レペゼン大阪アメリカ村、愛はズボーンがついに1stフルアルバム『どれじんてえぜ』をリリースする。シーンやジャンルに全く捉われない音楽スタイル、活動スタイルで地元大阪アメ村で音楽は勿論、アートや音楽などのカルチャーをミックスさせたイベント「アメ村天国」を開催するなどカルチャーとカルチャーが入り乱れたような彼らのスタンスはそのまま音にも表れていて、ロック、パンク、サイケ、ヒップホップなどありとあらゆる音楽が同居したサウンドに独創的に独走する100%ピュアな儀間の歌詞と全歌詞パンチラインな金城の歌詞が乗ることで愛はズボーンでしかない音楽が生み出されているのだ。2017年、超名作『どれじんてえぜ』を完成させた愛はズボーンの金城&白井にインタビュー。
Q.とんでもないアルバムが出来ましたね。
金城:嬉しいです。「どれじんてえぜ」とか「adult swim」は去年の9月のワンマンでやってるのでなんだかんだ去年の夏くらいから制作に取り掛かっていた感じですね。構想自体は『MAGMA それは太陽のデジャヴュ』を作った頃からあって「次はフルアルバムだな」って話をしていたんですよ。
Q.心斎橋Pangeaでのワンマンやアメリカ村でのサーキットイベント「アメ村天国」開催など大阪シーンに欠かせないバンドになってきましたよね。
金城:めっちゃ順調です。でも地域の差は感じますね。やっぱり僕らは住んでいるのも大阪やし周りのバンドも大阪のバンドが多いので関西寄りになってしまうんですよね。東京の友達も関西色が強いバンドと絡む方が圧倒的に多いですし。
Q.愛はズボーンというバンド名がもう大阪感強いですからね。
金城:やっぱりそうですよね。このバンド名、自分らではお洒落やと思っていたんですけどね(笑)。
白井:色々誤解されがちなんですよ(笑)。
Q.何周もしてお洒落なバンド名だと思いますけどね。
金城:でしょ?だからね、まだみんなが1周目なんですよ。もう僕らは8周目やから(笑)。
Q.今回のアルバムも8周くらい先を行ってる感じはありますよね。ジャンルとかシーンとかじゃなくて愛はズボーンでしかない。まず『どれじんてえぜ』というタイトルだけで100点だなと。意味は全く分からないけど意味なんてどうでもいいかなって思えるくらいアルバムがどれじんてえぜしてましたから。
金城:あははは。めっちゃ分かってくれてますやん。そういうことなんですよ。意味なんてどうでもいい。今日、めっちゃ話しやすいですわ(笑)。
白井:インタビューでこんなこと初めて言われましたね(笑)。
Q.声に出して言いたい言葉ナンバーワンです。どれじんてえぜ。
金城:言ってると気持ちよくなってくるでしょ?もちろん意味があってアルバムタイトルにしてるんですよ。でも聴く人にとって意味はさほど重要じゃなくて。だって「踊るポンポコリン」の「ポンポコリン」の意味なんて分からないじゃないですか。そういうことなんですよね。だから『どれじんてえぜ』という言葉を意味が分からなくてもポップに捉えてもらったらそれでいいかなって思っています。
Q.100人いたら100通りの『どれじんてえぜ』があっていいと。
金城:それです。今めっちゃ良いこと言ってもらいました。
Q.僕の『どれじんてえぜ』と愛はズボーンが投げてくる『どれじんてえぜ』は違うかもしれないけど、どっちの『どれじんてえぜ』も『どれじんてえぜ』で正解不正解も勝ち負けもないっていう。
金城:…ちょっといいですか?本当は話すつもりなかったんですけど、今言ってくれたことが『どれじんてえぜ』の意味にばっちりハマっているので2YOUには特別に『どれじんてえぜ』の意味を話そうかと思います。
Q.めっちゃ知りたいです。
