結成19年を迎えたTHE BOOGIE JACKが自主レーベル「BURIKI’N RECORDS」を設立した。2011年の活動再開以降、活動を共にしたONE BY ONE RECORDSの閉鎖を受け彼らが選んだ道は自分達でバンドを動かすことだった。「バンドをやるのが楽しい」という理由なき衝動がTHE BOOGIE JACKを突き動かす原動力であり、それを持続させるには「音楽が好き」という至ってシンプルな発想のみ。今のTHE BOOGIE JACKはそういった気持ちをメンバーが共有しながら、仕事をし、家族を持ち、バンドを続けている。昨年発表された「Maroon Red」でTHE BOOGIE JACKは「青春は目の前だけ」と歌っている。当時、青春パンクムーブメントのど真ん中にいた彼らが青春という言葉を使ったのはこれが初めてだという。結成19年目のバンドが歌う青春とは。そしてTHE BOOGIE JACKが今歌いたいこととは。BURIKI’N RECORDSを立ち上げたばかりのヒライシュンタに話を訊く。
Q.『globe jungle』のリリースから約1年半経ちましたが、この間はどのような期間でしたか?
シュンタ:基本的には何も変わらなくて、他のバンドに比べたらライブをやる本数も少ないんですけど、その分1本1本をかなり大事にしてやっているし、スタジオに入って4人で音を出すだけで興奮するような、そんな感覚でバンドをやれていますね。スタジオの日なんて、朝起きてメンバーに会うことを考えるだけで「今日楽しみだな」って思っちゃうので(笑)。
Q.素晴らしいですね。そんな中、最近の動きを見ているとバンドに新しい風が吹いているのかなって思ったりもするのですが。例えば若手バンドとの対バンやツーマンを積極的に行ったり。
シュンタ:個人的に今までなかった部分として、人と出会うことに喜びを感じていて。昔は繋がりって言葉にアレルギーがあって、繋がることって意図的に繋がるんじゃなくて、もっと運命的なものだと思っていたんですよ。だから自分から扉を開くこともほぼしてこなかったんです。でも最近は純粋に知らないバンドでもライブが良かったら声を掛けたりするようになって、そうするとそのバンドが実はTHE BOOGIE JACKを知ってくれていたり、好きでいてくれたりするんですよ。これ、俺が話しかけなかったら永遠に繋がれないままだったなって思うことが結構あるんですよ。それは別にTHE BOOGIE JACKが好きとかじゃなくても例えば「ドラえもんが好き」とかでもいいんですけど、そういうのって話さないと分からないんですよね。そうやってこっちから飛び込んでいくのがこの年齢になって楽しくなってきているんですよ。
Q.そうなったのって何かきっかけがあったのですか?
シュンタ:2年前にずっと一緒にやってきたメンバーが辞めた時期に少しの期間1人で活動することが多くて。バンドと違って1人だと、ライブのブッキングから連絡まで全部自分でやらなきゃいけないじゃないですか。でもそのやり取りが楽しかったんですよ。それをTHE BOOGIE JACKに持ち帰っても継続している感じです。
Q.THE BOOGIE JACKは若くしてメジャーデビューしたじゃないですか。普通のバンドが若いときに経験するようなことを今改めてやり直しているような感覚なのかもしれないですね。
シュンタ:ああ、そうかもしれない。だから気持ちとしては若手バンドなのかも(笑)。でも、だからこそ、今活躍しているバンドと一緒にやるときに「大先輩と対バン」とか言われると違和感があるんですよ。逆にこっちがチャレンジャーなのになって思ったり(笑)。
Q.シュンタ君がそう思えるようになるなんて、昔じゃ想像出来なかったです(笑)。
シュンタ:尖ってましたからね(笑)。でも復活したての頃は、そういうプライドはあったし、それが邪魔になっていたりしたんですけど、今はもう本当に素直な気持ちでチャレンジャーだって気持ちでやっているのでと思っているので、先輩、先輩って言うのは逆に辞めて欲しい(笑)。
Q.それは最近の活動を見ていたら凄く分かります。言葉を選ばないで言うと動員が落ちて、それでも這いつくばって挑戦し続けているバンドがTHE BOOGIE JACKだと思うので。
シュンタ:それが楽しいし、這いつくばってやっている感じも実は楽しかったりするんですよ。そこを含めてTHE BOOGIE JACKのリアルだと思うし。
Q.でも活動休止前や復活したばかりの頃はそういう姿を見せたくなかったのでは?
シュンタ:そうですね。まず僕は自分をさらけ出すことを殆どしてこなかったんです。SNSだって正直苦手だし、今でも出来ればあまりさらけ出したくないんですけど、告知ばっかりになっても面白くないと思って、自分の趣味を載せてみたんですよ。TwitterとかInstagramに。
Q.それはもしかして電車ですか?
