2014年にTRUST RECORDSの姉妹レーベルとしてRAD CREATION内で発足されたTONIGHT RECORDS。これまでにTHIS MORNING DAY、All Found Bright Lights、T/ssue、Re viewを輩出してきた同レーベルが所属バンドの解散、活動休止を経た2019年、新たなフェーズに突入した。その兆しはアイビーカラーがTONIGHT RECORDSに参加した2017年頃から感じていた。そして2019年、Kids Return、イロムク、WALTZMOREと立て続けにTONIGHT RECORDSから音源のリリースが続き、同レーベルの第2期が始まろうとしている。今回2YOUではレーベルを主宰する長尾健太郎氏にTONIGHT RECORDSの始まりから現在に至るまでの話を訊いた。更に所属バンドにもTONIGHT RECORDSについても話してもらった。
Q.TONIGHT RECORDSを始めたきっかけは?
長尾:僕は以前THIS MORNING DAYというバンドをやっていてZESTONE RECORDSに所属していたんですけど、自分でレーベルをやってみようと思ってTRUST RECORDSの姉妹レーベルとして2014年に立ち上げたのがTONIGHT RECORDSでした。その後、All Found Bright Lightsが入ってくるまでは自分のバンドをリリースする為の専門レーベルみたいなニュアンスでした。
Q.All Found Bright LightsがTONIGHT RECORDSに参加したのは?
長尾:元々RAD CREATION内でラウド専門レーベルをやっていて、彼らはそこからCDを出していたんですけど、ちょうどバンドがイージーコアをラウドロックシーンの中で活動していたところからメロディック路線に移行しようとするタイミングだったのでTONIGT RECORDSでやろうって声を掛けたのがきっかけですね。その翌年にはTHIS MORNING DAYが解散したので、今度はしばらくAll Found Bright Lightsの専門レーベルみたいになっていました(笑)。
Q.その後、T/ssue、Re viewとギターロックバンドがレーベルに加わってレーベルカラーが一気に変わった印象を受けました。
長尾:当時、自分のバンドが解散したことで視野が広くなったんだと思います。それまではTHIS MORNING DAYを通した自分の視点でしか考えていなかったんですけど、解散したことでもっと色んなものが見えるようになって。自分のバンドどうこうじゃなくて、自分を信じてくれるバンドと一緒にレーベルをやっていきたい気持ちに自然と変わっていったのがちょうどそれくらいの時期ですね。
Q.長尾さんはライブハウス、レーベル、イベンターと、今でも様々な顔がありますが、バンドをやっていた頃とはかなり変わりましたよね。
長尾:そこはもう全然違うと思います。バンドをやっているとどうしても自分のバンドにどう返ってくるかを考えてしまうんですよね。でもバンドが解散して完全に裏方になったことで、在り方自体が別物になったというか。自分の経験が人に対して何かできることがあるなら提供したいという、あと、僕がバンドをやっていたことなんて今一緒にやっているバンドはみんな知らないと思います(笑)。完全に裏方なので(笑)。
Q.バンドをやりたくなることは?
長尾:ないですね(笑)。ギターを弾くことは好きなのでたまに家では弾いてますけど。でも今の方が自分の性に合っているなって思います。自分と一緒に動いてくれるバンドをどうやって売るか、その為に何が出来るかを考えることが楽しいんですよね。
Q.そんな中、All Found Bright Lights、Re viewの活動休止、T/ssueの解散がありましたが。
長尾:バンドマンとしての自分からレーベルとしての自分に移行してから一緒にやってきたバンドの解散や休止は僕にとっても節目になりました。
悲しかったし悔しかったですけどね、そのタイミングでまたアイビーカラーという素晴らしいバンドに出会うことになりました。
Q.アイビーカラーとの出会いをきっかけにTONIGHT RECORDSは新しいフェーズに突入しましたよね。
長尾:それは自分でも感じています。レーベルの動き方も変わったと思っていて。僕は割と全部受け身だったからTRUST RECORDSの綿谷さんや流通会社の意見に従っていた部分もあったんですけど、バンドを売って行くために自分が出来ることをもっとしなければ、と思うようになったんです。それでこれまで自分が繋がった人に積極的に連絡を取るようになったり、動き回るようになったり。きっと当たり前のことなんだと思うんですけど、僕にとっては「レーベル」という概念として変わったことだなって思います。
Q.2019年はアイビーカラーのリリースを皮切りに、Kids Return、WALTZMORE、イロムクと立て続けにリリースがありました。一気にレーベルメイトも増えた訳ですが。
長尾:Kids ReturnもWALTZMOREもイロムクも、3バンドともTONIGHT RECORDSでやりたいって声を掛けてくれて。僕も好きなバンドばかりだったので何が出来るか一緒に考えようって話をしていたんですけど、送られてくるプリプロ音源が本当に良くて。滅茶苦茶ドキドキしたんですよね。みんな音楽性もバラバラですけど(笑)。
Q.確かにバラバラですけど、共通点として繊細さがあるのかなって。
長尾:ああ、それはありますね。きっとそういうバンドが僕は好きなんですよ。一歩間違えたら死んじゃうような危うさを持った音楽をやっているバンドが好きなので(笑)。
Q.それぞれどのように出会ったのですか?
