鳴ル銅鑼

妖艶な歌声と和を基調にしつつもあらゆる音楽を吸収し独自の解釈で昇華し続ける鳴ル銅鑼。2013年、岐阜にて結成された彼らは『無知』『極彩色』『文明開化』と作品を重ねるごとに着実に階段を登り、2016年には名古屋CLUB QUATTROでのワンマンライブも決行。その後、更に高みを目指し上京した彼らは環境や状況が変わる中で彼らが辿り着いた今作『汎神論』は地元で培った経験と上京後の経験が同居した現在の鳴ル銅鑼にしか生み出せない作品となっている。まるで姿鏡のようにバンドの状況がそのまま投影される鳴ル銅鑼の音楽が今後どのように変化していくか、これからも追っていきたい。

 

 

Q.この1年でバンドの状況や環境に変化もあったと思うのですが、上京の話はいつ頃からしていたのですか?

三輪和也:上京の話をするようになったのは去年の名古屋クアトロでのワンマンを決めた頃くらいですね。その頃から「クアトロが終わったら上京したいね」って定期的に話すようになって。井の中の蛙でいたくなかったんですよ。

 

Q.地元での活動に留まらないでいたいと。

三輪和也:岐阜のライブハウスにもタワーレコードにも本当に良くしてもらったし、地元で飲みに行ったりすると色んな人に話しかけられるようになって、それはそれで凄く嬉しかったんですけど、このまま岐阜にいると自分が駄目になると思ったんです。実際全然イケてないのにイケてるような錯覚をしてしまうというか。そうなったらアーティストとして腐ってしまうなって。そういうぬるま湯から脱する為に上京を決意しました。あとは上京したバンドがよく「東京」って言葉を歌詞に入れるじゃないですか。その理由も知りたかったので実際に自分で東京に住んでみたかったのもあります。

 

Q.同郷のcinema staffも東京を題材にした曲がありますよね。彼らは岐阜に対する歌も歌っていますが。

三輪和也:そうですね。cinema staffは地元の先輩で仲良くしてもらっているんですけど、cinema staffの三島さんは岐阜に対する思い入れが特に強い人だと思うんですよ。そんなcinema staffが岐阜を離れ東京で戦っている理由も知りたかったし、ずっと岐阜で見てきた先輩の姿に憧れている部分もあります。

 

Q.上京はメンバー総意だったのですか?

岩ってぃ:僕は反対でした。当時は上京することに意味を見出せてなかったので。でも上京して気付いたんですけど、東京で活動する意味は自分で見付けていかないといけないんですよね。なので今は新しい環境に身を置いて東京でしかやれないことを模索しているところです。

カバ:実は僕も反対していました。でも実際岐阜にいたらぬるま湯だと思うし、まだ20代なので冒険したい気持ちもあるので今は東京での活動を楽しんでいます。

グローバル徹:一番の決め手になったのは和也が「このバンドを大きくする為に上京したい」と言った気持ちに応えたかったこと。自分はプレイヤーとして和也に何処まで着いていけるかがこのバンドの道標だと思っているので、和也が「高みを目指すなら行くべきだ」と言うならば賛同したいなって。

三輪和也:このバンドってピラミッドがちゃんとあるんですよ。僕がアーティストで3人がプレイヤー。メンバーが僕を尊重してくれているのは凄く嬉しいです。それはクアトロを終えてより固くなった気がします。

 

Q.やはりクアトロでのワンマンはバンドにとって大きかったですか?

