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HUCK FINN 30th Anniversary
名古屋・今池にあるPUNK・HARD COREの聖地「HUCK FINN」が2011年、遂に30周年を迎えることとなった!2YOU MAGAZINEとして何かお祝いをせねば!ということで現オーナーである黒崎氏に相談したところ、同じく老舗・Electric Lady Land(通称・E.L.L)のオーナー、名古屋ライブハウス界の重鎮・平野氏(通称・シゲさん)との対談がしてみたい!ということで早速セッティング。12月某日、有形文化財を眺めながら名物・重箱蕎麦、生麩田楽を頂くことができる、津島にある「水鶏庵(くいなあん)」、明治時代の建築物で美味しいお茶を楽しむことができる「機石荘」にて対談決行。歴史ある場所での歴史ある話が聞けた。

Q.HUCK FINN、30周年おめでとうございます!

シゲさん:もう30周年になるんだ。じゃあ黒ちゃん、7歳からライブハウスやってるんだ?

黒崎氏:いや、これが僕は2代目で…。僕がこの世界に入って、まだ17年なんです。

シゲさん:いやいや、17年もやってるって十分すごいことだよ。

黒崎氏:HUCK FINNの歴史の半分以上は関わってますね。

シゲさん:今日はこういう歴史のある場所で、こういう対談が出来て、本当に意味があるよ。こういうところにくると心が落着くでしょ。

黒崎氏:確かに。僕は今までこういうところってあんまり興味なかったんですけど…。何か良いですよね。


Q.というか、黒崎さんはお蕎麦とか興味なかったですもんね。

黒崎氏:うん、そうなんだけど、こうやって蕎麦屋さんで紅葉見て、歴史的な建造物眺めて、熱燗飲むのもいいもんだなって。

シゲさん:「粋」だよな。普段、打ち上げとかで飲む日本酒とは全然違うだろ?

黒崎氏:ホント違いますね。…もう1本頼んでいいかな?


Q.いいですよ(笑)。ところで黒崎さんは何でまたシゲさんと対談したかったんですか?

黒崎氏:あの当時の名古屋のライブハウス・シーンを知ってる数少ない人だからね。そういう話を聞いてみたくて。

シゲさん:しかしさ、単純に、よく続いたなって感じだよな。自分のとこ(E.L.L)もそうだけどさ…「もうやめたろうか!」みたいなの何回もあったでしょ。

黒崎氏:いや、でも僕の場合は「あったもの」を継いだだけじゃないですか。だからHUCK FINNができるよりも前から続けてるシゲさんの話を聞いてみたかったんですよ。あの当時にライブハウスを立ち上げるって本当に大変だったんじゃないかなって。

シゲさん:俺、実はHUCK FINNが始まる前のイーストグッドマンっていうお店の頃…あの地下って昔は3店舗に分かれてたんだよね。

黒崎氏:あ、それは教えてもらいましたね。何かジャズ喫茶かなんかだったって。

シゲさん:そうそう、俺、そこの常連だったんだわ(笑)。丁度今のHUCK FINNのステージ側だね。
その「イーストグッドマン」と「時計仕掛け」っていうロック喫茶があって…その前に「ヤゴ」って名前だったかな?ちょっと曖昧だけど。
70年代初期から中期だったと思うんだけど、当時は…まぁ今もそうなのかもしれないけど、家では大きい音でロックを聴くことができなかったわけでさ。だからロック喫茶っていうのが流行ってね。何のことはない、一日中ロックが大音量で流れてるだけの喫茶店なんだけど(笑)。その頃、ちょこちょこ行ってて。

黒崎氏:そう考えると、あのビルの地下はずっと…。

シゲさん:ロックの殿堂だよ(笑)。

黒崎氏:そういうことなんですね。僕は3店舗をぶち抜いた姿しか知らないんで。やっぱり歴史の長いバンドの人とか来ると、カウンター側を指差して「昔はこっちがステージだったんだよ」みたいな話を聞きますね。


Q.ステージが今の位置に来たのって何年ぐらいなんですか?

