CIVILIAN

CIVILIANがメジャー1stアルバム『eve』をリリースする。改名前のLyu:Lyu名義でリリースしたアルバム『君と僕と世界の心的ジスキネジア』から実に4年8カ月振りとなる今作は、コヤマヒデカズ(Vo, G)が「彷徨い続けた『前の日の夜』から今へ至るまでの話と、これからの話が全部詰まっている」と語るようにバンドのこれまでとこれからが同居した作品になってる。改名したことでLyu:Lyuのパブリックイメージとしてあったものから脱した彼らの楽曲からは随所に変化を感じることが出来る。これまでコヤマの内面を歌うことが多かった詞世界は今作では外に外に向かっているのもバンドにとって大きな変化だろう。4年半振りのアルバムを完成させたCIVILIANに話を訊く。

 

 

Q.アルバムとしては4年半振りですが、この期間にバンドには色んな出来事がありましたよね。まず改名の経緯を聞かせて下さい。

コヤマ:Lyu:Lyuとして7年くらい活動してきたんですけど、バンドの環境が変わっていく中で僕らがバンドとしてやってきたことや今後やってみたいこと、バンドとしてどう在りたいかをメンバー全員がそれぞれ考え始めていた時期で。そのタイミングで事務所が変わって新しいCDを出すにあたって意識が変わったんですよ。曲に対する考え方とか。

 

Q.確かにLyu:Lyu時代より音楽面において自由になった気がします。

コヤマ:Lyu:Lyu時代に歌詞を書く上で使うのを躊躇っていた言葉やバンドで演奏するにあたってなんとなく避けてたような曲を、このタイミングでフラットにやりたくなって。そういう新しい気持ちが芽生えてきたのでバンド名を変えることにしたんです。

 

Q.名前を変えることに対する不安はなかったですか?

コヤマ:それはきっと僕らより受け手側のみんなが色々思うんじゃないかなって思っていました。そこに対しては覚悟もしていましたし。でも今の僕らがやっていることを観てくれたら分かってもらえる自信もあるというか。

 

Q.CIVILIANになってからの変化としてコヤマ君の歌が以前より外に向けられているように感じたのですが。

コヤマ:以前は自分の音楽で自分の感情を救うためだったり、自分の過去の話を題材にすることが多かったし、歌詞の書き方としても内側に向かっていたと思うんですよ。それがCIVILIANになってからは聴いてくれる人を想像して書くことが増えたんです。自分の世界だけじゃなく、自分を取り巻いている相手のことを考えて書くことが圧倒的に増えましたね。
純市:広い視野で言いたいことを書くようになったなって印象はありますね。

 

Q.コヤマ君の歌は以前より死生観がひとつのテーマになっていると思うんですけど、その角度が変わったというか。

コヤマ:そうですね。死生観は僕が歌を作る上で根底にあるテーマで、割と昔から姿や形を変えて色んな死生観を歌ってきたんですけど、CIVILIANになってその角度が変わった気は自分でもします。今まではカメラを内向きにして撮っていたのが、周りにフォーカスを当てた表現になったような。そうなったときに自分のことだけじゃなく色んなことを題材に出来るようにもなったんだと思いますね。

 

Q.ストーリー性のある楽曲も良いですよね。「残り物の羊」は角度の違う「ドナドナ」だなと。

コヤマ:あははは。売られていく子牛にフォーカスが当たっている「ドナドナ」に対してこの曲では選ばれなかった側のことを歌っているんですよ。順番を待っている羊にフォーカスを合わせているんです。

 

Q.この羊は選ばれたほうが幸せなのか、選ばれないほうが幸せなのか。

コヤマ:そこもこの曲では歌いたい部分なんですよね。選ばれることって恐怖を伴うじゃないですか。人間に置き換えても、例えば就職するにあたって社会人になるのが怖かったり責任も持たなきゃいけなくなることに対する不安ってあると思うんです。でも人間は人との繋がりの中でしか生きていけないことも分かり始めてきて。

 

Q.そういう人との繋がりは今作の大きなテーマでもあるなと。「対誰か」っていう。

コヤマ:それは大いにありますね。

 

Q.その中で誰かと比べるのではなくて自分の人生を歩くことかってことは「あなたのこと」「生者ノ行進」「I’M HOME」で歌われていますよね。

コヤマ:そうですね。「あなたのこと」は今回のアルバムを作るにあたって書いた曲なんですけど「I’M HOME」は結構昔からストックしていた曲で。そういう曲が並んだときに違和感なく繋がったのは面白いですね。

 

Q.「I’M HOME」の冒頭の「死んでるような朝」と「生きたいと願う夜」の対比も素晴らしいです。そういう相反するものって「愛/憎」からも感じますけど凄く人間っぽいですよね。

コヤマ:人間って僕の中では相反するものだらけだと思っていて。矛盾の塊っていうか。例えば毎日生きていて幸せだと思うこともあれば地球なんて滅びてしまえばいいって思う日もある。そういう矛盾を持ち合わせているのが人間だと思うんです。そのどちらか一方だけを歌うのって嘘を付いてる気がしちゃうんですよね。

 

Q.「愛/像」はイントロからアレンジが最高にかっこいいです。

有田:技術的な面でも気持ち的な面でも出来ることが増えたから何でもやれちゃうんですよね。Lyu:Lyuで出来なかったことがやれている証拠が「愛/憎」では素直に出ていると思います。

 

Q.アレンジ面において以前はセーブしていた部分もあるのですか?

