tricot

tricotが約 2 年振りとなる全国流通作品『リピート』を引っ提げて行ったワンマンツアー東京公演(2019年4月28日渋谷TSUTAYA O-EAST)にてavex/cutting edge内にプライベートレーベル設立しメジャーデビューすることを発表した。吉田雄介が正式メンバーとして加入し初のリリースとなった『リピート』は曲間の隔たりの無いアルバム通して大きな1曲となるようなコンセプトアルバムだった。新たな要素がバンドに加わったことでさらに進化したtricotがメジャーシーンでどう騒いでくれるか、期待で胸がパチパチする。前回2YOU MAGAZINEにて行った『リピート』についての中嶋イッキュウ単独インタビューに続き、今回はキダ モティフォ、ヒロミ・ヒロヒロ、吉田雄介を交えた4人揃ってのインタビューを実地。令和元年はどうやらtricotの年になりそうだ。

 

Q.まずは吉田さんの加入の話を改めて伺いたいのですが。

イッキュウ:2015年にメンバー募集のオーディションをしたんですけど、200人くらいの応募があって。その中から選ばれたのが吉田さんです。最初にスタジオで合わせたときにめっちゃ器用やなって思ったんですよ。あと人間的な癖もあんまりなかったのが大きいかも。

吉田:人間的な癖(笑)。

イッキュウ:演奏が上手い人って癖も強いイメージがあって。でも吉田さんはドラムは上手いのに癖がないのが凄く良いなって。やっぱり演奏が上手くても人間的に合わへんかったら嫌じゃないですか。

キダ:フラットな感じが良いよね。

イッキュウ:サポートの頃から「僕はサポートなんで」みたいな変な距離感もなかったし。

 

Q.吉田さんは正式に加入してみてどうですか?

吉田:tricotのサポートを始めた頃から正式メンバーのつもりでやって欲しいと言ってもらっていたのでベクトル自体にそこまで変化はないですね。度合が少し変わったのかもしれないですけど。『3』の頃からライブの組み立て方も一緒にやってきたので。でもメンバーはやり易くなったんじゃないかな。

キダ:確かに曲作りはやり易くなりましたね。やっぱりメンバーとして一緒に作るのとサポートとしてお願いするのって気持ちの上で若干違いはあるのかもしれない。だから正式メンバーとして迎えたことでもう一度バンドが始まったような感覚は少しあります。

ヒロミ:tricotって全員癖があるじゃないですか。そこに入ってくるのって絶対に大変だと思うし、その空気感に馴染める人じゃないとバンドに入ってもらっても続かないと思うんです。そういう意味でも吉田さんはフラットに良い立ち位置にいてくれて。

イッキュウ:めっちゃふんわりしてるもんな。そこに居ても違和感が全然ない。

 

Q.曲作りにおいてはどうですか?

イッキュウ:吉田さんの自由度が上がったと思います。伸び伸びとやりたいようにやってくれているので。やっぱりサポートのときはうちらの意向を汲み取ってくれていたと思うんですよ。それを器用に広げて叩いてくれていたんだろうなって。だけど今はメンバーとして色んな意見やアイデアをくれるのが心強いし、しっかり話が出来る仲間が出来たことが嬉しいです。

 

Q.アイデアと言えば『リピート』はアルバムを通してアイデアだらけだなと。

イッキュウ:そうなんですよ。めっちゃ面白いのが出来ました。

 

Q.全5曲が組曲のように繋がって大きな1曲になっているのは本当に面白い。

イッキュウ:スタジオでどんな作品を作るか話し合ってるときに「曲が全部繋がってたら面白いんちゃうかな」ってアイデアが出て。それで最初にまず「BUTTER」が出来たんですけど、その前を作るか後ろを作るかみたいな。

 

Q.「BUTTER」はこれまでのtricotとはまた少し毛色の違うタイプの曲じゃないですか。それが今作の軸になっているのは興味深いです。

イッキュウ:「BUTTER」が軸にあったのでコンセプトアルバムとして今までにないようなタイプの曲が生まれるかなって思ったんですけど、出来上がってみたらtricotっぽさもちゃんとあるし、全体的にバランスの良い5曲が揃ったなと思います。

Q.曲単体として成立しているものが連なることで大きな1曲になるというコンセプトにはCDではなく配信で曲単位で聴くことが増えたことに対するメッセージだったりもします?

