山田:僕とえりっさ(大久保恵理)でハヌマーンの前身バンドをやってて。ギターが抜けて3ピースになり、青木が加入して今の形になりましたね。
Q.前身バンドからそのまま移行したんですか?
山田:いや全然。前身バンドではパンクをやってて。でもパンクロックが好きで憧れてたけど、僕はパンクロックに選ばれた人間では無かった。それで自分の音楽を追求しようと思ってパンクロックの曲は全部捨てたんです。
Q.それって思い切った決断だったのでは?
山田:そうやって周りにもよく言われるんやけど、全てを置いて新しく開拓しようっていう一本気な事でもなく。ただ単純にやりたくなくなってもうて。
だから当時のお客さんは変化にびっくりしたと思うんですけど、ハヌマーンになってからの方が自分の音楽をやれてる気がするんですよね。
Q.ハヌマーンという名前の意味は?
山田:例えばラモーンズやギターウルフみたいに一貫したロックスピリットを僕は持っていないし、the原爆オナニーズみたいにバンド名に思想やアイデンティティーを入れる潔さも無かったんです。
やりたい事も気まぐれで変わっちゃうから音楽性やジャンルを想起させないバンド名にしたかったんですよ。
ハヌマーンっていうのはラーマーヤナっていうインドの古典文学に出てくる猿族の英雄なんですけど、幼稚園の時にテレビで見たタイ版のウルトラマンに出てきたハヌマーンのオリエンタル感がトラウマでずっと覚えていて。
名前の据わりも良いし、音楽理念を感じさせない名前だからハヌマーンにしました。
Q.アルバム「RE DISTORTION」のテーマは?
山田:前作で全部出し尽くした感があったから、何をやっても前作の劣化版になると思ったんですよね。それでもまた作品を作るなら、10代の頃の何の意味も無くイライラしてたあの頃のようにゼロからまた歪む必要があったんです。それで「RE
DISTORTION 」なんです。
Q.M-1「Nice to meet you」には優しさや愛を感じました。
山田:嬉しいなあ。あのね、ツアーで始めての土地に行くとハヌマーンを知らない人も沢山いるでしょ?そこで「名前だけでも覚えて帰って下さい」とは言えないんですよ。
音楽で威嚇しに来た訳じゃないし、「はじめまして、僕達はハヌマーンです。大阪から愛を伝えに来ました」って事を伝えたいんですよ。
Q.「世界の何処にも逃げ場はない」って歌ってるのは?
山田:唯一この世にある平等ってライブハウスの中やと思うんですよ。舞台の上の人間もいれば、裏方もいて、PAの人も照明の人もチケット?ぎりの人もドリンクの人もいて。
狙ってる女の子とデート感覚で来てる男の子もおるやろうし、彼氏についてきただけの女の子もおるやろうし、とんでもない悪党もおるやろうし、毎日が充実してる奴もおれば毎日が最低だって奴もおるやろうし。
でも結局ライブハウスの爆音の中では条件はみんな一緒なんですよね。だから「世界の何処にも逃げ場はない」っていうのは決してネガティブな意味じゃなくてみんな一緒なんだよって事なんですよ。
Q. M-2「Fever Believer Feedback」はパチンコに対する皮肉?
山田:僕がパチンコ屋でバイトしてて。社会批判するほど社会に不満は無いし、不景気だって言ったってロックバンドがやれてるんだから70年代のロンドンとは絶対に違う訳やし。
僕がロックンロールに自分の鬱屈や思想をのせる事があるとすれば、自分が対面してるバイト先の事なんですよ。社会風刺しようとしたって何のイデオロギーも無いし。僕は写実画が書きたいんですよね。目の前に何の色気も無いタバコと灰皿しかなかったらそれを書くしかないっていう。抽象画が書きたいなら別やけど僕は目の前のものを書きたいから。
Q.M-6「幸福のしっぽ」は人間の本質に迫る歌だと思います。
山田:幸福は相対性なものの上に成り立っている幸福しか無いって思うんです。
例えば生まれた瞬間に死に直面する人もいる。僕達の幸福は「そういう人に比べれば」っていう相対的な幸福なんですよ。
それは先進国に生まれた人間の宿命なんですよ。生まれた瞬間に幸福なんだから。あのね、僕達っておこがましい存在だと思うんですよ。
所謂…これは僕の言葉じゃなくね、所謂恵まれない人達に救援物資や募金をするじゃないですか。でも所謂恵まれない人達にとって、僕達は悪役なんですよ。疎ましいと思うんですよ。
僕達は何か頑張ってここにいる訳じゃないし、それってただのラッキーでしょ。だったらヒールを全うして良いと思うんですよ。音
楽が人間の生活に必要かって言われたら、彼らからしたらただの娯楽やと思う。「良いアルバムが出来ました」とか彼らからしたらどうでもいいんですよ。
でもね、疎ましく思う存在がいないとその人達のエネルギーになれへんのやったら、先進国の人間として疎ましい奴を全うしてやればいい。僕ね、「相対的に幸福だから感謝しないと」とかホンマくだらないと思うんですよ。ヒールを全うする為にも絶対的な幸せを追求したいと思ってるんですよ。
Q.最後に「母さん」と歌われてますが。
山田:僕ね、2年前にお母さんが亡くなったんです。それで亡くなった翌日に、お母さんの携帯電話に電話したんですよ。そしたら充電が無いだけなんだけど、「電波の届かない所にあります」って言われたんですよ。
それでね、その日からずっと手紙を書いてきたんです。それを歌にしたんです。自分の絶対的な幸福は歌う事やから。それでお母さんに歌ったんです。
ホンマに歌を歌ってて良かったですよ。うん、今日は話を訊いてくれてホンマにありがとうございます。誇りに思います。また名古屋が好きになりましたよ。
名古屋にはJONNYとか明日、照らすとかviridianとかcinema staffとか、好きなバンドもいるしね。
ただ名古屋のみなさん、コメダのシロノワールは3日連続食べたら確実にアホになるから気をつけなあかんよ(笑)。ツアーで来たら食べるんやけど、シロノワールはホンマに美味い。でも3日連続食べたらあかんで(笑)。