長尾:アイビーカラーは2016年に東京のCLUB CRAWLと大阪のLIVE SQUARE 2nd LINEと東名阪の交換イベントを行ったときに出会いました。R.A.Dはbit and piecesとthings as they areを連れて行って。そこに大阪代表で来ていたのがアイビーカラーでした。そこでとにかくこれはヤバイ!!って思って、一緒にやろうよ、って持ちかけました。WALTZMORE は元々Goodbyèsというバンドをやっていたんですけど、その前からヴォーカルのこうのいけはるかがやっていたバンドとはTONIGHT RECORDSのバンドが対バンしたりしていて。その頃から曲が本当に良かったんですよ。それで1年前くらいに突然はるかから「全国流通をしたいので力を貸してもらえないでしょうか」と連絡が来て、ライブも見てなかったのに速攻で契約を決めました。イロムクは去年の10月にアイビーカラーとWALTSMOREと神戸の太陽と虎で対バンをしたんですけど、その打ち上げがアイビーカラー、WALTZMORE、イロムクのスリーマンになり、そこで滅茶苦茶飲んで(笑)。それで意気投合しました。人のこと信じてなさそうなVoのふじぬまに「信頼しているし、一緒にやらせて欲しいです!」って言われたのがきっかけですね。Kids Returnは前身バンドの鏡トナリの頃から共同イベントをやっていたんですけど、Kids Returnになってから、ずーっと入りたい、っていうことは言われてたんです。どうしようかな、と思っていたのですが、ライブを見たらもうブッチギリにカッコよくて。この一生懸命でしかしアホやってる感じ、それも僕は引き出せる気がしたんですよね、それで一緒にやることになりました。
Q.第2期に突入したTONIGHT RECORDSですが、今後の展望はありますか?
長尾:実はあまりないんですよね。これまでもバンドにレーベルを背負わせたり、あえてTONIGHT RECORDSのグッズを作ったりもしてこなかったですし、僕やレーベルがどうこうより一先ずはそれぞれのバンドの状況がどんどん良くなっていけばいいな、と思っています。それでいつかそれぞれのバンドが大きくなったときにそれぞれがリンクしたら面白いなって思っています。独自のブランディングは取りつつ、その時がきたらTONIGHT RECORDSとして何か打ち出していきたいですね。
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アイビーカラー
Q.TONIGHT RECORDSとの出会いを教えて下さい。
佐竹惇:アイビーカラーが始動してからすぐに、東名阪のライブハウスが2バンドずつセレクトして各所を回るというイベントを行ったんですがその時の名古屋のライブハウスの担当が長尾さんでした。それがはじめての出会いです。そのイベントが終わって1週間くらいして長尾さんから「一緒に是非ともやりたい」ってお話を頂きました。正式に所属したのはそこから1年後ですがその時からたくさんサポートして貰ってました。
Q.アイビーカラーを自身ではどのようなバンドだと思っていますか?
佐竹惇:アイビーカラーは誰しもが通る青春時代にそっと彩りを加えられる、そんなバンドだと思います。
Q.最新作『春を忘れても / short hair』について聞かせて下さい。
佐竹惇:全国流通盤で今までミニアルバムは2枚出してシングルは初めてなんですけど、体感のボリュームとしてはアルバムと同じくらいに僕らの魅力を詰め込めたと思ってます。
「出会い」「別れ」で広くテーマを持った「春を忘れても」と日常のなんてことない些細な幸せとあどけなさをテーマにした「short hair」、この両A面の対比を是非とも注目してほしいです。
Q.東名阪ツアーが全箇所ソールドアウトしたりとバンドとして着実にステップアップしている印象ですが、バンドの目標はありますか?