金城:アルバムの冒頭でも「一体全体どれじんてえぜ」って叫んでいるんですけど、「テーゼ」と「アンチテーゼ」の論争を超越した言葉として「ジンテーゼ」という哲学用語がありまして。勝ち負けを決定する全てを超越したものなんですよね。
Q.「ジンテーゼは何処にあってどんなものなんだ」という意味で『どれじんてえぜ』なんですね。
金城:まさにそれです。だからさっきの正解不正解もないって話はタイトルの意味を踏まえて話すと思いっきりハマるんですよ。
Q.音楽的にも「どれじんてえぜ」は愛はズボーンの在り方が詰め込まれていますよね。サイケもパンクもラップも、ジャンルの壁を超越して同居している。
金城:そう、そうなんですよ。めっちゃ嬉しい。
Q.この曲で何度も出て来る「僕らの時代」って言葉がそれを表している気がするんですよ。昔は良い意味でジャンルに壁があったけど、いつしかそれがクロスオーバーされて何でもありな時代になったじゃないですか。それが愛はズボーンの世代のスタンダードだと思うし、その何でもありなスタイルは見事にこの曲に集約されているので。
金城:完璧に分かってくれてますやん。ちょっとその解説、後でツイキャスして下さい(笑)。
Q.あははは。あとこれだけ色々詰め込んでいるのにダラダラしてないのもかっこいいなと。
金城:僕らもそこはかなり意識してます。この曲、3分49秒なんですよ。これだけ色々やってるのにこの短さっていうのも今の時代に合ってるんやないかなって。短い時間で手間を取らさずサクサク手に入るっていう今っぽさは曲作りのテーマとしてもありましたね。
Q.「ちゅうぶらりん」は表現の仕方は違うけど「スーダラ節」のような優しさを感じました。
金城:めっちゃ持ち上げてくれますやん(笑)。この曲は頑張っても頑張っても報われない今の若者の気持ちを歌っていて。真面目に頑張っても上司には怒られるし、いつまで経っても主導権は自分にこない。そういうがんじがらめの中で壁にぶちあたりながら頑張ってる人に「そんなに頑張らなくてもいいよ」って言ってあげたくて。「サボっちゃいなよ」っていう。
Q.この飄々としたラップも良いですよね。
金城:この感じは自分をも騙して飄々としてる風に誤魔化してるだけっていう。「俺は平気です」みたいな。歌ってる内容も暗いし心身疲れきっているんだろうけど、でも本人は飄々としているっていう、そのギャップが面白いかなと。だからこの曲で感動出来る人は同じような経験をしてる人なんやろうなって思いますね。
Q.今作、儀間君の振り幅も凄いですよね。超ニューウェーブな「Z scream!」から生活音まで入っているような「もねの絵のよう」の弾き語りまで本当に面白い。「空飛ぶピンクのユニコーン」のサイケなギターとかぶっ飛んでますから。儀間君ってメンバーから見てどんな人ですか?
金城:変な人やな。
白井:めっちゃ変わってる。今まで会った事がないタイプの人ですね。ここまで妄想癖の強い人他に知りませんね。空想の中で生きているというか、とにかくロマンチック過ぎるんですよ。全然現実主義じゃない(笑)。
Q.そういう人だから「もねの絵のよう」で「ティーンスピリットフォーエバー」って本気で歌えるんだと思います。
金城:この前、儀間君が別のインタビューで「僕、最近気付いたんですけど中2病かもしれないんですよ」って言うてて。だとしたら気付くの遅過ぎじゃないですか(笑)。儀間君、今年25歳ですからね。もうこれは本物やなと(笑)。
Q.愛はズボーンはみんな同い年ですか?
金城:いや、儀間君だけ2個下なので僕らは27の年です。
Q.27クラブじゃないですか。それで「27」なんですね。やっぱり27歳は意識します?
