結成3周年を迎えた我儘ラキアがこれまでに発表してきた全楽曲を収録したフルアルバム『StartingOver』を完成させた。2016年6月に「われがままに。自分らしく歌う。」をコンセプトに結成された我儘ラキアはメンバーの脱退、加入、怪我などを経験しながらも前に進み続け、その都度進化を遂げてきた。その足跡がしっかりと記録されているのが今作『StartingOver』である。今作に収められている過去の楽曲は星熊南巫、海羽凜、川﨑怜奈の現ラインナップで再レコーディングされており、音源も再録、リミックスによりブラッシュアップされた最新型の我儘ラキアを聴くことが出来る。アイドルとしての葛藤を抱えながら、光を求め、ついには自らの旗を堂々と立るまで成長した我儘ラキアに話を訊く。
Q.今作は我儘ラキアとしての歴史を順に辿れる作品だなと。
星熊南巫:結成から今までが全部入っていますね。
海羽凜:でも当時とは音源が変わっているので、楽曲としての進化も楽しんでもらえるアルバムになったと思います。
星熊南巫:ドラムのパターンとか全然違うんですよ。今まで無かったノリも加わっていて、昔の曲でも新曲を歌っているような気持ちになるのは面白いですね。やっぱり3年経つと曲にも慣れてしまうし、そこで止まってしまっていた部分もあるんですけど、まだまだ曲と一緒に進化出来るんだなって改めて考えるきっかけにもなりました。
Q.初期の楽曲ですと「ゼッタイカクメイ」の進化には驚きました。
星熊南巫:「ゼッタイカクメイ」はかなり変わったと思いますね。歌のアクセントの付け方とか。
Q.確かに。「それこそが本当の君の姿さ」のパートとか凄いですから。
星熊南巫:あははは。前はアクセントも揃えて3人で綺麗に歌うことを意識していたんですけど。
海羽凜:アイドルっぽさというか。
星熊南巫:でもそこを余り考えないで歌ったら癖が強くなりました(笑)。
Q.そういう進化はアルバムがリリース順に並んでいるからこそ分かり易く感じます。第1期の頃の楽曲は特に。
海羽凜:自分達で歌っていてもそれは感じますね。
Q.当時の我儘ラキアを振り返るとどんな時期でした?
星熊南巫:私はアイドルを全く知らない中で我儘ラキアを始めたので、アイドルシーン自体を異文化な感じで見ていました。色んな人にアイドルっていうものを教えてもらいながらやっていた感じというか。だから初期のMVとかを今観ると面白いですね(笑)。
海羽凜:凄く頑張ってるよね(笑)。
Q.我儘ラキアが結成された3年前はアイドルとバンドの垣根も無くなってきた時期だったと思うんですよ。でもそうなることで逆にバンドとアイドルが比べられることも増えた時期だったと思っていて。
海羽凜:めちゃくちゃ比べられましたね。
Q.その中で結成時から我儘ラキアは楽曲で存在を叩きつけるようとしていたと思うのですが、バンドシーンを意識することってありました?
星熊南巫:元々私はバンドが好きだったんですけど、そもそも同じ土俵に立てているのかなって思うことがあって。例えば、メジャーとか事務所に入っているバンドは別ですけど、基本的には働きながらバンドをやっていて、仕事で稼いだお金でバンド活動していることがまず凄いなって思うんですよ。でも自分達はそこまでやれてるかって言われたらそうじゃないので。だから活動の重みが違うんじゃないかって。それが悔しかったんです。敵わないなって。
Q.なるほど。
星熊南巫:でも我儘ラキアを続けてきた中でそういう人達とも戦えるようになってきたかなって思えるようになってきたんです。勿論まだまだですけど。
海羽凜:自信を持って戦えるようにはなりましたね。
星熊南巫:自分達はアイドルだけど、「それがなんだ」って戦っていけるように思っているし、思うようにしています。
Q.楽曲としてハードな曲をやっているからこそ、アイドルであることに対する負い目を感じていた?
星熊南巫:それはあります。音楽をやるってことに対する重みとか深さとか、自分で曲を書いて歌詞を書いているバンドに比べて私達は全部用意してもらっている訳で。そこに対する負い目は感じていました。でも全部自分達だけでやってるバンドには敵わないなって。あの頃は本気でそう思っていました。
Q.そういう時期を超えたのはいつ頃ですか?
