前作『4』から約2年、SPYAIRが通算5枚目のアルバム『KINGDOM』をリリースする。2015年12月、当時結成10周年&デビュー5周年イヤー真っ最中だったSPYAIRがさいたまスーパーアリーナで行われた『DYNAMITE』のステージで次なる目標として掲げたのは東京ドーム公演だった。東京ドームへの挑戦という戦いの狼煙を上げた彼らは「THIS IS HOW WE ROCK」「RAGE OF DUST」「Be with」「MIDNIGHT」とコンスタントにシングルをリリース。7月に行った単独野外ライブ『JUST LIKE THIS 2017』では1万5千人を動員しSPYAIRの真髄が野外ライブにあることを見せ付けた。そして放たれる『KINGDOM』はSPYAIRというバンドの第2章の始まりを宣言する絶対的で圧倒的な存在感を放つ作品となっている。過去を振り返りつつも前に進む彼らの新たなステージとは。SPYAIRが築く“KINGDOM”、ここに完成。
Q.『4』リリース以降の動きとして東京ドーム宣言がありましたが。
IKE:今も東京ドームに向けてみんなで走っている段階ではあるんですけど、毎年『JUST LIKE THIS』と題して富士急ハイランド・コニファーフォレストで野外ライブをしたりする中で、みんなが誇らしく思ってくれるような大きな場所でやりたいという目標が出てきまして。その意思表示として東京ドーム宣言だったんです。なので今はどこに向けてどうやったら達成できるか試行錯誤している状態ですね。
Q.東京ドームに向けてSPYAIRという存在を圧倒的なものにする為にも『JUST LIKE THIS』の開催は重要なものですよね。
IKE:今年はまさかの大雨で大変でしたけどね(笑)。でも中止することもなく完遂出来た喜びを感じています。良いチームであれだけ大きなイベントを毎年開催出来ている充実感もあります。
Q.SPYAIRはデビュー前に名古屋の栄公園で野外ライブをずっとやっていましたが『JUST LIKE THIS』の開催はそこともリンクしているのかなって。
IKE:そうですね。栄公園でストリートライブをしていた頃の感覚ってずっと残っているんですよ。だけどメジャーデビュー以降はなかなか野外でやる機会がなくて。でも恋しくなったんでしょうね(笑)。それで栄公園でやってたときの感覚のまま大きな会場での野外ライブを実現したのが富士急での『JUST LIKE THIS』なんです。富士急では今年で3回目だったんですけど、自分達にとって軸にあるようなイベントでもあるのでこの先何年も続けていきたいですね。
Q.僕は栄公園でのライブを何度か観ているので、1万5千人が集まっての野外ライブはグッときます。
IKE:懐かしいですよね。あれが10年くらい前ですからね。
UZ:もともと結成当時にメンバーと色んな動画を見てWoodstockのKOЯNのライブに衝撃を受けて「いつかWoodstockのようなライブがやりたい」って始めたのが野外でのライブだったんですよ。それがSPYAIRの軸にあるので、今は東京ドームを目標に掲げていますけど、それすらも僕らにとっては何万人規模の野外ライブに向けての通過点なんです。あの栄公園での野外ライブも『JUST LIKE THIS』も東京ドームも、夢である大規模な野外ライブの為にやっていること。そこは忘れちゃいけない僕らの軸になっているものですね。
Q.その夢を実現させる為にもSPYAIRがひとつの王国を築き上げたのが今作『KINGDOM』だと思うんですよ。「THE WORLD IS MINE」は国王が何万人の国民の前に降臨する姿が浮びます。
UZ:あははは。『KINGDOM』っていうアルバムタイトルも深い意味がある訳ではなくて、ただ漠然とデカイものにしたくて付けたんですよ。SPYAIRが求めているものって「何だかよく分からないけどデカイもの」っていうイメージがあって。「THE WORLD IS MINE」はそれがもろ形になった曲ですね。大袈裟なくらいデカイ曲にしたくて。
Q.バンドが大きなものを目指すことや例えばテレビに出ることって、それを良しとしない風潮が昔はあったじゃないですか。でもSPYAIRが10年以上かけて色んな価値観を壊してきたことで状況が変わったと思うんですよ。ラウドロックやメロディックパンクのバンドがテレビに出ることが不自然じゃなくなったというか。
KENTA:確かに。僕らがデビューした頃は周りのバンドもそういう打ち出し方を嫌がってましたからね。
IKE:タイアップやテレビなんてダサいって風潮はありましたよね。
UZ:そう言われると今ってそれがなくなりましたよね。みんなテレビにも出てるし。
Q.そんな中、「MIDNIGHT」はドラマの主題歌にもなっていますがJAZZっぽいアレンジが新鮮で面白かったです。
UZ:「MIDNIGHT」はドラマの話があったからこそ作れた曲だと思います。たぶん純粋にSPYAIRの曲を作ろうとしていたらこの発想はなかったと思いますね。そもそも僕らはどんな曲にも挑戦出来るんですけど、今回は最初から「ジャジーな感じで」とオファー頂いて作ったのでまた新しいSPYAIRを見せることが出来たと思います。
Q.歌詞もドラマに沿って書いたのですか?
