ATATA

昨年9月22日に東京は渋谷TSUTAYA O-WESTにて開催されたワンマンライブ「ATATA ONE-MAN SHOW!!!」の模様が収録されたDVDがあの日からちょうど1年後の2017年9月22日にリリースとなる。これまで音源のリリース方法もライブにまつわるあれこれも全てが規格外の手法で我が道を走ってきたATATAが正攻法で挑んだO-WESTでのワンマン。そこに挑むことで芽生えた意識の変化や挑んだことで再確認したこと。あの日のライブはATATAにとってどんな意味を持っていたのか。ATATAの暴走機関車、奈部川光義に話を訊いた。このDVDを持ってATATAはお礼参りとして東名阪フリーライブを開催する。奢ってもらったら奢る。これがATATAのやり方だ。今年も暑い夏になりそうだ。

 

Photo by Miwa Tomita

 

 

Q.今回、昨年のO-WESTでのワンマンからちょうど1年後の9月22日にあの日のDVDがリリースされる訳ですが。

奈部川:早いよね。あの日も「Rise and Falling」って新曲を出したし相変わらず曲作りはしてるから結局この1年もずっと動いてる感じはしてるかな。

 

Q.これまでもKEMURIのツアーのSHIBUYA-AXやSATANIC CARNIVALや残響祭など大きなステージでのライブはありましたけどATATA主催でのライブとしては最大キャパのライブでしたよね。

奈部川:そうだね。でも最初はみんなやりたがらなくて(笑)。会場の広さも含めて俺達の手に余るっていうかさ。ライブ中も話したんだけど俺達って普通のバンドが普通にやらなきゃいけないことをすっ飛ばしてやってきたじゃない。音源の出し方もライブのやり方もトリッキーなことばっかりやってきた。じゃあ実際に普通のバンドが当たり前にやってることをやったときにどこまで俺達に出来るのか、それを一回クリアしないとその先に進めない気がしたんだよね。俺達のライブにお金を払って観に来てくれる人が何人いるか知りたかったっていうか。あのワンマンで知りたかったのはそこなんだよ。だから敢えてレコ発ファイナルとかツアーファイナルっていう名目も付けなかったの。それだと勢いで誤魔化せちゃうから。何の名目もない普通のライブにどれだけの人が来てくれるか確かめたかったんだよね。

 

Q.正攻法で戦って実力を試したかったと。

奈部川:それが大きかった。変な話、あの日のライブは俺ずっと冷静だったんだよ。とにかくライブを滞りなく終わらせなきゃって気持ちだった。だってお金を払って来てくれてる人があんなに沢山いたから失敗は許されないじゃん。逆に『JOY』のツアーは全箇所無料だったから失敗しようが何だろうが「無料だから良いでしょ?」って言えたんだけど(笑)。でもO-WESTは何ひとつ失敗出来ないっていうプレッシャーがあった。それが逆の効果になって演奏もしっかり出来たと思う。俺達が得意とするひっちゃかめっちゃかなライブじゃなくて。

 

Q.MCで奈部川さんが「今までずっと自分の為に歌ってきたけど今日はみんなの為に歌った」と話したのはあの日のATATAのライブに責任が生まれたから出た言葉だったんですね。

奈部川:まさに責任感だよね。あんなに沢山の人がチケットを買って来てくれて、その人達に全員満足して帰ってもらうライブをしようと思ったら、当たり前のことなんだけど演奏をちゃんとしなきゃいけないし綺麗な照明の下でかっこよく見せなきゃいけない。その上でいつものように暴れたかったんだよね。

 

Q.あのライブの後、鰯君(岩田健太)が「自分達のことを人気がないって言うのを辞める。それは集まってくれた人に失礼なことだと思った」ってSNSで言っていて。それはあのライブで生まれた責任感のひとつですよね。

奈部川:これまでの俺達って存在してる実感がなかったの。存在感はあるんだけど姿が見えなかった。だけどあの日からやっと自分達が形として存在することを証明出来た気がするんだよね。KEMURIのAXも残響祭も、大きいステージに呼んで貰う度に毎回思っていたのはそこを主戦場にしているバンドとの次元の差で。俺達はライブハウスでなら戦えるけど大きいステージに立つときはそれ以上のものが要求されるから壁にぶちあたったんだよね。その殻を破りたかった。それが『JOY』のスタート地点でもあるんだよね。大きいステージで歌うときにちゃんと後ろまで響く歌を意識するようになったり。

 

