ATATA

ATATAが前作『JOY』より実に3年振りとなるシングル『Rythmique』を完成させた。「Willow St.」「Topology」「Rise and Falling」「Eurhythmics」の4曲からなる今作を聴いて、四季のある日本に生まれたことを幸せに感じた。別れの春に始まり季節が移ろう様を感じながら、今年が来年になり来年が再来年になり、そんなメビウスの輪のような年月を作品から汲み取る中で、大人として次の世代に何を残せるか、いつの間にかそんなことまで考えていた。雪が溶けて川になって流れて行きます。つくしの子がはずがしげに顔を出します。ご存知キャンディーズの名曲もそのメビウスの輪を歌っていて、そうやって順番に繋いできたのだろう。今が人生において何度目の季節なのか分からないけれど、こうやって上の世代もまた上の世代も繋いできたのだろう。さよならから始めよう。さよならからはじまることがあるんだよ。そしてまた明日。ATATAが提示するリトミックが次の世代に繋がったとき、このシングルはもう一度始まる。

 

Q.今作を聴いて、まず最初に四季のある日本に生まれて良かったなって思いました。

奈部川:本当だよね。俺もそう思う。

 

Q今回のシングルが4曲だったことは結果的に春夏秋冬を物凄く感じさせるなと。

奈部川:当初は4曲って決めていた訳じゃなかったんだけど、曲が出来ていく流れでこの4曲でひとつの作品として考えたときに、なんとなく春夏秋冬を歌おうかなって思ったんだよね。イメージしたきっかけはブッチャーズ(bloodthirsty butchers)の『kocorono』だったりするんだけど。ほら、『kocorono』は2月から12月まで並んでるでしょ。でも俺は季節を行ったり来たりする作品にしたかったの。

 

Q.「Topology」の中で「12月の面と辺」という言葉が出てくるじゃないですか。あれが「じゅうにがつ」ではなく「じゅうにつき」だったことにこのシングルの意味が表れているなって思ったんですよ。このシングルは「じゅうにつき」つまり移ろいでいく12の月を歌っているんじゃないかって。

奈部川:そこまで汲み取ってくれて本当に嬉しい。まさにその通りで、季節って春夏秋冬に区切るけど、実はそこにはっきりとした境目なんてなくて、全部繋がっているものが少しずつ移ろいでいくんだよね。夏だって涼しい日があるし、春だけど急に寒い日もあるじゃん。だから完全に分かれている訳じゃないんだよね。だから季節を行き来する作品にしたかったんだよ。

 

Q.2016年に「Rise and Falling」を発表したときはそこまで意識していたんですか?

奈部川:全然してなかった。最初は「Rise and Falling」を入れなくてもいいかなって思ってたし。だけど季節を歌う中でこの曲を入れないのはおかしいかなって思うようになったんだよね。それにライブで演奏してる内にアレンジもかなり変わったし、もう一回聴いてもらってもいいのかなって。でも当時から漠然と自分の頭の中でもしかしたら考えていたのかもしれないね。夏から秋の歌を作ったから春から夏、秋から冬、冬から春の歌も作ろうって。

 

Q.1曲目の「Willow St.」が「さよなら」から始まるじゃないですか。それが4曲目の「Eurhythmics」で「また明日」で終わるのが今作の大事な部分なんじゃないかと思うのですが。

奈部川:本当にその通り。「さよなら」から始まって「また明日」で終わることに意味があると思ったんだよね。歌詞を書く人間として文脈的にどうしてもこの曲順じゃなきゃ駄目だった。この4曲を繋いで輪っかにすると「さよなら」と「また明日」がくっつくじゃん。俺は物事ってすべて連なっていると思っていて、その輪が形を変えて大きくなったり小さくなったりしながら形が変わるってことを歌いたかったんだよね。

 

Q.まさに「Topology」で歌われている「メビウス」ですね。

奈部川:物事って全て表裏一体で繋がっていて、1年を通すとまた元に戻るみたいな。でもリスタートするときは形も少し変わっているっていう。そういうイメージかな。

 

Q.今回の4曲もまさにメビウスで、季節を行き来するという意味でも夏そのものや秋そのものを歌っているんじゃなくて、夏から秋、秋から冬といったその変わり目を感じるんですよね。

奈部川:それはきっとこの4曲だから出来たんだろうね。もしこの音源が6曲だったらまた違ったし、12曲だったらきっと区切っちゃうだろうし。だから4曲が妥当だったんだと思う。あと、このシングルをアルバムの布石にはしたくなかったんだよね。このシングルで完結しているから。曲が出揃ってくる中で「SONG OF JOY」みたいな壮大な曲があったほうがいいんじゃないかってみんなに相談したんだけど「今回はこの4曲で」って言われたのね。それは今思うと本当にその通りだなって。