イッキュウ:ああ、その話もメンバーでしたんですよ。

吉田:でも少し発想が違って、サブスクリプションだからこそアルバム単位で聴く人が増えたんじゃないかなって思って。MD時代のマイベストでもなく、iTUNESの曲単位じゃなく、サブスクだからアルバム単位で再生する人が多い気がするんですよね。もはやシャッフルもしないような。なので逆にサブスクが主流だからこそやってみようって。

 

Q.アルバムとして聴かれることを想定していたんですね。だからこそ繋ぎ目が分からないのは面白いかもしれないですね。「あれ?いつの間に5曲終わった?」みたいな。

イッキュウ:そこは結構意識しましたね。どの曲も同じような繋ぎ方にならないように考えたり。

 

Q.いつの間にか曲が変わったり、そう思ったら強制終了したり。

イッキュウ:繋ぎ方を同じにしたくなかったんですよね。これまでもライブで曲を繋いだり「ここは休まないですぐ入ろう」ってやり方をしてきたんですけど、あの感じが音源に出来たかなって思います。

 

Q.「リフレクション」から「悪口」の流れとか全く気付かなかったです。

イッキュウ:あそこは私達もマスタリングで「うわ!」ってなりました(笑)。

ヒロミ:いつ変わるんやろって思ってた(笑)。

 

Q.さっきの強制終了の話じゃないですけど「BUTTER」はこの展開が何処までも続くと思わせておいていきなり変わるじゃないですか。そういう1曲1曲のフロウが本当に面白いなと。ちなみにライブで5曲連続演奏する予定とかはあるんですか?

ヒロミ:ちょこちょこ繋げてやってたりはするけど5曲連続は今のところやってないですね。めっちゃ面白そうですけど。

イッキュウ:ツアーのワンマンで5曲繋げてやっちゃうとセットリストが偏っちゃうよな(笑)。

キダ:ツアーの前に配信とか招待制でスタジオライブ的な感じでやってみる話もあったけど披露する場がなくなって。でも面白そうだし、いつかやるかもしれないですね。

 

Q.「リピート再現ライブ」はいつか観たいですね。

イッキュウ:それは絶対やりたいですね。

 

Q.CDでもレコ発ライブでも1曲目は「good morning」でした。ライブでも全く同じことを思ったんですけど、何回「リピート」を再生してもこの曲の衝撃は凄すぎます。何だろう、雨の降らない地域のバンドの祈りのようなものを感じるんですよ。

イッキュウ:あははは。確かに民族的ですよね。最初のデモはドラムが入っていたんですけど、作っていくうちに吉田さんが(民族音楽に)寄ってきて。

吉田:僕は元々民族音楽も好きなんですよ。それでパーカッションを叩いてみたんです。

イッキュウ:結果、より民族的になりました(笑)。

 

Q.ど頭でイッキュウさんが叫ぶ「へいやーあー」という言葉とその後に続く声を重ねまくる展開が印象的なんですけど。

イッキュウ:あははは。

 

Q.バンドがこれを受け取ったときはどう感じました?

