PICK UP INTERVIEW
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the band apart
日本語詞へのシフトチェンジやメンバー個々が楽曲を持ち寄るなどバンドの新たな挑戦が形となった前アルバム「街の14景」から約2年弱、シングル「BONGO e.p.」を経て、the band apartが辿り着いた7枚目のアルバム「謎のオープンワールド」は独自の創造性に裏打ちされた唯一無二の世界で構築された作品となっている。謎に包まれたアルバムタイトルや曲名に戸惑いを隠せないままアルバムを聴いていくがその謎は深まるばかり。「オープンワールド」という言葉がゲーム用語で広大な世界を自由に探検出来るように設計された世界を指すことにヒントはありそうなのだが…。アルバムの謎に迫るべく、木暮栄一に話を訊く。

Q.「謎のオープンワールド」というタイトルの謎が全く解けないのですが。

木暮:あははは。


Q.タイトルを見たとき「何を言ってるんだろう」って思いましたから。更に収録曲のタイトルを見て「やっぱり何を言ってるんだろう」って(笑)。イマジネーションを掻き立てるには充分過ぎましたけど。

木暮:そうですよね(笑)。何処に向かうんだって(笑)。


Q.オープンワールドというのは?

木暮:これはゲーム用語なんですよ。グランド・セフト・オートっていうゲームがあるんですけど、バカでかい仮想空間があってそこで自由に遊べるゲームの世界をオープンワールドっていうんですよ。


Q.それをタイトルにしたのは?

木暮:アルバムに4カ所スキットが入ってるんですけど最初はなかったんですよ。でもアルバムが出来上がっていく中であまりにも歌詞の世界観がバラバラだから「どうしようかな」って悩んだ結果、仮想空間の色んな出来事を並べているっていう世界観を設定したんです。それでゲームのタイトルっぽいアルバム名にしようと思ったんです。「アトランチスの謎」みたいな。でもそれじゃあまりにも意味が分からないだろうと思って、仮想空間のゲームのことだって分かる人には分かるように「オープンワールド」って付けたんです。謎を付けて(笑)。


Q.なるほど。フィールドを何処にでも行けるという意味では音楽に置き換えたらバンアパは何処にでも行けるバンドですよね。

木暮:言われたらそうなのかも。


Q.オープンワールドというのはバンアパのことなのかも。

木暮:そこまで解釈してくれると嬉しいです(笑)。


Q.アルバムに(opening)(save point A)(save point B)(ending)というスキットがあることも今の話を聴いて納得しました。

木暮:あのスキットは区切りというか、場面転換をイメージしていて。特に(save point B)からの3曲はちょっとエモーショナルな流れになったりして。今この2015年にCDというフォーマットで音源を出すんだったら曲順がしっくりきてないと意味ないと思うんですよね。それもありこういう世界観を設定をしたしスキットも入れたんです。


Q.ああ、アニメ「北斗の拳」でいうビューンみたいな。

木暮:ビューンって何すか(笑)。それ分かんないかもしれない(笑)。


Q.例えばケンシロウが戦っている裏でラオウとトキが戦っているとして、その場面に変わるときに起きるビューンみたいな描写があるんですよ。

木暮:分かんないけどたぶんそれです(笑)。


Q.では楽曲についてですが、メンバーそれぞれが楽曲を持ち寄って作った前作「街の14景」を経て今作はどのような制作方法で作られたのですか?