 

Q.この4曲で大きな1曲みたいな感触がありますからね。

奈部川:そうそう。まさにメビウスだよね。

 

Q.日本で暮らしている僕らは四季を感じながら生きているじゃないですか。その中で今作は生活に寄り添う音楽として傍にいてくれる気もしていて。

奈部川:それは凄く嬉しい。「Rise and Falling」を出した頃から「秋が近付くと聴きたくなる」ってよく言ってもらえて。そうやって季節が変わるときに思い出して聴いてもらえるのって凄く嬉しくて。俺はそうやって誰かの景色に寄り添うような音楽を作りたいんだよね。

 

Q.今回のシングルはきっと僕らと一緒に年を取っていく作品になる気がしていて。そうやって一緒に年を重ねながら次の世代にも繋いでいきたい作品だなって思いました。それは『Rythmique』というタイトルにも繋がるかもしれないですけど。

奈部川:前作の『JOY』は「自分達にとって音楽とは喜び(JOY)である」ということを伝えたかったんだけど、それを手に入れて俺達は何をするべきかって、今度はそれを次世代に伝えていくことなんじゃないかと思って。俺達は音楽を作れるから、喜びとしての音楽を子供達に伝えなきゃいけない気がしているんだよね。それを言葉で何て表したらいいか考えていたんだけど、「エデュケーション」じゃ硬いしなって思っていて。そんなときに町を歩いていたら、町内会の看板みたいなのに「親子でリトミック」ってチラシが貼ってあって。それで調べてみたら「音楽を通した情操教育」って意味があって。「まさに俺がやりたいことだ」って。残念なことだけど俺達は子供より先に死ぬじゃん。泣きたくなるけどそれは仕方ないことなんだよね。そうなったときに俺が教えてあげられることって音楽しかないなって。俺達のファンも子供がいる世代が多くなってきたから、音楽を通して子供に接して欲しいし、音楽から得たものを子供に教えて欲しくて。

 

Q.だからパッケージが絵本なんですね。

奈部川:そういうこと。

 

Q.今はゾウさんの絵本でいいんですよ。だけどこのシングルを20年後くらいに子供達がまた手にしたときにこの作品のもうひとつの役目が果たされるんじゃないかって。

奈部川:本当にそう思ってる。実物はデジパックなんだけど、普通だったら透明なCDトレイのところをあえて白にしていて。それは上から見たときに絵本みたいにしたかったんだよね。だから今は絵本としてでいいし、まだ気付かなくていいんだけど、俺達の世代がいなくなって、子供達の世代になったときにこのシングルを手にして、親の世代はこんな音楽を聴いてたんだなってポジティブな気持ちになって欲しいんだよね。

 

Q.乱暴な言い方になるかもしれないですけど、このシングルは大人が聴くべき作品だと思っていて。それを次の世代に受け継いで、子供達の世代が絵本としてではなく音楽としてこのシングルを手にしたときにメビウスの輪っかが生まれると思うんですよね。だからそのときが来るまでは僕達大人のものでいいなって。

奈部川:俺達の曲って子供が聴いて分かりやすい音楽ではないし、聴かせたいのは大人なんだよね。まずは俺達の同世代に何を伝えられるかだと思っているから。それを受け取った人がどう考えるか、そこに賭けたいんだよね。そんなに大きな話じゃなくて、まずは俺達のコミュニティからでいいんだよ。最近ニュースとか見ていると子供が殺されちゃう事件が多いじゃん。俺はああいうニュースを見て本当に憤りを感じるわけ。なんでこんな世の中なんだって。でも憤ったままじゃ嫌だから、俺の周りにだけは何かを伝えていかないとなって。だからまずは大人に聴いて欲しいし、大人に向けて歌いたかった。悲しいニュースを見て指を咥えてるんじゃなくて、そこに俺なりの提示をしていかなきゃ駄目なんじゃないかって。そうやってまた子供達の世代にも繋いでいくことが大事なんだと。

 

Q.次の世代に何を残すか、それを受け取った世代が何を作るか。僕も今はそこに興味が凄くあります。そしてそれはきっと僕らの親の世代も思っていたんじゃないかなって。

奈部川:そうだね。親の世代だってみんなそう思っていたはずだよ。俺達だけじゃなくてさ、親の世代、そのまた親の世代、みんな良い世界になって欲しいって思ってたに違いないよね。だから俺はそれを引き継ぎたいし、それを子供達にも繋ぎたいんだよね。