Q.ライブに対する向き合い方が変わったと。

奈部川:前は分かる人にだけ届けば良いって思っていたんだけど、今は全員に伝えたいって思ってるから。でも、俗に言う売れ線を狙う訳じゃなくて、もっと上手に伝えられるんじゃないかって思うようになったんだよね。俺達の曲って複雑でしょ?それがかっこいいって今でも思っているんだけど、ステージに出てきて「ジャーン!」ってやるかっこよさがあることも知れたから。こういう大きな場所に出て行くならそういう壁も越えていかないときっと先がないだろうしね。一言で言えば上昇志向なのかもしれないけど、もっと沢山の人と共有したくなったんだと思う。それを自分達が主役でやったらどうなるか試したくて挑んだのがあの日のワンマンだったんだよ。

 

Q.あの日って朝起きてから家に帰るまでずっと「ATATA」という映画を観てるような気がしていて。朝、雨が降っていたの覚えてます?

奈部川:降ってたね。凄く覚えてる。

 

Q.僕は名古屋から東京に向かったんですけど起きてカーテンを開けて「雨か」って思うところからあの日が始まって。それで会場に着いてもまだ雨が降っていたんですけどリハーサルが終わって本番が始まる頃には雨が上がったんです。天候までこの日を盛り上げる演出をしてくるなって思ったんですよね。

奈部川:俺もリハが終わって外に出て雨が上がってたあの感じは一生忘れないかな。今でも鮮烈に覚えてるから。それにライブの時間が近づくにつれ雲がどんどん開けていって空が見えていく感じとかね。最後まで俺達は運がいいなって思ったよ。

 

Q.あの日のライブは「Newborn」から始まりましたがライブ中のことって覚えていますか?

奈部川:全部覚えてる。さっきも話したけど凄く冷静だったのよ。でもなんかそれってプロ意識みたいで、今でも良いのか悪いのか分からないんだよね。もっと自分を見失うくらいぶち切れるのがライブだと思っている自分がいるから。でもあの日に限っては本当に冷静だったし鮮明に覚えてるかな。

 

Q.あのワンマンが「ONE MAN LIVE」じゃなく「ONE MAN SHOW」だったのはそこに繋がるのかもしれませんね。

奈部川:そうそう。あの日のライブはショーとしてやらなきゃいけないっていう責任が自分の中にあったんだよね。他人に言わせたらライブもショーも同じかもしれないけど、自分の中ではあの日はショーだった。みんなからお金をもらった分楽しませたいっていう感情がはっきりあったから。でも実際「Newborn」を歌い出して驚いたのは集まってくれたみんなの歌声の大きさだったの。天井が高いからみんなの声が合わさって自分の足元のモニターから返ってる演奏の音より大きいみんなの声が返ってきた。みんなにショーを見せるつもりだったけど結局主役はどっちだって(笑)。

 

Q.O-WESTにいた全員が主役だったと思いますよ。みんなキラキラしてましたもん。

奈部川:俺達のお客さんって年齢層高いでしょ。だからダイブとかも上手いのよ。みんな好き勝手やってるんだけど阿吽の呼吸っていうか。手練れが集まってる感じがするんだよね(笑)。みんなかっこいいよ。

 

Q.あの日、2階席にATATAのメンバーの子供達が大集合していましたよね。子供達がステージに向かって自分のお父さんの名前を呼んでる光景は凄くグッときました。

奈部川:ロックにプライベートや家族を持ち込むなって意見もあるかもしれないけど、俺達は家族も含めてみんなで楽しみたいから。だって隠してもばれるし生活感が滲み出てるから。それに俺達の晴れ舞台なんだし家族も呼びたいじゃん。子供達に俺達のことを好きで集まってくれたみんなと同じ光景を見せてあげたいんだよ。家庭があるのも俺達、仕事してるのも俺達、その上でバンドをやってるのが俺達だから。俺達にはそういう現実が先にあって夢があるんだよ。だからそこは切り離せないよね。

 

Q.凄く未来があるし夢があるなって思いました。

奈部川:夢があるよね。『JOY』のツアーでもどの会場も子供連れがいたんだけど、後ろの方でお父さんが子供を肩車して観てる訳よ。なんかその姿を見て未来を感じたんだよね。俺達のライブを観た子供達がこんなおっさんに憧れてバンドを始めるかもしれないでしょ。めちゃくちゃ夢があるよ。

 

Q.アンコールで「The Next Page」を観ながら次の物語はこの子達に継がれていくんだなって思いました。

奈部川:うん。最近自分が書く歌詞も次世代がテーマだったりするんだよ。次の世代に何を残していけるかを考えるようになったんだよね。子供達に音楽を通して何か残してあげたいって、遺言じゃないけど、そう思うようになったんだよね。まだ老人じゃないけどね(笑)。

 

Q.あとライブが終わってフロアに誰もいなくなったライブハウスのステージで静かに座る奈部川さんの姿も印象的でした。

奈部川:おじいちゃんみたいだったでしょ(笑)。

 

Q.あははは。あのときは何を考えていたのですか?