金城:めちゃくちゃしますね。なんなら26歳くらいから「来年やな」ってずっと思ってました(笑)。
白井:曲にするくらいですからね(笑)。
金城:この曲には2人の主人公がいて、カート・コバーンとポール・マッカートニーをイメージしてるんですよ。「27歳になったけどどうする?」ってとこにさらっとポールがやってくるっていう。27歳になったときにそこの考え方も変わったんですよね。
Q.分かります。僕も27歳を超えて次の目標は64歳ですもん。64歳になったポールが「When I’m Sixty-Four」をライブで歌ったときは感動しましたから。
金城:それ最高ですね。
Q.そんなポールも75歳ですからね。次目指すのはきんさんぎんさんですね。
金城:あははは。僕も64歳を迎えたらそういう気持ちになるかもしれないですね。しかしポールが現役なのが凄いですよね。ポールが今何してるか想像するとめっちゃ笑えません?「今、メシ食ってるかも」とか想像したら笑えるんですよ。これってカートじゃ出来ない想像なので。
Q.ザ・クロマニヨンズの真島昌利さんが1992年に発表した「RAW LIFE」というソロ曲で「クールな振りをしていても夜更けには納豆を食う」って歌っていて、あれから25年経ってもたまにマーシーが納豆を食べてる姿を想像しますからね。
金城:あははは。スターになればなるほど面白いんですよね。「ポールも髪が伸びたら散髪するのかな」とか(笑)。そういう妄想はめっちゃ好きですね。
Q.納豆も食べるし散髪もするし、みんなそうやって生きてるんですよね。このアルバムも「生きてるって感じ」という壮大なラブソングで締まることですし。「ラブしかあらへん」って言い切る儀間君がめちゃくちゃかっこいいなと。
白井:あれ、歌詞やばいですよね。
金城:儀間君の中2病の頭でそのまま書いてるからな。なかなか「ラブしかあらへん」って言えないじゃないですか。でも儀間君なら言えちゃうんですよ。
Q.儀間君は本気でそう思ってるから言葉に説得力があるんですよ。言葉に嘘が無い。
金城:それ本人めっちゃ喜ぶと思いますわ。
Q.対して金城君の歌詞はパンチラインの連続ですよね。「MAJIMEチャンネル」の「死ぬこと恐れて篭りまくり それ死んだも同然」とか刺さり過ぎて深夜にまるで自分の言葉のようにツイートしちゃいましたから。
金城:あははは。それはもう自分の言葉としてこれからも使ってください(笑)。あの曲はその後の「地獄」って歌詞のイメージの方がどうしても強いんやけど割と良いこと言ってるんです(笑)。
Q.「どれじんてえぜ」なんてパンチラインだらけですよ。
金城:キュウソネコカミのヤマサキセイヤさんも「俺だったら金城君の歌詞の1行で1曲作れるわ」って言ってくれたんですよ。褒めてくれてるんだけど自分も上げるっていう(笑)。でもめっちゃ勇気付けられましたね。
Q.もうひとつずっと思ってることがあるんですけど「愛はズボーン」で「ボンボンズボボン愛はズボーン」と歌ったり今作では「Z scream!」で「さぁとどめ刺す俺らがIWASBORN」と歌ったり、自分達の名前を歌詞に登場させるのが果し合いの前の侍みたいで僕は好きなんですよ。
金城:侍(笑)。僕ら、主張が強いですからね。名乗った後に更に太文字で説明も入れちゃうみたいな。そういうとこも関西色なんやろうなあ(笑)。
Q.「WE ARE X」か「俺らIWASBORN」かっていう。X JAPANも「X」という曲がありますし。
金城:あははは。それやばいですね。X JAPANか僕らかっていう(笑)。
愛はズボーン
タイトル:どれじんてえぜ
2315円(+税)TGUY-005
2017年11月15日発売
メンバー
金城昌秀(Gt/Vo)
儀間建太(Vo/Gt)
白井達也(Ba)
富永遼右(Dr)
LIVE
11/8(水) 渋谷clubasia
11/11(土) GLICO LIVE “NEXT” SPECIAL
11/12(日) 神戸 Harbor Studio
11/25(土) アメリカ村一帯愛はズボーン主催「アメ村天国2017」
12/2( 土) 「下北沢にて 」
12/14(木) 名古屋CLUB ROCK’N’ROLL
12/28(木) 新代田FEVER