Q.「Eurhythmics」を聴くと僕らもみんな子供だったこと、大人になって忘れていたことを思い出したりもします。

奈部川:子供の頃って何をしても褒められたじゃん。でもいつの間にか褒められなくなって、頭を撫でられなくなったでしょ。でも労ったり褒め合ったり、そういうのって大人になってからもした方がいいのにって思っていて。だからこの曲をライブでみんなで歌ったら、お互い子供の頃みたいに褒め合えるんじゃないかなって。子供の頃って褒められて色んなことを覚えたじゃん。俺ら世代の閉塞された感じはそこに鍵があるのかなって思う。それをメタファーとして、子供を褒めるように俺達が音楽を通してお互いを褒め合えたときに、それは俺達にとって理想が現実になるんじゃないかなって。それを今回の結論として4曲目に置いたときにやっぱり1曲目はまず人間の影から歌いたかったんだよね。だから1曲目がもの凄く暗いっていう。

 

Q.そこを隠してしまうとリアルじゃなくなりますからね。

奈部川:やっぱり光あるところに影があって、その影の部分がちゃんとなきゃいけないし、最後に「Eurhythmics」がくるんだったら最初に「Willow St.」がこないとおかしいんだよね。俺の中で「Willow St.」は救いがないんだけど、それを「Topology」で覆したくて。だから歌詞で「春を待てば雪はとけるでしょう」って歌っているんだけど、そこからどんどんストーリーが繋がっていくんだよね。

 

Q.奈部川さんがキャンディーズの「春一番」の歌詞をツイートしていた意味がやっと分かりました。

奈部川:あははは。そうなんだよね。順番なんだよ。でもさ、この歳になって改めて歌謡曲って凄いなって思ったの。

 

Q.それが直接関係あるかわかりませんが、奈部川さんの歌い方や歌詞の書き方が少し変わったなって。

奈部川:うん。変わったと思うよ。これまでは英語っぽい日本語で歌っていたけど、ちゃんと日本語の歌モノとして歌う覚悟がやっと決まったんだよね。歌詞としてしっかり文脈があった上で歌を歌いなって。それは今回初めて思ったかも。

 

Q.表現者として歌い手としての意識が変わったと。

奈部川:シンプルに歌詞や歌で感動するのって実は歌謡曲が多かったりするんだよね。それはさっきのキャンディーズもそうだけど。なかにし礼とか阿久悠とか、あの頃の作詞家の書く歌詞ってやっぱり凄いから。そこに自分も挑戦しないと先はないなって思うようになったんだよね。だからこそ歌詞に凄い時間がかかったんだけど。

 

Q.文脈を意識しているからこそこの曲順なんですね。

奈部川:そう。でも俺の中でイメージは決まっていても、歌詞についてはメンバーは最後まで知らなかったりするから(笑)。みんなは「Topology」がオーラスっぽいから最後にしたいって言ってたんだけど、「また明日」って終わらないと希望がないんだって俺のわがままを聞いてもらって。今ってサブスクリプションで曲単位で聴くでしょ。だから曲順なんて関係ないのかもしれないし、キャッチーな曲を頭に持ってくることが大事なのかもしれないけど、作品として考えたときに自分が納得していなかったらあとから振り返って聴けないんだよね。聴き方なんてそれぞれが好きに聴けば良いんだけど、価値観って結局1周してまた元に戻ってくる気がするの。そのときのためにちゃんとしたものを残しておきたいじゃん。ユーザーの音楽の聴き方や価値観が復活したときのことも考えて。

 

Q.今作は売り方含めて価値の再発見に繋がりますよね。

奈部川:やっぱりCDで持つ意味は提示したかったし、だから敢えて買い方にもハードルを設けたんだよね。せっかくCDをリリースするのに、通販以外にLIKE A FOOL RECORDS、stiff slack、FLAKE RECORDSでしか買えないなんて普通しないでしょ(笑)。でもああいう個人店のレコード屋さんでCDを買う体験もして欲しいんだよね。

 

Q.それもリトミックなのかもしれないですね。

奈部川:うまい(笑)。普段大型店でCDを買っている人にはハードルがちょっと高いかもしれないけど、あのレコード屋の扉を開けて仏頂面の店員さんがいて、そこで恐る恐るCDを手にしたときの感情ってきっと宝物になると思うんだよね。だからサディスティックではあるけど、この売り方にしたかったんだよ。

 

Q.そういう音楽との出会い方、買い方も文化として繋いでいきたいですよね。

奈部川:うん。だから今回のシングルは色んな意味合いがあるんだよね。でもさ、この売り方を発表したらタワーレコードやHMVのスタッフさんがお店のアカウントで宣伝してくれたのよ。「うちじゃ買えないけどATATAのシングルが出ます」って。もう本当に大きな借りが出来たから近い将来にちゃんと何かの形で返そうと思う。こうしてみんなが協力してくれてまた新しい音源が作れた。次はライブハウスで会えたら嬉しいな。

リリース情報

 

タイトル:Rythmique
DMS-002
¥1,500 (+税)
2019年4月24日発売

 

http://atataweb.com/