三輪和也:物凄く。あの当時の僕らにとってはクアトロのワンマンって背伸びだったんですよ。最初は「無理でしょ」って思ったし。でもその「無理」をやらないと意味がないと思ったんです。だけどクアトロが終わったらカバ君が燃え尽きてしまって。

カバ:完全に燃え尽きましたね。必死に勉強して高校に合格した後、一気にやる気がなくなった時の感覚と似てますね。クアトロに向かうまでは必死だったけどあの日結果的に400人以上のお客さんが来てくれてやりきった感じがしちゃって。沢山力を注いだ分、燃え尽きてやる気を無くしてしまったんです。

三輪和也:カバ君はそこで満足しちゃったんですよ。そこに僕は危機感を持ったんです。だから上京して環境を変えないとマズいなと。それに岐阜で音楽をやるのって40代を過ぎて家族を持ってからでも出来ると思うんですよ。でも若い今にしか出来ないことって絶対あるから上京するなら今しかないなって。次のステップにも行きたかったですし。

 

Q.岐阜での活動が「ドラゴンボール」だとしたら上京後は「ドラゴンボールZ」が始まるような感覚だと。

三輪和也:いや、まだ舞空術も使えないレベルですよ(笑)。それなのに達成感を感じてしまっていることが嫌だった。「まだまだこれからでしょ」って思っていたので。それでまたゼロから始めようと東京に活動を移したんです。あと僕は常に追い込まれていたい性格なんだと思います。安定したくないというか。それも上京のきっかけですね。

 

Q.環境の変化は歌詞や曲に顕著に現れていますね。なんだか初期の鳴ル銅鑼に近いように感じました。

三輪和也:自分でも上京後に書いた歌詞や曲は1周回って最初の頃に戻った気がします。反骨精神というか「こんなにかっこいい音楽をやってるんだから聴けよ」っていう押し付けに近い曲が増えた気がするんですよね。

岩ってぃ:今回のアルバムって最初に作ったデモCDに似てるんですよ。レコーディングしながらあの頃の気持ちに近いかもって思ったんです。鳴ル銅鑼が2周目に入ったみたいな感覚というか。

 

Q.鳴ル銅鑼を始めた頃の感覚と積み重ねてきた経験から得た感覚が同居しているのが今の鳴ル銅鑼なのかもしれませんね。

三輪和也:僕のメンタル的にも今作はそういうアルバムだと思います。このバンドを始めた頃って世間に対して「三輪和也をなめんなよ」っていう何も知らないが故の無双状態だったと思うんですよ。まるで「バガボンド」で初期の宮本武蔵が自分が最強だと思っていたような(笑)。でも活動するにつれ現実が見えるじゃないですか。次第に僕はその迷いを曲にするようになったんです。それが前作までなんですけど、今回のアルバムにはその迷いがないんですよね。

 

Q.なるほど。その結果辿り着いたのは?

三輪和也:「やっぱり三輪和也をなめんなよ」っていうことでした。今作にはそういう曲が揃っていると思います。自分でも面白いのは、これを受け入れて欲しい気持ちと簡単に受け入れられてたまるかって気持ちが同時にあることで。もしこの作品が売れたら嬉しいけど何処かで寂しい気持ちになると思う。この音楽が分かってたまるかって気持ちもあるし、聴いてみたほうがあなた方のためですよって気持ちもあるんですよね。

 

Q.分かって欲しいけど分かってたまるかっていう。

三輪和也:娘を嫁に出す父親が嬉しいけど寂しいみたいな。例えるならその感覚なのかな。面倒臭いですね(笑)。

 

Q.「兆シ」では鳴ル銅鑼のアイデンティティが歌われていますよね。

三輪和也:前向きな歌なんだけど「僕らなら絶対やれる」みたいな前向きではなくて「光が無いなら闇を従え行こう」っていう僕らなりの前向きさを歌った曲ですね。晴れ晴れしさではなく、闇を喰らって光に打ち勝つような、そんな兆しを込めました。でも鳴ル銅鑼の曲って浮き沈みがあるので「これが鳴ル銅鑼だ」っていう揺るがないものは特にないんですよ。だからフルアルバムを作ると色んな曲がごちゃ混ぜにえる。一貫して共通しているのはかっこ良くない音楽はやらないってことだけですね。このアルバムでも押し付けがましいほどにかっこいいことだけ誇示してるつもりです。

 

Q.『極彩色』もやりたいことを色々詰め込んだ作品でしたが。

三輪和也:そうですね。でもあの頃はやりたいことを訳も分からないまま全部やっていたんです。その『極彩色』を洗練させたのが今回のアルバムだと思います。『極彩色』も混沌としていたと思うけど今回は混沌とした自分の躁鬱感をしっかりパッケージして「食えよ!」みたいな(笑)。そういう気持ちで作りましたね。

 

Q.『極彩色』でイメージしていたものが『汎神論』ではちゃんと形に出来たと。

三輪和也:そうかもしれませんね。迷うのを辞めたというか。「だってかっこいいもん」って感覚だけで作れたのかな。

 

Q.今作に『汎神論』と名付けたのは?