MOMIKEN:まず原作を読んだんですけど、主人公の女の子が田舎から東京に出てきてどう生きていくかという物語だったので、割と自分達と同じ状況だなって思いまして。なので軸はドラマに沿った歌詞ですけど自分達とリンクしている部分もあるとは思います。
Q.この曲は歌詞の「熱帯夜」という一言が言葉のインパクトが凄いですよね。凄く耳に残るしIKE君の歌い方がめちゃくちゃセクシーだなと。
IKE:自分で歌ってみて最初は少しダサいかなって思っていたんですけど、それだけ耳に残ることは自覚していて。結果的にこんなにもこの曲を象徴するフレーズになるとは想像していませんでした。あの「熱帯夜」という部分があるからジメッとした曲が色気を帯びる気がするんですよね。
Q.艶っぽさがありますよね。
IKE:そうなんですよ。色んな意味で「MIDNIGHT」はいつものSPYAIRとは違う挑戦をした曲になりました。
Q.そういう新しい面も見せつつ、やっぱりSPYAIRだなって思わせてくれたのはサビのドラムで。バンドらしくぶっ叩いてるのが最高です。でも全然歌を邪魔していないのは流石だなと。
KENTA:あははは。やっぱりちょっと派手ですよね(笑)。やっぱりあのメロディの裏であれだけ派手に叩くと嫌がる人もいるかもしれないですけど、例え賛否分かれたとしてもやり切ったらかっこいいと思っているので思いっきり叩きました。
Q.そのハイブリッド感はバンドのカラーですからね。UZ君のラップもそうですし。
UZ:「MIDNIGHT」は新しい挑戦はしているものの、ロックバンドとして鳴らす意味も無視したくなくて。僕らがただのジャジーな曲をやったらチグハグになっちゃうと思うんですよ。なのでこの曲で言えばジャジーな要素を取り入れつついかにSPYAIRらしさを詰め込めるかだと思っていて。この曲だけでなく、そうやってバランスを取りながらアルバムも作りました。
Q.今作『KINGDOM』のはどんな構想をしていたのですか?
UZ:ずばり、“KINGDOM”というワードに引っ張られて作っていったんですよ。どんなアルバムを作ろうか考えている中で漠然と“KINGDOM”って言葉が広がっていって、「もしSPYAIRがもう一度デビューするならどんな曲なのか」というテーマから連想して生まれたのが「THIS IS HOW WE ROCK」だったんです。まずはそこからですね。
Q.「THIS IS HOW WE ROCK」はSPYAIRの新章の始まりを感じさせる曲ですよね。
UZ:色々あって活動が止まって、『4』で復活して、なんとなくこのままの流れで活動していくと何も生み出せない気がしたんです。それで無理矢理でも第2章の幕開けを自分達で用意しなきゃなって思ったんです。
Q.「THIS IS HOW WE ROCK」のミュージックビデオでは冒頭でガスマスクが埋もれていますが、この描写はデビューシングル「LIAR」のミュージックビデオでもありましたよね。それがまたここから始まる予感を感じさせるんですよ。
MOMIKEN:よくぞ気付いてくれました。まさに第2章の幕開けには相応しい演出だなって思っています。「THIS IS HOW WE ROCK」はSPYAIRにとって第2章幕開けの狼煙の曲なので。
Q.今作は「RAGE OF DUST」のような攻撃力高めの曲から「C!RCUS」のようなバブル感のある曲までかなり幅広いですよね。「C!RCUS」は往年のジャニーズソングにあるようなジャジーな曲をSPYAIRがやっているような面白さがありました。
KENTA:なるほど!それ凄く分かるかも!
UZ:僕、SMAPの曲とか好きなんです。一流のアレンジャーやプレイヤーが作っているので完成度も高いですからね。
Q.「RAGE OF DUST」で歌われている「勝ち取りたいものもない無欲なバカにはなれない」って歌詞にやられてしまって。シンパシーを感じまくってしまいました。
MOMIKEN:あははは。嬉しいです。あの歌詞はバンド仲間からも反応が多くて。前も酔っ払ったバンドマンに「あの歌詞が最高なんだよ!」って絡まれました(笑)。
Q.あと僕は「スクランブル」と「BRING IT ON~Battle of Rap~」を勝手に繋げて聴いたんですけど、「スクランブル」で歌われている見えない明日を探していた時期が名古屋時代のSPYAIRだと思って聴いた流れで“BRING IT ON”のIKE君とUZ君のラップバトルを聴くと、あれはただのバトルではなく名古屋時代のSPYAIRと現在のSPYAIRが対峙している曲に聴こえるんですよね。
UZ:凄い!その通りです!