奈部川:「やってやったぜ!」みたいな高揚感じゃなくて、ATATAが通らなきゃいけないひとつの局面をクリア出来たことに対する安堵かな。ワンマンが終わるまでは失敗出来ないプレッシャーもあったから騒がず冷静にいようと思ったんだけど、実際にライブが終わっても「ウェーイ!」って気持ちにはならなくて。自分達は次何をするべきなのか、そんなことを考えていたんだと思う。

 

Q.MCで「フィーバーに帰ります」と宣言した通り、8月から無料ツアー「Thanksgiving」が開催されますね。

奈部川:だから「フィーバーに帰ります」っていうのは「いつもの俺達に帰ります」ってことなんだよね。今にして思うと、あのO-WESTって七五三みたいな感じだったの。綺麗なおべべ着させてもらって写真館で写真を撮るみたいなそんな日だった。こんなこと言ったらまた嫌われるかもしれないけど俺達はO-WESTをやって、じゃあ次はO-EAST、その次はLIQUIDROOMみたいなステップアップを望んでいる訳じゃなくて、俺達を応援してくれた人に綺麗な照明の下で綺麗なおべべ着させてもらった俺達を見て欲しかっただけなの。俺達の成功は常にフィーバーにあるから。俺達の活動ペースにおける最高地点はフィーバーで定期的に企画を続けてフィーバーを埋めることだと思っているんだよ。だから今度はいつもの場所で会おうよっていう。

 

Q.奢ってもらった分、今度は奢るよっていう。

奈部川:その感じ。O-WESTで奢って貰いっぱなしだったことがずっと引っ掛かってたんだよね。奢られたら奢り返さなきゃ気持ち悪いでしょ。

 

Q.それでO-WESTから1年経ってDVDを持って恩返しツアーをすると。

奈部川:DVDも普通だったらライブの熱気が覚めやらぬうちにリリースしたほうが良いと思うんだよ。アンコールとかで「今日の模様がいついつに出ます!」とか発表してさ。その方が勢い的には良いはずなんだよ。でも俺達にとっては本当にメモリアルなことだったからDVDは時間をかけてゆっくり作りたかったの。勢いでやりたくなかったんだよね。

 

Q.勢いが大好きなくせに(笑)。

奈部川:そうそう、俺は勢いが大好き(笑)。でも今回のDVDに限っては勢いでやりたくなかった。その勢いを失くすことでセールスが落ちたとしても丁寧に作りたかったの。もっと言うと、本当に好きで来てくれた人と、行きたくても行けなかった人に届けばそれで良いと思っていて。こんなこと言うと怒られるかもしれないけど今回のDVDは新規の人にアピールするつもりは無いんだよね。それより俺達を気にかけてくれる人に大事な作品を届けたいってだけだから。

 

Q.だから発売に先駆けて手渡しでツアーに出ると。

奈部川:やっぱり俺達を好きな人は現場に来てくれるだろうから、ライブハウスで渡したいんだよね。O-WESTのワンマンで俺達にお金を使ってくれる人があれだけいることが分かったからさ、じゃあ後は返すだけでしょ。どうせだったらみんなが楽しめる形で返したいなって思ったらやっぱり無料ツアーで会いにいくことだったんだよね。じゃなきゃ貰いっぱなしで申し訳ないもの。

 

Q.ファンのみんなもATATAからいつも貰っているからATATAに返したいんだと思いますよ。その手段がライブに行くことや物販を買うことだったりするんだと思います。

奈部川:そっか。そうだよね。本当に有難いな。今の自分があるのは音楽のお陰だから音楽に還元したいとずっと思っているんだけど、そんな俺達にみんなが還元してくれて、その相乗効果が転がって俺達の独自の物語になっていってるのかもね。俺達が紡いできた物語はつくづく独特で面白いよね、本当に。

 

 

アーティスト名:ATATA

タイトル:ATATA Live Documentary DVD『20160922』
2017年9月22発売
※2017.08.5 (土)より、ライブ会場にて先行販売開始

 

 

ATATA『20160922』Release Tour 2017
WE ARE ATATA ARMY!!! IN JAPAN!!!
『Thanksgiving』

8/5 (土) 大阪PANGEA
8/6 (日) 名古屋HUCK FINN
9/17 (日) 東京FEVER

open / start 時間未定(昼頃)
adv / day 0円!!!(ドリンク代別)

ATATA ONE-MAN LIVE!!!
※入場無料につきチケットの予約・販売はありません

 

http://atataweb.com/