キダ:まずこれをどうバンドでやってやろうかっていうことを一番に思いましたね。

ヒロミ:凄い方向性からきたなって(笑)。オケに入ってたベースも変えようとは思ったけど、どう変えようかなって。

イッキュウ:最初はベースも入れてたもんな。

ヒロミ:そう、結構テクニカルな感じのベースが入ってた。でもそれが「ザ・打ち込み!」みたいなめっちゃ音数の多いベースやったから、私が弾く感じではないベースが入っていて。どうアレンジしようかなって悩みました。

イッキュウ:デモを作る段階では曲のイメージが分かり易いように打ち込みで宛がってるだけなので、実際は好きなようにアレンジして欲しいと思っていて。声だけやと余りにもイメージ出来ないやろうなって。

 

Q.セオリーとか常識とか価値観とか、何かそういうもの全部をひっくり返すバンドだなっていつも思っているんですけど、それが「good morning」や「大発明」からはより強く感じました。

キダ:曲作りをするときって、周りのトレンドを意識しつつ「こういう音楽ってあるよな」っていうものにならないように気を付けているんですよ。そのときそのときの自分達の好きな音楽や聴いている音楽は反映されると思いますけど、何かと一緒にならないようにtricotのオリジナリティを出せたらなって思っています。ジャンルでまとめられないような音楽を作れるように意識していますね。

Q.tricotの音楽って、歌とメロディがあって、楽曲があって、その2本の軸が同時進行で別のベクトルを走ってるように感じるんです。なのにその2本の軸を同時に聴いたときに軌跡みたいな混ざり方をするんですよ。それってまさに大発明だなって。

イッキュウ:嬉しい。でも前のインタビューでも話した通り、私はどっちもポップなことをしているつもりなんですよね。

 

Q.はい。ちなみにみなさんのバックボーンってどんな音楽だったりします?

ヒロミ:私はNUMBER GIRLの影響が大きいですね。中尾憲太郎さんのベースもNUMBER GIRLというバンド自体も自分的には衝撃やったんで。オルタナやけどポップで、ベースもルートやけど独特で。それこそ昔は真似していた部分もあります。

 

Q.オルタナだけどポップというのはtricotとしても受け継いでいますよね。吉田さんは先程民族音楽の話もありましたが。

吉田:僕はキューバの民族音楽のサルサをやっていたので、そこからインドやアフリカの音楽を聴いていたんですけど、そういう各地のポップスをドラムやパーカッションで表現出来たら面白いなって思っています。サポートだった『3』の頃はそういう要素は出してないんですけど、実はマスロックやポストロックって個人的にはあまり通ってこなかったので、じゃあラテンとかミュージカルのような抑揚の付け方を入れたらどうなるかなって挑んだ結果がこの作品だったりします。

 

Q.だから想像の斜め上からくるリズムを感じるんですね。キダさんは如何でしょうか?

キダ:ルーツでいえば椎名林檎、NUMBER GIRL、ACIDMANなんですけど、その影響が今も濃くあるかといったらそうじゃなくて、そのときそのとき聴いているものにダイレクトに影響受けやすいタイプだと思います。その中でさっき言ったような自分の根っこにあるものを小出しにしていくスタイルですね。

 

Q.「悪口」からはハードコアの要素も感じました。

イッキュウ:あのハードコア展開は私も「そういくんや!」ってびっくりしました。『T H E』の「Swimmer」みたいな展開になると思ってたけど、それを引き裂いてハードコア展開になったのは自分でも予想外でした。

 

Q.「悪口」のその部分もですし、「大発明」のサビもですけど、急に大雨が降ってきたみたいな展開も面白いですよね。バッと降ってサッと止むみたいな。

キダ:「大発明」のサビは、それまでの流れとは全然関係のないところから持って来て「サビ、こんな感じにしてみたいんやけど」っていうのをどうそこまでの展開に繋げるかを考えて作りました。

 

Q.「BUTTER」のギターの重ねはキダさんだけでやっているんですよね?