黒崎氏:…調べてくれば良かったね!(一同爆笑)


Q.HUCK FINNが起きた当初って…。

シゲさん:一番奥と、その手前の2軒分だった。ハックの前オーナーは、その当時のロック喫茶の常連だったんじゃないかな。

黒崎氏:前オーナーがHUCKを立ち上げたのが26歳だったらしくて、その歳で、その時代にライブハウスを立ち上げるなんて本当にすごいなって。シゲさんがE.L.Lを始めたのって27歳でしたよね。本で読んだんですけど。(自信満々で)

シゲさん:俺が始めたのは24歳の時だよ。

黒崎氏:あれ?全然違いましたね…。(一同爆笑)しかしその若さでそこまでできるってすごいと思うんですよね。僕の場合は一からやったわけではないし、今から自分で一から立ち上げるっていう発想もないし。

シゲさん:俺の場合は、元々自分のバンドが出てたお店が潰れちゃって、やる場所がなくなっちゃったから始めただけでさ。もう意地で、経営計画も何もなく、行き当たりバッタリでやっただけ(笑)。

黒崎氏:その頃って昼は現場仕事して、夜はライブハウスっていう二束のわらじだったんですよね。

シゲさん:そうそう。7年はそうやって続けた。

黒崎氏:7年間!すごいなぁ。僕はホント引き継いだだけなんで、初代の立ち上げの苦労が分からないんですよ。

シゲさん:でもさ、黒ちゃんもそうだと思うけど、他に選択肢が無かっただけなんだよ。だから引き継いだにしても、立ち上げたにしても同じことだよ。ターニングポイントに来たときに「やるか」「やらないか」しかないんだよね。

黒崎氏:じゃあそういう部分で自分を卑下する必要はないってことですかね?

シゲさん:全くないよ。

黒崎氏:いかんせん、2代目っていうのが自分の中で負い目になってる部分があって。

シゲさん:いやいや、そんなこと気にする必要ないから。
人生を生きていく上で決断する分岐点って必ずあるんだよ。ホントはそれが毎日あるんだけど。
で、たまたまHUCKをやるか、やらないか、っていう所で、やるっていう判断をしたから今があるわけでさ。別にゼロから始めた人が偉いわけでもないしね。30年の中でまだたかが17年でしょ。だったらこの先にもっと発展させていけばいいじゃん。


Q.発足当時のHUCKをシゲさんはどう見てたんですか?

シゲさん:シーンは、勢力が拮抗しないとパワーって出てこないから、ELLが全部を独占したらダメだっていう風には思ってた。そういう意味では「アンチ・E.L.L」でもなんでもいいんだけど、対抗勢力っていうのがちゃんと出てきてくれた方が良かった。
だからHUCKのオープンは歓迎したよ。当時の店長とも仲良くやってたし、交流もけっこうあった。


Q.当時からHUCKはPUNK・HARD COREが多かったんですか?

シゲさん:立ち上げの頃の記憶はちょっと曖昧なんだよな…。

黒崎氏:僕が聞いた話だと、他の店で…当時はハートランドとE.L.Lしかなかったんですけど、そこには出れないバンド、演奏も下手、態度も悪い(笑)、みたいなバンドを面倒みてたっていう感じだったみたいです。それが今につながってるっていう話を前オーナーから聞いたことがありますね。

シゲさん:ええと、80年代初頭はパンク・ムーブメントが来るわけですよ。その後にすごく悪いヤツラがいっぱい出てきて(笑)。
ウチにも出てたんだけど、ライブのたびに流血騒ぎはあるわ、ケンカはあるわでさ(笑)。もう日常茶飯事。ナイフは持ってくるわ、鋲まみれの革ジャンでダイブはするわ、エンジニアブーツの先に五寸釘刺してるやつもいたな(笑)。
そういうPUNKの中でも相当ヤバい方に行ってた連中も紛れ込んできて、で、流石に俺も堪忍袋の緒が切れて「いい加減にしろ!」となって。そういうヤツラが出る場所がなくてHUCKに流れ着いたっていうのがあるかもな。