佐竹惇:挙げだしたらキリがないんですが先ずは全国をワンマンでツアーを回りたいということが一番に思い浮かぶ目標です。SNSを通じて各地に僕たちを待ってくれている人がここ1年で自分たちでびっくりするくらい増えて、対バンイベントも勿論楽しくて素晴らしいですが僕らだけの時間を各所で作りたいなと思ってます。
Q.TONIGHT RECORDSのバンドとして、レーベルを通してやってみたいことなどあれば聞かせてください。
佐竹惇:ジャンルや界隈として結構バラバラで今は所属バンドそれぞれが自分たちの畑でもがいて戦っている印象があります。でも本当に全バンドそれぞれどんな人にも共通して響く魅力はあると思うのでレーベルツアーで全国1つのステージで戦ってみたいですね
アイビーカラー
タイトル:春を忘れても / short hair
RCTN-1012 ¥1,000-(税別)
NOW ON SALE
http://ibecaller.com/
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イロムク
Q.TONIGHT RECORDSとの出会いを教えて下さい。
ふじぬま:長尾さんが主催として関わる「でらノメサーキット」へ出演した際、長尾さんがわざわざ僕らのライブを観に来てくれた時が出会いです。その際、数多くいる出演者の中観に来て頂けた事が素直に嬉しかった事を今でも覚えています。
Q.イロムクを自身ではどのようなバンドだと思っていますか?
ふじぬま:めんどくさいバンドです。僕の我儘が過ぎていつもメンバーを困らせてます。ただメンバーにももっとはっきり物事言えよと思う事が多々あります。ただそこで言わないでいてくれるのはきっと皆の無言の優しさでもあるのかなと思ってます。ですので、このメンバーでやれてる事自体がこのバンドの強みです。
Q.3rdミニアルバム『ふたり』について聴きどころなど聞かせて下さい。
ふじぬま:全部です。文字で説明するとなると字数的に10ページは必要になってくると思うので、百聞は一見にしかず、ならぬ、”百文は一聴にしかず”です。隅々まで一度聴いて頂けたら全部と言う回答もきっと納得して頂けると思います。
Q.独創的な曲タイトルや言葉選びが印象的ですが。
ふじぬま:意識している事は、その歌詞絶対辞書から引っ張ってきただろ、みたいな普段全く使いようの無い難しい言葉は使わないようにしています。また「ライン」などの現代を代表する様なワードは絶対に使わないです。例えば携帯電話はギリギリセーフですが、スマホとは言いたく無い。何年後かに聞いた時に古くなりたく無い。思い出はいつも鮮明に昨日の様に蘇るので、そこでその今生きている時代とのギャップは産みたく無いです。あとはメタファーを多用したり、日本語特有の言い回しを使って必要最低限の言葉数で別の意味も示せるような歌詞を書きたいと常々思っています。
Q.TONIGHT RECORDSのバンドとして、レーベルを通してやってみたいことなどあれば聞かせてください。
ふじぬま:周りから「TRUST所属おめでとうございます」と言われる事が多々あります。 そこをまずはひっくり返します。ちゃんとそれぞれの良さがあるのに一括りにされるのは絶対に嫌です。全く別物、でも仲間と言う世間の認識に変えるには、単純に所属バンドがもっと知名度、実力共に上げTONIGHT RECORDSというものを世間に確立させる必要があるので、僕は自分のバンドをひたすら良くする事しか考えていませんし、今後もそうだと思います。それが一番TONIGHT延いては他所属バンドのためになると信じています。ただ、ゆくゆくは所属バンドでどの箱でやってもソールドさせられるようなツアーが出来る集団になりたいという新しい夢も頂いたので、もっとイロムクとして精進して行きたいと思っています。
イロムク
タイトル:ふたり
RCTN-1014 ¥1,600-(税別)
2019年7月3日発売
http://iromuk.com/
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Kids Return
Q.TONIGHT RECORDSとの出会いを教えて下さい。
Ippei:「お前らはこんなライブが似合う!」と言って、長尾さんが心斎橋DROPの打ち上げでLiaroid Cinemaの「yellow」のMVを観せてくれて、かっこ良すぎて僕が確か泣いたんですよ!進む方向を迷っていたんで余計に響いてしまって…。その日からTONIGHT RECORDSに入りたいと強く思うようになりました!
Q.鏡トナリからKids Returnに改名したのはどのような経緯だったのですか?
