STANCE PUNKS

結成20周年を迎えたSTANCE PUNKSがニューアルバム『青盤赤盤』を完成させた。TSURUと勝田欣也の地元である愛知県にて初の主催フェス「火の玉宣言フェスティバル2018NAGOYA」を開催するなど常に挑戦し続けてきた彼ら。『青盤赤盤』と名付けられた今作はその名から連想させるようにまるで2枚組レコードのようなアルバムとなっている。『ザ・ワールイド・イズ・マイン』でひとつの到達点を迎えた過激さを内に秘めつつ、新しい表現方法にもトライした今作。それはTSURUの歌に対する意識の変化によるものが」大きそうだ。そして完成した『青盤赤盤』である。これこそがSTANCE PUNKSの最新型のロックンロールでありパンクロックなのだ。変わらないまま変わり続けるSTANCE PUNKSのTSURUに単独インタビュー。

 

Q.20周年を迎えて感じることってありますか?
TSURU:凄い素直に言うと、よく分からないですね。20年やったって感じがないんですよ。本当にいつの間にか20年もやっていたって感じ。結成して1年とか2年くらいの頃は時間が長く感じたけど、この10年くらいは本当にあっという間でしたね。

Q.結成当時は20年後のことなんて想像してなかったのでは?
TSURU:うん。むしろパンクなんて3年くらいでいいんじゃないかって思ってた。

Q.それが20年続いた要因って何だと思います?
TSURU:他にやることがなかったんじゃないかな(笑)。常にそのとき一番面白いことをやろうと思って生きてるから、それがバンドだったんだと思うな。

Q.STANCE PUNKSはこの20年間何も変わらないってよく言われると思うんですけど。
TSURU:よく言われますね。

Q.だけど改めてアルバムを1stから順番に聴いたら全然違うなって。
TSURU:そこに気付いてくれる人は天才ですね。分かってくれる人が全然いないんですよ。

Q.パブリックイメージとしては変わってないし、ライブも変わってないと思うんですよ。でも作品ごとに聴くと全然違う。
TSURU:そうなんですよ。だから「スタパンはずっと変わらないことやってくれて嬉しい」って言われると、全然聴いてないんだなって思っちゃう(笑)。

Q.STANCE PUNKSってアルバムごとにコンセプトもちゃんとあるバンドじゃないですか。
TSURU:うん。俺達は曲が溜まったらアルバムを出すってやり方はしてなくて「どういうアルバムを作るか」ってとこから始めるから。『STANCE PUNKS』は後々聴いて恥ずかしくなるくらいの青さをぶつけようと思って作ったし『LET IT ROLL』は青春パンクブームに嫌気がさしていた頃で、ちょうどアメリカが調子に乗っていた時期でもあったから反戦アルバムになったし、『HOWLING IDOL~死ねなかった電撃野郎~』は元々のルーツだったロックンロールをやろうと思って作ったし。『BUBBLEGUM VIKING』とか海賊がテーマですからね。そうやってコンセプトは毎回違うのでアルバムを聴いて変化に気付いてもらえるのは嬉しい。

Q.そんな中で今作『青盤赤盤』はどんなコンセプトがあるのですか?
TSURU:名前の通り2枚組のレコードを意識しています。本当は2枚組にしたかったんだけどそんなに沢山曲も出来ないから1枚でA面B面のイメージで。

Q.「スローダンス」が終わってレコードをひっくり返して「KNOCK! KNOCK! KNOCK!」でB面が始まる感じ、めちゃくちゃ分かります。
TSURU:そうそう。「スローダンス」までの前半が胸キュンな感じなんだけど、「KNOCK! KNOCK! KNOCK!」でパンクロックに切り替わるんですよ。

Q.そうやって対を成していながら全体的に優しい印象もあって。
TSURU:それはきっと、普通に年輪を重ねたことが原因かもしれないですね。昔は全部殺すって思っていましたから(笑)。まあそういう気持ちがない訳ではないんですけど、「なんでもかんでもやっちまえ」って思っていたあの頃とは違う感覚なんだと思います。