木暮:まず「街の14景」をメンバー個々で作った後に「BONGO e.p.」を作ったことで、ひとりで突き詰めていくよりみんなでアイディアを出し合ったほうがバンドとして楽しいし建設的だなって思ったんですよ。


Q. 4人で作る楽しさを再確認したと。

木暮:そう。それに昔と違うのはメンバー全員プレイヤーエゴが今はないんですよね。昔の曲を聴くと、例えば「このメロディーなのに何でこんなにギターを弾いているんだろう」みたいな場面があって。しかもそれをお互い放置していたんですよね。それが今は「こういう歌だからこうしよう」っていうアレンジの相互性をみんなで考えられるようになった。曲を無視して「どうしてもこう弾きたいから」みたいなのは今はなくなったんですよね。


Q.前は誰が必殺技を最初に撃つかみたいな部分があったと。

木暮:そういう集団でした(笑)。しかも全員同時に撃つから(笑)。「alfred and cavity」とかは特にそうでしたね。


Q.そこから「街の14景」に辿り着いて、更に「BINGO e.p.」では誰かのレシピをみんなで料理することでバンドを再構築したと。

木暮:まさに。自分である程度予想してレシピを書く訳じゃないですか。でもそれを元にみんなで作ることで予想していた完成形の斜め上にいくのが楽しかったんですよね。ギターアレンジやベースラインを投げると俺は思い付かないものが返ってきて。それが面白い方向にいったんですよね。今回のアルバムではその作り方から発展して、骨組やネタを出した後「ここが足りない」とか「こういうサビ欲しいな」って思ったら、俺と荒井のネタを足したり荒井と原のネタをくっつけたりして。それが曲を不思議にしたんですよね。


Q.その不思議というか、謎な部分は歌詞や曲名にも表れていますよね。日本語で書くようになって作品としては4枚目だと思うのですが早くも世界観を確立したと思います。だって「笑うDJ」ですよ(笑)。

木暮:そうですよね(笑)。俺、日本語の曲ってちょっと馬鹿な感じというか「何それ?」って曲の方が覚えていて。「笑うDJ」ってよく分からないけど笑っちゃう気がしません?
「笑うDJ」は最初は真面目に書いていたんだけどふざけてみょうと思って書き直したんですよね。


Q.今作は歌詞はどういう振り分けで書いたのですか?

木暮:「笑うDJ」「ピルグリム」「殺し屋がいっぱい」「遊覧船」「最終列車」が俺。「廃棄CITY」「禁断の宮殿」「裸足のラストデイ」が原。「月と暁」「消える前に」が荒井。川崎は「遊覧船」の一行ですね。


Q.どの歌詞もメンバー個々の個性を放ちながらも不思議な統一感があるように感じました。

木暮:なんだろう、付き合いが長いから根本的に物ごとの捉え方が似てるのかも。でもみんな共通して何か意味があることを書いてる気がする。「何の曲?」って聞いたときに「何でもないよ」って歌詞はないと思う。それが分かり易いかどうかで言ったら分かり難いのかもしれないけど。


Q.メンバー間で歌詞の刷り合わせってするんですか?

木暮:全くしないですね。お互い感じたり、休憩中の会話でちょっと話すくらい。


Q.今作で木暮さんが歌いたかったことは?

木暮:曲によって違うんですけど分かり易いので言えば「殺し屋がいっぱい」は殺し屋がいっぱいいるなって思って書きました。そのままだけど(笑)。


Q.ネットの世界にもリアルな世界にも殺し屋のような奴がいっぱいいるという社会風刺の曲ですよね。

木暮:これだけネット社会なのにある世代からはテレビが最大の情報源で。簡単にイメージ操作されちゃう感じあるじゃないですか。あとネットの中ではちょっと空気を読まない発言をするだけで寄ってたかって叩く感じ。そういう殺し屋がいっぱいいるなって思う。


Q.そういう歌詞をこういう曲調で歌うから余計刺さりますよね。笑いながら怒るような。

木暮:あははは。気持ち悪い感じですよね。こういう歌詞をミニマルで暗い曲でやっても面白くないから曲は爽やかにしたんですよね。


Q.さきほど話に出た「笑うDJ」はどうですか?