黒崎氏:その流れで、今でもPUNKやHARD COREのバンドが多いっていう。

シゲさん:当初はE.L.LにもPUNKは出てたんだけどね。それこそTHE STAR CLUBや原爆オナニーズなんかもそうだし。ただ、PUNK ROCKが好きっていうだけではなくなってきて、そこから派生した…ヤバくて怪しい人たちがいっぱい来るようになっちゃって。
80年代の終わり頃にはHUCKは相当病んでたよね、イザコザだらけで。丁度今池のユニーの北側の駐車場がカラーズ(屋台村)だった頃。

黒崎氏:僕は岐阜の多治見出身なんですけど、そこまで噂は届いてましたから(笑)。ただ、PUNKとかHARD COREとかやるならHUCKでやらなきゃ意味がないっていう風には言われてましたね。


Q.シゲさんは長年ライブハウス・シーンを見てきてますけど、大きな転換期があったとすればどの時期だったと思いますか?

シゲさん:まぁ「イカ天」の頃だろうね。それまではライブハウスなんて言葉は知らない人のほうが多かったんだけど、あの頃急激に立ち位置が変わっていった。
80年当時はE.L.Lもレーベルをやっててね。当時のインディーズっていうのは、「メジャーでは扱えない」「メジャーでは扱わない」「相当コアな人にしか分からない」音楽をちゃんと形にしたくてやってて。
それがイカ天、バンド・ブームをキッカケに波に飲まれていくわけ。メジャーへのステップアップみたいになって、それまでとは全く違うものになって、E.L.Lはレーベルをやめちゃったんだよね。

黒崎氏:ライブハウス的にもあのバンド・ブームっていうのは相当デカかったんですね。

シゲさん:なんだ、みんな結局メジャー行きたいのかよ!って(笑)。ロックがお金になるっていう考えをする人が出てきたのもこの時期かもしれないね。

黒崎氏:その点、HUCKは所謂「その世界ではすごく認知されてるバンド」が多いですね。

シゲさん:ある種、正しいんじゃないの?俺はロックにおいてのメジャー・インディっていうのをすごく信じてたから、葛藤があってね。でも、みんなメジャー行きたいんじゃんって分かっちゃったから、明らかに路線変更したよね。メジャーで通用するバンドのスキルが必要なライブハウスに変わっていったね。


Q.こうやって話を聞いてると、HUCKとE.L.Lってベクトルは真逆なんですよね。だからこそこの2つが一緒の時代を歩んできた意味があるんでしょうね。

シゲさん:そういうことなんだよ。

黒崎氏:今、ライブハウス・シーンの中心って新栄っていうイメージがあるじゃないですか。でも大須と今池に独自の流れを持ったE.L.LとHUCKがあるっていうのは自信を持っていいんじゃないかって、最近ようやく思えるようになってきたんですよね。


Q.そろそろシメの言葉を頂きたいのですが。

黒崎氏:あの、前にライブハウス飲み会やったじゃないですか。2YOU主催の。あの時にシゲさんが「お前らライブハウス経営者が良い車乗ったり、良い生活したりして、これからこの業界に入ってくるヤツラに夢を見せなきゃいけないんだよ」って言ってたじゃないですか。アレ目から鱗でした。

シゲさん:この業界ってさ、金がないことが美徳というか…金がないことを鼻にかけちゃってるじゃない。それって間違ってるんだよね。ちゃんと働いてるんだから、ちゃんと収入を得なきゃいけない。ましてや他の誰にも出来ない仕事をしてるんだから胸を張って金を得るべきなんだよ。だから黒ちゃんもそろそろ自社ビル買えば?(一同爆笑)


Q.(笑)宣言しちゃいましょう!

黒崎氏:いや、記録に残ることは絶対に言いません!(一同爆笑)

 

めん処 水鶏庵(くいなあん)・機石荘(きせきそう)

愛知県津島市橘町4-70
0567-26-9171

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