星熊南巫:それはこの3人になってからです。それまでは本当に自信がなかったんですけど、堂々と出来るようになったのはまだ最近ですね。
Q.再録された「In the end」とかを聴くとバンドとかアイドルとか関係ない次元で戦えると思いますけどね。
星熊南巫:たぶん3年前だったら今の「In the end」とか、今出来てくる曲が自分達に似合わなかったと思うんですよ。リアリティがないというか。
Q.たぶん結成当時は頑張ってアイドルとの差別化を図ろうとしたり、ロックアイドルとしてロックアイドルにならなきゃっていう意識があったんだと思うんですよ。でもこの3年間でそこの差がなくなったというか、我儘ラキア自体に説得力が生まれたんだと思います。
海羽凜:当時は我儘ラキアをどう見せようとか、アイドルっぽくないアイドルにならなきゃって意識は正直ありました。でもそこが段々なくなってきたんですよね。
星熊南巫:方向性が定まらない時期もあったし、でも3年やってきて、この3人でこのアルバムが出来て、やっとスタートに立った気がするんです。でもまだまだ完璧ではない自分達がいるし、「ここでこう歌えたらもっとかっこよくなれるのに」って思う部分もあるので、もっと強くなりたいし、一歩ずつ成長していきたいですね。
Q.そういった日々の軌跡のようなものは「僕らが 過ごしてきた日々は 間違いじゃなかった」と力強く歌う「Days」に現れているなと。
星熊南巫:まだまだ自信を持って自分達がかっこいいって言いきれる訳ではないし、もしかしたら自分達の日々が間違っているのかもしれないんですけど、それを正解にしていくことが出来るのは自分達だけなんですよ。そこはステージに立つ上でしっかり言えるようにしないとなって意識していますね。
Q.この「僕ら」には、メンバーだけじゃなくて、周りのスタッフや応援してくれるファンも含まれている気がするんです。その「僕ら」の日々を肯定する為にも我儘ラキアは正解にしていかなければいけないんだろうなって。
星熊南巫:スタッフのみなさんやファンのみなさんがいくら「正解だよ」って支えてくれても、ステージに立っている私達が「正解じゃない」と思ってしまったら、それは正解じゃないんですよね。だからしっかり正解と言い切れる自分達でいれるように在りたいんです。
Q.そうやって色んな人の思いを背負って活動していく中で、 怜奈さんが以前在籍していたNEVE SLIDE DOWNの思いも我儘ラキアは継承していますよね。
川﨑怜奈:そうですね。
Q.我儘ラキアとNEVE SLIDE DOWNはどのように出会ったのですか?
川﨑怜奈:海羽が怪我をして、星熊が一人でライブをしているときに対バンしたんですよ。そのときに一人で歌う星熊を見てNEVE SLIDE DOWNのメンバーが声を掛けたのがきっかけですね。それでツーマンをすることになって。
Q.そこで共鳴するものがあったと。
星熊南巫:NEVE SLIDE DOWNはスタイリッシュだったし、我儘ラキアとは方向性も音楽性も違ったんですけど、共通点もいっぱいある気がして。
川﨑怜奈:ステージに対する思いとかが一緒で、仲間でありライバルである関係になれたんですよ。負けたくないけど戦友みたいな。他のアイドルとは違う思いが当時の我儘ラキアにはありましたね。
Q.そんな中、NEVE SLIDE DOWNの解散を受けてどう思いました?
星熊南巫:全然実感がなかったです。
海羽凜:意味がわからなかった。
星熊南巫:ショックだったし、解散させちゃう前に自分達にもやれることがあったんじゃないかって。私は元々バンドが好きだったからNEVE SLIDE DOWNみたいな洋楽っぽい楽曲を歌う存在が近くにいることが嬉しかったんですよ。ライバルがいることって凄くありがたいし。だから解散を知って後悔しましたね。本当に嫌だったから。
海羽凜:ラストワンマンも泣きじゃくりながら観て。なのにNEVE SLIDE DOWN自身は凄く明るいライブをするんですよ。最後の最後まで。
川﨑怜奈:最後まで突っ走ろうって思っていたからね。
星熊南巫:解散が決まってからどんどんライブが良くなっていくんですよ。
海羽凜:怜奈とか滅茶苦茶かっこ良かったもん。
星熊南巫:だから余計に悔しかったですね。
Q.その後、まさかの我儘ラキアに加入することになって。
星熊南巫:元々仲間だったから私達は受け入れ易かったですね。怜奈は?
川﨑怜奈:我儘ラキアに誘われたときは想像もしてなかったことなので「え!」って思ったけど、色々考えた結果チャンスがあるなら頑張ろうって気持ちになって入ったんですけど、みんなが凄く受け入れてくれて良かったです。気まずさとか何もなく。
星熊南巫:水みたいな感じだもんね。
川﨑怜奈:水!?