キダ:そうですね。ルーパーを使ってやっています。

イッキュウ:先輩(キダ)がルーパーで重ねているから私はハンドマイクで歌ったらかっこ良さそうやなって。これまでも何曲かやってみようと思ったんですけど、AメロBメロは弾かなくてサビで結局弾くみたいなパターンが多かったからギターは持っていたんです。今回、ハンドマイクでやれて良かったです。ギターを放り投げてハンドマイクになるのは「MATSURI」くらいなので(笑)。

 

Q.9月には9周年企画として渋谷TSUTAYA O-EAST にて「爆祭 2019(Vol.12)」と「9才(クサイ)ワンマン」の開催、そしてメジャーデビューも発表されましたが。

イッキュウ:そう、メジャーデビューするんです。

 

Q.変な意味じゃなくて、tricotがメジャーデビューするとは思っていませんでした。

イッキュウ:分かります、私もそう思ってたので(笑)。昔、まだバンドを始めたばかりの頃はメジャーデビューすることを目指すもんやと思っていたし、実際に結成してから1年も経たないうちにメジャーの方からいっぱい誘ってもらうことがあって。だけどヒロミさんが「メジャーに行くのは違う。しばらく自分でやってみたい」って言ってたんですよ。でも本当にあのときメジャーに行かんくて良かったなって思っています。9年やってきて自分達がどんなバンドなのかは自分達が一番理解しているし、ある程度はtricotというバンドのイメージも分かって頂いていると思うので急にブリブリの服を着せられることもないやろうなって(笑)。でも結成1年目やったら着てたかもしれないし(笑)。

吉田:自分達から着始めるかもしれないですけどね(笑)。

 

Q.ちなみにヒロミさんは何故当時メジャーに行くことを拒んだのですか?

ヒロミ:やっぱり当時は自分達のことがまだ何も分かってなかったからだと思います。当時も今も、特にメジャーが嫌いって訳じゃないし、メジャーで活動しているバンドでかっこいいバンドも沢山知ってるので嫌だってことはないんですけど、ただあのときはなんとなく「今じゃない」って思ったんですよね。

イッキュウ:感覚の話よな。

ヒロミ:うん。あとは一気に言われ過ぎてどれが良いのか分からなかったのもあります。そこで失敗するのも怖いし、まずはバンドとして地に足を着けないとなって思ったことも大きいかも。

 

Q.tricotは地に足着きまくってますからね。

イッキュウ:根が張り過ぎて埋まってないですか(笑)。

キダ:腰くらいまではいってそう(笑)。

ヒロミ:9年くらい漬かってましたからね。あ、でもその分美味しいかも(笑)。

イッキュウ:臭くなってそう(笑)。私、売れるとか売れたいとか、ずっとピンとこなかったんですけど、売れること自体より、どういう肥料とどういう水でどうやって咲くかっていうことが大事だと思うんです。売れてもダサかったら意味がないし。だから今の自分達のままでどうやっていくかだと思うんですよ。

 

Q.売れることより売れ方ですよね。tricotがメジャーシーンでどうtricotしていくのか楽しみにしています。

イッキュウ:パワープレイじゃない感じで、且つ攻めていきたいですね。

 

 

タイトル:リピート
【CD】品番BKRT-013
価格:1500円(+税)

【CD+tricotオリジナルイヤホン】品番:BKRT-014
生産限定BOX/タワーレコード限定
価格:9000円+税

2019年3月20日発売
発売元:BAKURETSU RECORDS / JAPAN MUSIC SYSTEM
販売元:JAPAN MUSIC SYSTEM

【Spotify】

【Apple Music】
https://itunes.apple.com/jp/album/%E3%83%AA%E3%83%94%E3%83%BC%E3%83%88-ep/1458827706

【LINE MUSIC】
https://music.line.me/launch?target=album&item=mb0000000001897c11&cc=JP&from=tw&v=1

tricotの9周年企画「爆祭 2019(Vol.12)&9才(クサイ)ワンマン」

9月23日(月・祝)「爆祭 2019(Vol.12) 」 
会場:渋谷TSUTAYA O-EAST
開場 14:30 / 開演 15:30
チケット:¥5,000
※出演者後日解禁

9月24日(火)「9 才 ( クサイ ) ワンマン」
会場:渋谷TSUTAYA O-EAST
開場 18:30 / 開演 19:30
チケット:¥3,500

 

https://tricot-official.jp/