Q.そうじゃなければ「火の玉宣言フェスティバル」のようなフェスを開催しないですよね。若いバンドや初めましてのバンドも参加するフェスをSTANCE PUNKSが主催するなんて想像してなかったですから。
TSURU:友達もいなかったですしね(笑)。昔は打ち上げも全然出なかったし。90年代とか仲間なんていらないと思っていましたから。勿論嫌いな奴ばっかりって訳じゃなかったけど、横の繋がりでバンドをやらなきゃいけないのが面倒臭かった。ステージ袖で友達アピールするのとか嫌いだったし。20代半ばまではずっとそう思ってたんじゃないかな。あとはアイドルと対バンするのだって昔だったらきっと嫌がってたと思う。だけど、今は見ていて美しいと思うんですよね。あんなに動いて息を切らさず歌うの本当に凄いことだし。だから何に対しても変な差別はしなくなったと思う。だからって丸くなり過ぎるとダサいから喧嘩は負けないようにしてるけど(笑)。

Q.「たましいのうた」でも「魂は決して消せやしないよ」と歌っていますからね。変化もするし進化もするけど根っこにあるものは変わらない。それはライブを観たら一瞬で分かる。
TSURU:あれしか出来ないから(笑)。たまに真っ直ぐ立ってちゃんと歌を歌おうって思うこともあるんだけど、ステージに出るとバーン!ってなっちゃう(笑)。

Q.あ、でも今回のアルバムのTSURUさんのヴォーカルは歌い方や声そのもの、バンドとのバランスなどこれまでとは違って歌を歌うことに重点を置いている気がしました。
TSURU:本当によく聴いてくれてるなあ。今回はミックスの仕方をちょっと変えたんですよ。歌と演奏をもうちょっと融合させたくて音作りもこだわったし、渦巻いているもの渦巻いたまま音に封じ込めることを意識して。そこは結局まだ自分でも掴みきれてないんですけど。生で聴いたら凄いのにCDに封じ込めたらその勢いがなくなるのが嫌なんですよね。でも今回は一発録りじゃないっていう。そういう実験的な部分もあったりします。

Q.TSURUさんの発声の仕方が違って聴こえるのは?
TSURU:新しい表現方法を模索していたのもあるんだけど、正直、そろそろ喉がぶっ壊れてきていて。このままじゃ歌えなくなっちゃうなと。ライブの途中で声が出なくなったことがあって。だけど俺はまだまだ歌いたいし、でもライブでは加減出来ないから、だったら根本から新しいものを取り入れていかないとなって。若い頃みたいに勢いだけでやっていたらカスカスになってしまうんですよ。それで新しい表現方法を試してみたんです。

Q.「スローダンス」の歌い方とか斬新でした。
TSURU:「スローダンス」の感じって元々俺の根っこにはあったものなんだけどバンドで出してなかった部分なんですよ。「クソッタレ解放区」がヒットして、あの激しさを追求してやってきたからどうしても激しいイメージが強いと思うんですけど、それって俺の中では『ザ・ワールド・イズ・マイン』で完結しているんですよ。それで今回「スローダンス」のような歌い方をしてるんだけど、これはもしかしたらSTANCE PUNKSを始める前の自分らしさが出ているのかなって思うし、これからどんどんこうなっていくんじゃないかなって思っていて。

Q.STANCE PUNKS以前のバックボーンをバンドに持ち寄ってもSTANCE PUNKSとして消化出来るようになったのかも。
TSURU:そうだと思う。ちょっと前までは、激しくてぶっ飛んでるのを期待してる人もいるんじゃないかって思っていたけど、その殻が破れてどんな作品を作ってもSTANCE PUNKSだって自信もあるので。昔は突っ張ってないとパンクじゃないと思っていたんですよ。でもそうやって決めつけることがまずパンクじゃないなって。それはバンドを長くやってきて分かったことなんですけど。

Q.中学の頃にTHE BLUE HEARTSの『DUG OUT』を初めて聴いたときの感覚に近いんですよね。そして後半からは『STICK OUT』になるんですけど。
TSURU:ああ、それはするどい。今回、青盤と赤盤ってコンセプトを考えたときに対になるような作品にしたくて『STICK OUT』と『DUG OUT』も聴きましたから。本当はあれくらいのボリュームで作りたかったんですけど、出来上がってみたらめちゃくちゃ短いアルバムが出来ました(笑)。車で聴いていてちょっと考え事をしているとすぐに「たましいのうた」が始まりますからね(笑)。