KENTA:いやあ、よく聴いてくれてるなあ。
UZ:いや、もう言うことないです。そんな風に深読みしてもらって凄く嬉しいです。
IKE:過去があって今歌えるものがある。アルバムを通して聴くと今回はそういう歌が多い気がしますね。バックグラウンドがあっての今っていう。
UZ:曲作りにおいても活動においても、がむしゃらに夢を見てたあの頃の自分達じゃなくて、着実と夢を追ってきたからこそ物事を言えるバンドになろうとしていて。勿論まだまだ夢を追っている途中ですけど、確実に大人になってきたことが過去を振り返ると分かりますよね。これからも夢を歌っていくけどリアルも見ていたいというか。
MOMIKEN:夢って持ってると辛くなることもあるじゃないですか。でも持っていないとやっていけない。そういうことを今の年齢になったからこそ歌える説得力もあると思います。
Q.足跡は嘘をつかないですからね。やってきたことが間違えではなかったということは「Don’t Look Back」でも歌われていますね。
KENTA:これも過去を振り返ってますね(笑)。
MOMIKEN:今回、アルバム全体的にそういうモードなのかも(笑)。
UZ:昔話をしているおじさんみたいだなあ(笑)。
Q.「Goldship」なんて完全に居酒屋で昔話しているような曲ですし。
UZ:あははあ。完全に居酒屋トークですよね(笑)。
IKE:今回めちゃくちゃ振り返ってるなあ(笑)。
KENTA:なんだろうね、振り返ることにグッとくる年齢になったのかな。
UZ:折り返しを越えたんでしょうね(笑)。第2章の始まりって言っておきながら振り返ってばかりいるんだから。(一同笑)
Q.でもSPYAIRがやってきたことを振り返ったときに「俺達の歩いてきた道は間違ってない」と歌った上で「未来を預けてくれ」と歌う「Be with」でアルバムを締めるのがとても素晴らしいと思います。
KENTA:おおおお!!!!
IKE:なんて良いこと言うんですか!
UZ:それ頂きます!すげー!
IKE:ちょっと鳥肌立っちゃったよ。本当に凄い。もうそれが全てですね。
KENTA:完璧。凄く綺麗です!
IKE:えっと、頂いちゃっても良いですか?(一同笑)
Q.あははは。「Be with」はシングルで聴いたときは覚悟を決めた男のラブソングだと思ったんですよ。でもアルバムで聴くとまた違って聴こえたんです。
UZ:ちょっと言葉が出ないです。
KENTA:うん。それ以上の言葉持ってない。
IKE:狼煙を上げて、色んな道を歩いてきた上で、未来を預けてくれ。この流れ、完璧ですね。最高です。凄いアルバムが出来たと、たった今確信しました。(一同笑)
アーティスト:SPYAIR
タイトル:KINGDOM
2017年10月11日発売
◆初回生産限定A【CD+DVD】特典DVD:MV集ほか
3694円(+税) AICL-3411-3412
◆初回生産限定B【2CD】
3426円(+税) AICL-3413-3414 特典CD:アンプラグド音源
◆通常盤【CD】
2593円(+税) AICL-3415
メンバー
IKE (Vocal)
UZ (Guitar & Programming)
MOMIKEN (Bass)
KENTA (Drums)
SPYAIR「SPYAIR TOUR 2018 -KINGDOM -」
2018年1月26日(金)東京都 中野サンプラザホール
2018年1月28日(日)静岡県 沼津市民文化センター 大ホール
2018年1月30日(火)埼玉県 大宮ソニックシティ
2018年2月3日(土)宮城県 東京エレクトロンホール宮城
2018年2月4日(日)千葉県 浦安市文化会館 大ホール
2018年2月8日(木)神奈川県 川崎市スポーツ・文化総合センター
2018年2月12日(月)兵庫県 神戸国際会館こくさいホール
2018年2月17日(土)新潟県 新潟テルサ
2018年2月18日(日)福島県 郡山市民文化センター 中ホール
2018年2月25日(日)群馬県 桐生市市民文化会館 シルクホール
2018年3月11日(日)神奈川県 厚木市文化会館 大ホール
2018年3月17日(土)北海道 わくわくホリデーホール(札幌市民ホール)
2018年3月21日(水・祝)石川県 本多の森ホール
2018年3月23日(金)岐阜県 長良川国際会議場 メインホール
2018年3月25日(日)京都府 ロームシアター京都 メインホール
2018年3月31日(土)広島県 広島文化学園HBGホール
2018年4月1日(日)岡山県 岡山市民会館
2018年4月5日(木)福岡県 福岡サンパレス
2018年4月7日(土)香川県 レクザムホール小ホール
2018年4月8日(日)愛媛県 松山市総合コミュニティセンター キャメリアホール
2018年4月12日(木)大阪府 フェスティバルホール
2018年4月14日(土)愛知県 名古屋国際会議場センチュリーホール