三輪和也:神頼みではなく、僕も神様のひとりと考えたときに自分から動けば世界も動くというか、自分がパワースポットである必要があると思うんですよね。自分が動かなければ周りは動かないし、助け舟を待っていても沈むだけなんですよ。だから自分が思うようにやりたいことをやればいいってメッセージも込めて『汎神論』と名付けたました。僕の中で『無知』は誕生というストーリーがあって『極彩色』は混沌というストーリーがあって『文明開化』は発展というストーリーがあったんですけど、じゃあ次はどうするかって言ったら信仰だと思ったんです。このタイミングで自分の考え方を提示するべきだなって。それで自分の考えに一番近い宗教観の言葉を選んだら『汎神論』がはまったんです。

 

Q.そのときそのときの自分がアルバムに色濃く反映されているんですね。

三輪和也:今までのアルバムも全てそうですね。無知故に何色にでも染まると思った結果、混沌とした極彩色なアルバムが出来て、願いを込めて文明を発展させようと助けを待ったけど、やっぱり自分が動かないと何も始まらない。言葉は選んでるけど、僕という人間の音楽人生の環境と心境の変化がアルバムには投影されていますね。

 

Q.未完の物語をリスナーは追っていると。

三輪和也:そうですね。もし人間として成長しきったら、そのときは『鳴ル銅鑼』というセルフタイトルのアルバムを作りたいと思います。60歳くらいかな(笑)。

グローバル徹:長いなあ(笑)。メンバー誰か眼帯とかしてそう(笑)。

岩ってぃ:エイトビートが限界だと思う(笑)。

三輪和也:でも一人の人間が出来上がるまでそれくらい時間はかかるよね。音楽と対峙したときに姿鏡を見てシャキッとしたなって思えたらセルフタイトルを出したいと思います。そこに辿り着くまでにどんなアルバムがこれから生まれるか、自分でも楽しみですね。

 

アーティスト:鳴ル銅鑼

タイトル:汎神論

2017年9月6日リリース
TPDR-0023

2,222円(+税)

 

メンバー

三輪和也(唄/六弦)

カバ(六弦/歌)

グローバル徹(四弦)

岩ってぃ(太鼓)

 

『汎神論』リリースワンマンツアー「縁ト遠」
仙台編
9月13日(水)仙台LIVE HOUSE enn 3rd
四日市編
9月30日(土)四日市Club Chaos
京都編
10月1日(日)京都GROWLY

 

『汎神論』リリース対バンツアー「艶ト宴」
10月10日(火)広島 CAVE-BE
10月12日(木)福岡 UTERO

10月13日(金)大分 club SPOT
10月14日(土)小倉 FUSE
10月16日(月)高松 DIME
10月17日(火)神戸 太陽と虎
10月22日(日)水戸 mito LIGHT HOUSE
10月23日(月)新潟 CLUB RIVERST
10月24日(火)宇都宮 HEAVEN’S ROCK UTSUNOMIYA VJ-2
10月29日(日)@豊橋・clubKNOT

11月10日(金)@松江・AZTiCcanova

 

『汎神論』リリースツアーファイナルシリーズ「点ト線」

11月15日(水)@名古屋・CLUB UPSET

11月17日(金)@大阪・心斎橋JANUS

11月22日(水)@岐阜・柳ヶ瀬ants

 

『汎神論』リリースツアーファイナルワンマン「円」”
11月24日(金)渋谷WWW

 

http://www.narudora.jp/