中で戦い続けることが大切な気がしますね。
三輪:奮起する歌だと思うので聴いた人の意識が変わっていく曲になったらいいですね。ただそれも受け取り方次第なので、好きなように感じてもらえたらなと。
Q.大人になる中で本当の自分がなんだったか分からなくなることってあると思うんですよ。桂正和先生の「D・N・A² 〜何処かで失くしたあいつのアイツ〜」という漫画があるんですけど、それも変わった自分と本当の自分のせめぎ合いが描かれていて。そうやって自分の核にあるものを見つめ直して前に進むことが「ワタシフルデイズ」から感じました。
内田:本当の自分をリトル内田とすると、自分を押し殺して何かをやることが増える度にそのリトル内田が小さくなっていく感覚が明確にあって。そうやってリトル内田が消えていくのが怖いんですよね。それで音楽が出来なくなったら元も子もないですし。でも大人としての自負もあるので、その葛藤の中でいつも悩んでいるんです。でもそれはバンドマンに限らず働く人はみんなそうなんじゃないかな。
Q.そんな自分に大革命を起こして大激震を走らせ大胆不敵にいこうっていう力強さがこの曲にはあるんですよ。初めてあのサビを聞いたときは「うわ!」って声が出ちゃいましたから。「めっちゃ森彩乃!」って思いました。
森:あははは。めっちゃ嬉しい。
内田:クアイフで色んな曲を作ってきましたけど一番森らしいなって思いますね。
森:本来の森?
内田:そう、整合性がとれているというか、偽りのない森だなって。だからって他の曲が偽ってる訳じゃないけど、これは本来の森だと思う。信頼出来る歌なんですよね。
森:森フルデイズだ(笑)。
三輪:確かに「歌いたいこと全部歌いました!」みたいな感じはあるよね。
Q.彩乃ちゃんは歌詞を書く中で「本当の自分」を意識したりしました?
森:本当の自分がなにかってバンドマンだけじゃなくて会社員でも主婦でもみんな考えることがあると思うんですよ。みんな何かを我慢してると思うし。私はバンドマンとして人前に出る中でどう立ち振る舞ったらいいかとか、ここではこうしなきゃとか、考えちゃうことはあるんです。どうあるべきか、とか。でも「どれも自分じゃん!」って思うんですよね。「私はこうです!」っていう分かり易いストレートな人もいるけど、自分はそうじゃないし、「スンッ!」ってしてるときも思いっきり笑ってるときもどっちも自分だし、一色に絞らず何色もあっていいと思うんです。
Q.それはクアイフの音楽を聴いていれば伝わりますよ。「愛を教えてくれた君へ」があって「ワタシフルデイズ」があって、これまでのアルバムもあって、トータルすると多面体じゃないですか。見る角度によって全然違うクアイフがいるんですよ。それをメジャー2枚目のシングルで叩きつけるのがかっこいいです。
森:「愛を教えてくれた君へ」は純粋に良い曲が届けられて本当に良かったと思うんです。でも2枚目のシングルで「こうきたか!」みたいなこと提示出来たかなと思いますね。
Q.Xが「紅」でメジャーデビューして2枚目のシングルで「ENDLESS RAIN」を出したような。「あんなに激しい曲の後にバラードきた!」っていう。
内田:あははは。まさにそれですね。
森:「紅」の次が「ENDLESS RAIN」なんですね!それは早いかも!(笑)。
Q.でも「愛を教えてくれた君へ」でクアイフを知った人には「ワタシフルデイズ」にまだ知らないクアイフの顔を見るかもしれませんよね。
内田:「ワタシフルデイズ」は僕らの中でも新しいクアイフなんですよ。サウンド面でもチャンレンジしている部分はあるし歌詞の面でも新しいクアイフが表現出来ていると思っていて。そうして生まれた表現がクアイフというフィルターを通して聴く人にとどいて、その先でどれだけ聴いてくれた人のものになるかを大事にしています。だからクアイフというフィルターがより良いものになるようにを磨いていけたらなって思っています。
クアイフ
森彩乃(Vo./Key.)内田旭彦(Ba./Cho./Prog.)三輪幸宏(Dr.)
ワタシフルデイズ
2018年3月7日RELEASE
通常盤(初回仕様) ESCL-5000
¥1,200(税込)【初回仕様:PlayPASS対応】