木暮:まずは言葉の引っかかりですよね。「何それ?」っていう。あとは色んな事が凄いスピードで起きていくことやお酒を飲んで爆音で音楽を聴いて楽しい自分の記憶とか、色んなことをごちゃ混ぜに散文的に書きました。


Q.この曲のスピード感やギターのユニゾンは初期のバンアパっぽいですよね。

木暮:そうそう。久しぶりにユニゾンとかしてる。


Q.他のメンバーの歌詞はどう捉えていますか?

木暮:ひとりワントピック挙げていくと、荒井の「消える前に」は今までの俺達だったら絶対にやらない歌詞になったと思います。


Q.サビ前の「君に愛を」とか。

木暮:そことか。荒井とちょっと話したら「雰囲気だけで伝えるより、はっきりとドキッとする言葉を使ってみたいんだよね」って言っていて。今でも字面だけ見ると恥ずかしかったりするんだけど、でも自分達的には新しかったのでトピックにはなるかなって。


Q.荒井さんはソロアルバムを作ったことも大きいのかもしれないですね。

木暮:それは絶対あるでしょうね。そこで試行錯誤しただろうし、歌詞も沢山書いただろうし。バンドとはまた違った書き方をしたことで、それをバンドに反映させた部分は絶対にあると思います。


Q.川崎さんは「遊覧船」の一行とのことでしたが。

木暮:歌詞は一行なんですけど「遊覧船」のネタは川崎で。前日まで出来ていた構成をいきなり辞めるって言い出して、「どうしたの?」って聞いたら「素材だけ録ってループ使って曲を作りたい」って。それで川崎がループ素材を録って、それを俺が組んで、原と荒井が考えたメロディーを乗せたから、4人のアイディアが混ざっている曲になったんだけど、そういう曲がああいう曲調になったのが面白かったですね。


Q.原さんは凄くパーソナルな部分が出ていますよね。

木暮:凄く出ている。俺は普段のあいつやあいつの生き方をよく知っているからなのかもしれないけど、「裸足のラストデイ」とか、原なりに社会との軋轢を抱えながら、そこで折れないように頑張ってるのが歌詞に表れている気がするんですよね。あの曲はドラム以外のアレンジも全部原がやっていて。「気違い」って言葉が出てこなかったらラジオで流して欲しかったですね(笑)。


Q.今作は今まで同様演奏や構成は凝りつつもシンプルなアレンジでより歌が前に出ているように感じたのですがアレンジで意識したことは?

木暮:曲の長さを3分くらいにすることや余計なことをやらないようにしたんですよ。あとは歌がメインにあるのはみんな共通してあったと思う。歌を柱にどれだけ各楽器で絡み合うラインを作ることが出来るかっていう。昔はそういうことを考えずに重ねていたから。だから難しく聴こえたのかも。メンバー全員が好きなことだけやってるっていう。


Q.でも好きなことをやってるのは今も変わってないですよね。好きなことをやった上で曲のことを一番に考えている。

木暮:それはありますね。昔みたいな自己アピール願望はみんなないので。それより曲が良くなるようにしようって。


Q.今回、バンドの原点というか、議論しあって曲を作ってみて感じたことはありますか?

木暮:正直、スキットが出来る前はよく分からないなって思ってたんだけど、スキットを付けて曲順が決まってからは今までの延長だけど何処か違うな、新しいなって思いました。それが何なのか自分でも分からないんだけど。謎です。だから何回も聴いています(笑)。なので次はもうちょっとこの手法を研ぎ澄ませてみようかと。この作り方でやってみて凄く面白かったので。もっと自由にやってもいいかなって思っています。


Q.オープンワールドですからね。可能性は無限ですよね。

木暮:謎にね(笑)。


the band apart:
荒井 岳史(Vo、Gt)
川崎 亘一(Gt)
原 昌和(Ba、Cho)
木暮 栄一(Dr)

アルバムジャケット

the band apart
NEW ALBUM
謎のオープンワールド
asg-029

2015年1月21日発売

2900円(税込)

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