Ippei:メンバーが脱退して3ヶ月の活動休止がありました。活動再開して、新しく曲を書いていく中で鏡トナリというバンド名が楽曲に似合わなくなってきました。バンド名を変えるという事は過去を捨てるって事になるような気がして、それはまた違うよなと考え、過去も全部連れて行くって意味を込めて鏡トナリの代表曲「Kids Return」をバンド名にしました。
Q.自身ではKids Returnをどのようなバンドだと思っていますか?
Ippei:Kids Returnはライブバンドです。ずっとジャンプしてます(笑)。激情系で切ないメロディ歌うので拳を突き上げたくなると思います!
Q.『The Light』について聞かせて下さい。
Ippei:サビメロがすごく好きなので頭からサビをかましました!再生2秒でガッツリきます。 8月には『GOOD MORNING WORLD』というミニアルバムもリリースするので楽しみにしていて下さい。
Q.メンバーそれぞれがキャリアのある中、Kids Returnという名前も含め楽曲やライブのテンション感などに胸が熱くなります。これからどんな活動をしていきたいですか?
Ippei:分かる人に分かれば良いとはまだ思えなくて、もっともっと沢山の人に聞いてもらいたいし、僕たちを拾ってくれた長尾さんや応援してくれてる人達に良い景色をいつか見せたいです!
Q.TONIGHT RECORDSのバンドとして、レーベルを通してやってみたいことなどあれば聞かせてください。
Ippei:レーベルツアー全箇所ソールドアウト!
Kids Return
タイトル:The Light
RCTN-1013 ¥500-(税込) 2019年6月5日発売
タイトル:GOOD MORNING WORLD
RCTN-1016 ¥1500-(税別)
2019年8月7日発売
http://www.kidsreturn-official.com/
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WALTZMORE
Q.TONIGHT RECORDSとの出会いを教えて下さい。
こうのいけ:もともと僕が一昨年までやっていたバンドで、RAD SEVENにライブをしに行く機会が多かったのですが、当初の長尾社長はあまりフレンドリーに接してはくれず「あまり好かれていないのかな…」と少々不安になっていました。しかし、いつかのRAD SEVENの打ち上げで長尾さんが泥酔した勢いで「お前の曲が本当に好きだ。一緒になにかやりたい」と言ってくれたことが本当に嬉しくてずっと記憶に残っていました。改名する前の”Goodbyès”が始動するタイミングで、真っ先に反応をしてくれたのも長尾さんでした。またバンドでCDを全国のCDショップに置きたいという気持ちがメンバー一同強かったので、ある日思い立って長尾さんに「あの日言ってくれたことをまだ覚えています、一緒にやりませんか」と連絡したのが契約のきっかけです。
Q.メンバー個々の特色や武器を持ち寄った、まさに「音楽集団」といった印象を受けましたがWALTZMOREをどのようなバンドだと思っていますか?
こうのいけ:WALTZMOREは全員同い年で、昔からの友達です。元々それぞれ違う場所にいながらも、常にお互いを讃えあってきた関係性でした。音楽、演奏の部分だけではなく人間的に惹かれあって集まった4人だからこそのグルーヴ感、多幸感は他のバンドにはない強みかなと思います。そしてメンバー全員コーラスをとるのですが、ライブで実際に聴くハーモニーは格別だと自負しております。
Q.Goodbyèsから改名しWALTZMOREとして最初の音源が『birthday』であることに意味合いを感じました。
こうのいけ:前身バンドの「Goodbyès」の頃からあった楽曲達、そして今回のアルバムを作るにあたって書き下ろした新曲「セカンドダンスの夜に」による10曲入りのフルアルバムです。旧曲はすべて現メンバーで再レコーディングをしており、今の僕らの全てを惜しみなく表現した現時点のベストアルバムです。一曲一曲、ここでは書ききれないほどのストーリーがありますし、アルバムを通して聴きごたえ充分のデビュー作品だと思っております。
Q.TONIGHT RECORDSのバンドとして、レーベルを通してやってみたいことはありますか?
こうのいけ:正直これといってやりたいことは浮かびませんが、彼らと一緒ならばどんなことでも楽しくて仕方ないと思います。それほどTONIGHT RECORDSは所属バンド同士の繋がりが色濃く確かなもののように感じます。レーベルメイトが上質な音楽を奏でている事実はとても誇らしく、常に刺激を受けています。
WALTZMORE
タイトル:birthday
RCTN-1015 ¥1,800-(税別)
2019年7月3日発売
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TONIGHT RECORDS
代表 長尾健太郎
所属バンド
アイビーカラー
イロムク
Kids Return
WALTZMORE