有田:ドラムに関して言えば曲を最優先することを徹底していました。なので必要最低限のアレンジになっていたと思うんですけど、今はやりたいことを詰め込んでいますね。
純市:ベースは特に変わってないけど単純に技術が付いてきてフレーズや休符の使い方に説得力が生まれた気はしています。

 

Q.「顔」のべースの音色は新鮮でした。

純市:そうですね。これまではスローテンポな曲でも結構歪ませていたけど、ここまでポップに優しい音でプレイしたのは「顔」が始めてかも。そういう視野は広がりましたね。

 

Q.「顔」はコヤマ君のギターの表情も優しいですよね。

コヤマ:これ、12弦のアコースティックギターを使っているんですよ。これまでは基本的にロック然としたエレキしか使ってこなかったので僕にとっては新しい挑戦でもあります。

 

Q.この曲は何かコンプレックスを抱える人に是非聴いて欲しいなと。

コヤマ:僕、子供の頃から容姿に対するコンプレックスがずっとあって。自分の見た目にコンプレックスがあったから人付き合いも上手く出来なくて。自分に自信がなかったし、人間関係で苦労した経験もあったんです。それで容姿に対する思いを歌にしようと思って書いたのが「顔」なんです。

 

Q.「こんな顔で大切な人が笑っている」という歌詞はグッときました。例えば家族って顔の善し悪しで付き合わないじゃないですか。

コヤマ:そうなんですよね。結局、美しいとか醜いとかって感情は誰かと比べるから生まれる価値観だと思うんですよ。美しいと言われる人がいるから醜いという価値観が生まれるわけで。でもそういう評価って家族や大切な人にとっては関係ないんですよね。コンプレックスを抱えていた自分のような存在にとって自分と向き合ってくれる人が笑顔でいてくれるのって勇気になるなって思います。でも誰かと比べてしまうことは僕が音楽を作る根底にある感情のひとつでもあるんですよね。

 

Q.その視野が広がったことでバンドがより自由になってきたと感じるのかもしれませんね。

コヤマ:自由になったことでこれからもっと色んなことが出来ると思うのでワクワクしていますね。これまで歌えなかったこともどんどん歌っていける気がしていますし。

 

Q.「どうでもいい歌」の自由っぷりとか凄いですから(笑)。完全にリミッターを解除していますよね。

コヤマ:あははは。
純市:よく言ったなって思いました。(一同笑)

 

Q.「生者の行進」を聴くと早くライブが観たくなりますが、ツアーも楽しみですね。

コヤマ:早くライブで聴かせたいですね。ライブでのコミュニケーションの取り方もかなり変わって、内に向けてやっていたのが最近は外に拓けたライブをしているので是非ツアーで体験して欲しいです。

 

Q.では最後にアルバムを聴く人にメッセージを。

純市:今作はこの4年半の僕らが詰まったアルバムになったので、変わろうともがいてる曲もあれば振り切った曲もあって面白いと思います。そういう部分も楽しんでもらえたらと思っています。
有田:とにかく完成までの道程が長かったですからね。アルバムを作り始めてからの4年半がちゃんと曲に反映されていると思うのでアルバムを聴き込んで是非ライブで生で聴いて欲しいです。
コヤマ:バンドにとって新譜をリリースすることってバンドを更新していく行為だと思うんですよ。僕らはLyu:Lyuの頃にそれが出来なくなった時期があってもがいていて。その頃の曲も今作にはあるし、そこから脱した最新の僕らを投影した曲もあるので、このアルバムを完成させたことでやっとバンドを更新することが出来たと思っています。今はこの作品をみんながどう聴いてくれるかが本当に楽しみです。

 

 

アルバムタイトル:eve(イヴ)
2017年11月22日発売
■初回生産限定盤
SRCL-9596/7
¥4,860円 ライブDVD付

■通常盤
SRCL-9598
¥3,240

シングルタイトル:赫色 -akairo
2017年11月8日発売
■通常盤
SRCL-9539
¥1,100(税込)

 

メンバー
コヤマヒデカズ(Vo、Gt)
純市(Ba)
有田清幸(Dr)

 

 

CIVILIAN ONE MAN Tour 「Hello, civilians~全国編~」

2017年11月18日(土)北海道 SOUND CRUE
2017年11月22日(水)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2017年11月24日(金)宮城県 enn 2nd
2017年12月9日(土)広島県 HIROSHIMA BACK BEAT
2017年12月10日(日)福岡県 graf
2017年12月16日(土)愛知県 名古屋CLUB QUATTRO
2017年12月17日(日)大阪府 梅田CLUB QUATTRO
2017年12月21日(木)東京都 LIQUIDROOM

 

http://civi-l-ian.com/