星熊南巫:あって当たり前っていうね。違和感が全くなかった。
Q.怜奈さんが我儘ラキアにいることも、アルバムに「Reboot with…「 」」や「I’ll never forget「 」」が収録されていることで、我儘ラキアの中にNEVE SLIDE DOWNが生きていますよね。
海羽凜:それはお客さんにも言ってもらえます。
川﨑怜奈:「I’ll never forget「 」」をライブでやるときはNEVE SLIDE DOWNのことを思い出すって言ってもらえますね。
Q.あとアルバムを時系列で聴いていく中で感じたのですが、初期の楽曲「Be light for you」で歌っている「光になりたい」 ということが我儘ラキアのひとつのテーマにもなっている気がして。それが「There is surely tomorrow」では「光になる、必ず」と明言しているんですよね。その光になる為に突き進むのが我儘ラキアの在り方なのかなと。そんな中、「We’ll keep raising the flag」ではついに旗を立てた訳で、光が見えているのかなって思ったりして。
海羽凜:凄い。
星熊南巫:日々悩んでいるので、光のような煌めいたものにはまだまだ遠いんですけど、もし人から見たときにそう映っていたら凄く嬉しいです。
川﨑怜奈:まだまだですけど、そういう存在になりたいと思ってステージに立っているので、それは素直に嬉しいです。
Q.我儘ラキアを光として照らしてくれる仲間やファンが当時に比べて増えたのかもしれないですね。自分達だけが光っているのではなくて誰かによって光らせてもらっているというか。我儘ラキアとファンの方との関係性がお互いを照らし合わせているような気がしますね。
星熊南巫:ファンのみなさんとの距離が良い意味で近いんですよ。駄目なときは駄目ってみんなめっちゃはっきり言ってくるし(笑)。でもそういう関係性だからこそお客さんも仲間だと思っていて。そういう人からもらったパワーは何倍にもして返していきたいと思っています。もらってばかりで何も返せなかったらアイドルをしている意味がないので。
Q.そういうアイドルとしての在り方やアティチュードが我儘ラキアは凄くかっこいいんですよ。「Trash?」とか、アイドルとしての精神性が溢れまくっているじゃないですか。楽曲としてもパンクだしロックだし滅茶苦茶強いなと。
星熊南巫:音楽のジャンルの世界で言えばアイドルって有利だと思うんです。NGがないというか、なんでも出来るじゃないですか。自分達はアイドルって括りで活動しているけど、自由な音楽性を武器にしてどこまで音楽シーンに食らいついていけるかを常に考えているし、凄い人達と負けず劣らず戦っていけるか、その為にどれだけ本気でやれるか、そういう気持ちは「Trash?」に込められていると思いますね。
Q.今回、このフルボリュームなアルバムが完成して、我儘ラキアとしてここからどんな存在になっていきたいですか?
星熊南巫:最初はアイドルという存在であることに対して引け目を感じていたけど、今はアイドルの音楽性の幅広さや自由さに気付いたし、誰かに捉われないでライブをすることにも気付けたし、もっともっと色んな所に飛び込んでいって、刺激を受けて、我儘ラキアとして沢山の人に知ってもらいたいと思っているから、アイドルとして、アイドルの世界に捉われないで音楽の世界で戦っていきたいと思っています。
Q.その戦いの狼煙が上がったのが「We’ll keep raising the flag」で我儘ラキアという旗を立てたことに繋がるのかもしれないですね。
星熊南巫:『StartingOver』は我儘ラキアの集大成でもあるし、新しい踏み出しの作品でもあるから、このアルバムをきっかけにまた新しい出会いがあったらいいなって思っています。
海羽凜:『StartingOver』の発売にあたって、今までの我儘ラキアを全部知ってもらえるアルバムが出せることも嬉しいし、それも全部応援してくれるみなさんのお陰だと思っているので、大事に届けていきたいと思っています。CDを聴いてライブに遊びに来てくれたら嬉しいです。
川﨑怜奈:これまでの曲が全部入った作品なので、初めて我儘ラキアを知ってくれる人にもこのアルバムで全部分かってもらえると思っています。レコーディングも改めてし直して、初期の頃よりパワーアップした我儘ラキアを感じてもらえると思うので、いっぱい聴いて欲しいです。
星熊南巫:我儘ラキアはここからです。楽しみにしていて下さい。
我儘ラキア
タイトル:StartingOver
2019年7月9日発売
3000円(税込)
QARF-50522
我儘ラキア「KillboredomTOUR 2019」
2019年7月14日(日)福岡県 INSA
2019年8月12日(月・振休)宮城県 仙台MACANA
2019年9月28日(土)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
2019年10月18日(金)広島県 広島セカンド・クラッチ
2019年11月4日(月・祝)愛知県 名古屋ReNY limited
2019年11月23日(土)東京都 渋谷duo MUSIC EXCHANGE