シュンタ:そう(笑)。最近、電車にハマっていて(笑)。それでSNSに載せたりしているんですけど、そうやって音楽以外で好きになれるものが出てきたり、そういう自分のプライベートを出せるようになったことで、自分からさらけ出すことが出来るよおうになってきたんです。
Q.今シーンの最前線で活躍しているような若いバンドのことも「好きだ」って言うようになったのも昔のシュンタ君とは変わった部分だなと。
シュンタ:自分以外のバンドはみんな失敗すればいいって思ってましたからね(笑)。友達のバンドがいっぱいのお客さんの前でやってるライブなんて悔しくて観れなかったですし。でも今は音楽を発信する側としても、受ける側としてもバランスが凄く良くて、音楽を聴くのがただただ楽しいんですよ。こういう曲を作りたいからこういう音楽を聴く、とか、もはやないんです。ただ好きな音楽を好きに聴きたい。そこに理由はないんですよね。
Q.衝動に理由はないと。
シュンタ:そう。本当に衝動のままにやってますね。止まる理由もないし、進む理由ももはやないんですけど、「楽しい」の積み重ねでやっているんです。
Q.「Maroon Red」はまさにそういう今のTHE BOOGIE JACKを象徴している曲だと思うんですよ。この曲には「青春」という言葉が何度も出てきますが、それって青春パンクのど真ん中にいたTHE BOOGIE JACKが自分達からは絶対に言わなかった言葉じゃないですか。それを今はっきり言葉にしているのは、もう衝動なんだろうなって。
シュンタ:青春の定義って難しいと思うんですけど、当時言われていた「青春パンク」の青春って、僕の解釈では成熟し切っていないなにかを例えていたと思うんですよね。あの頃の僕らは確かに青春時代を過ごしていたんですけど、それを青春パンクって言われることが「未熟者」って言われている気がしちゃって。そこに僕はかっこよさを見出していなかったんですよ。子供っぽく思われるのも嫌だったし。でも年を重ねてきた今、改めてこのTHE BOOGIE JACKの活動を敢えて表現するならばって考えたときに、ポンッと出てきた言葉が「青春」だったんです。色んなものを知った上で、ザ・ハイロウズの「即死」でもありましたけど「何か楽しいか知ってる」ってことなんですよ。何か楽しいか知ってる青春なんです。甲本ヒロトさんが「お先真っ暗というのは前向きな言葉だよ。素晴らしいものが隠れているかもしれない。」って言っていて、それを当時GOING STEADYだった峯田和伸さんは「ナイフで未来を切り裂く」って言っていたんですけど、今の僕らは何となく明日がどういう日になるか知ってるんですよ。それを知った上での楽しさなんですよね。それが今のTHE BOOGIE JACKの青春なんです。
Q.そんな中、THE BOOGIE JACKは結成19年目にして自主レーベル「BURIKI’N RECORDS」を立ち上げた訳ですが。
シュンタ:2011年に再始動したときに色んなレーベルから声はかけてもらっていたんですけど、僕らは常に人で選んできたので、やるならONE BY ONEでやりたいって気持ちが強くて。それで8年間、一緒にONE BY ONEと活動してきたんですけど、レーベル活動が終わってしまうことになって。勿論とても残念ではあったし悩んだんですけど、じゃあ他のレーベルって考え方にはどうしてもなれなくて。それに今は有難いことに自分達でCDは作れるし、音源も聴いてもらう手段だってあるじゃないですか。だから自分達で舵を取りながら、好きな人たちを巻き込んでやっていけたらなって思って自主レーベルを作ることにしました。それが今のTHE BOOGIE JACKの今を一番良い状態で継続できる手段が自主レーベルだったんです。
Q.とは言え、自主レーベルを立ち上げての活動に不安はなかったですか?
シュンタ:逆に、年を重ねることでバンド活動に不安に思っている人たちがいたら「大丈夫だよ」って言ってあげたくて。これは自分達が身をもって感じていることなんですけど、大人になればなるほど、どうしてもバンド活動は窮屈になっていくんですよ。でもそんなときに「THE BOOGIE JACKはやれてるよ」って姿を見せたいんですよね。それは上から目線とかじゃなくて。来年20周年を迎える中で、バンドを続けられるか悩んでいるバンドがいたら「THE BOOGIE JACKでもやれてるから大丈夫だよ」って姿を見せていきたいんです。最近はそういうこともちょっと考えていますね。希望の存在になりたいなって。
Q.THE BOOGIE JACKのようなスタンスで活動するバンドが大型フェスに出ることも希望だと思います。家族がいて、仕事をしていて、それでもやれることを証明しているなと。
シュンタ:僕らは一旦活動を止めているけど、辞めたくない気持ちがあるうちはどうやっても辞められないんですよ。それは自分の中で区切りを付けたとしても。一旦区切って仕事をしたり、一旦区切って家族を作ることも大事だと思うし、僕らはそうしてきたけど、その先にも音楽はやれるよってことはしっかり伝えていきたい。だってTHE BOOGIE JACKはそうやっているから。
Q.活動を止めるまでの7年間より、活動再開してからのキャリアの方が上回ったことも凄いですよ。
シュンタ:メジャーデビューしていた期間が何年とか、もうそういうのじゃないとこで活動してますからね。ただ今が楽しいっていう。
Q.だから、ザ・ブルーハーツの10年とザ・ハイロウズの10年を、ザ・クロマニヨンズがキャリアで超えたような感覚と近いのかもしれないですね。出来る曲も含め。
シュンタ:ああ、そうですね。曲作りをしていても過去最高に良い曲を作ることが合言葉になっているんですけど、今は目下自主レーベル第1弾の音源を作っていて、状況としては本当に良い曲が3曲出来上がりつつあるんです。さっき、新しい風って言ってくれましたけど、僕の中でも本当に新しい風が吹きそうな予感がしていて、だから自分でも完成が楽しみだなって思っています。でも全員が納得するまでは絶対に出さないです。
Q.楽しみですね。ちなみにこれまで作ってきた中で一番手応えを感じた曲って何ですか?
シュンタ:「クレーターストーリー」が出来たときは「この曲は一生歌う曲になるな」って思いました。あと「生きてこそ」もですね。こういう曲は聴いてくれてる人も思い入れがあるだろうし超えることって中々難しいんですけど、超えようと思って超えるんじゃなくて、ただ良い曲を書けば自然と超えることだってあると思っていて。今はそういう曲を絶対に作りたいなって思っています。
THE BOOGIE JACK
タイトル:Maroon Red
配信限定