Q.パンクオマージュ満載の「車輪」も最高でした。イントロからガッツポーズしたくなります。
TSURU:「車輪」はテツシが持ってきた時点で俺も即OKでした(笑)。テツシの書く歌詞は俺とは違って難しいから、キャラに合わないことや上手くハマらないこともあって、せっかくテツシが作ってきても世に出ない曲が沢山あるんですよ。だけど「車輪」は即OK。アルバムの最後に入れることもすぐ決まりましたね。

Q.「あの娘は部屋でパンクを聴いてる」は、曲中では主人公の女の子目線なのがタイトルは第三者からの視点なのがまず面白いなと。
TSURU:俯瞰して見ているような感覚ですね。この曲はどうも気分が乗らない、調子の悪いときに作ったんですけど、部屋でパンクロックを聴いていて、勿論それは楽しいんだけど、それだけじゃきっと駄目なんだろうなって。そういう気持ちをパンクロックが連れ出してくれることってあるじゃないですか。俺もそうだし。だからこそ俺は自分の音楽で誰かを連れ出したい。俺はパンクで人生が変わったし、人生を台無しにもしたんだけど、誰かのそういう存在になりたい。小学生の頃に「リンダリンダ」でバーン!ってなって、中学に入ってエルヴィス・プレスリーのビデオを見てバーン!ってなって、それからローリングストーンズやセックス・ピストルズでバーン!ってなったあの感じをSTANCE PUNKSで誰かに食らわせたい。それは本気で思っていますね。

Q.あの、変な言い方になっちゃうかもしれませんが、今回のアルバムがこれまでで一番好きなんですよね。音楽的に。
TSURU:晩年に作った作品をそう言ってもらえるのは凄く嬉しいですよ。

Q.STANCE PUNKSは常に今が一番かっこいいバンドだと思います。
TSURU:さすがに見た目はそうじゃなくなってきましたけどね(笑)。でも、芯の部分はより強く太くなっていきたいと常に思っています。あと若いころはアジテーションな部分が強かったけど、ここ数年はより音楽をやりたいなって思っていて。若い頃は破壊や乱暴で先導しようとしていたんだけど、今はそれを音楽でやりたいと思っているんです。

Q.それこそ「ザ・ワールド・イズ・マイン」のMVはその象徴みたいなものでしたからね。
TSURU:そうそう。だからあのMVで激しい部門は完結したんですよ。勿論これからも激しい曲は作るけど、あれがピークだったと思う。あそこをさらに超えようと思ったら美しいハードコアパンクの世界に足を踏み入れなければいけない訳で。

Q.でもそうなったらまたバンド名で揉めそうですね(笑)。
TSURU:あははは、俺達もうおっさんだから大丈夫じゃないですかね(笑)。

Q.20年を迎え、今後のSTANCE PUNKSはどうなっていきそうですか?
TSURU:あまり長く続けるとか、30周年40周年とかは考えてないんですけど、何かと戦っていくんだろうなって思っています。若い頃は攻撃してくるもの全てと戦っていたし、20代は青春パンクと戦っていた。そう思うと、これからはモチベーションと戦っていく気がしますね。そことどう戦うか。ワーキングクラスだけどロックンロールドリームを信じてるから、そこを見せ続けていきたいですね。夢がないと駄目ですから。

Q.そこをアジテーションするのが今のSTANCE PUNKSの立ち位置なのかも。
TSURU:音楽を好きな奴が音楽を辞めないでいい世界にしたい。俺らは何の力も知識もないけど、20年やってきたことは見せれる気がするので。その為にも歌い続けていきたいですね。

STANCE PUNKS
青盤赤盤

2018年11月14日発売
GUDY-2022
2100円(+税)

LIVE
12/9(日)渋谷CLUB QUATTRO STANCE PUNKS 20th Anniversary スペシャルワンマンLIVE

http://stancepunks.com/