愛知県を拠点に活動するガールズロックバンド、ポタリが2ndフルアルバム『ポタリの2』をリリースする。結成以来、数々のイベントに出演する中で2012年に「TANK!the AUDITION」に優勝し「TREASURE05X 2012 -dancing colorz-」に出演したことでその名は一気に知れ渡ったポタリ。その後、TREASURISE RECORDSより数々のCDリリースを重ね、2018年1月、ポタリのこれまでとこれからが同居したフルアルバム『ポタリの2』が堂々完成したのだ。その等身大なメッセージが同世代の共感を呼び、さらにポップでキュートなキャラクターも相まって着実にステップアップしてきた4人が作り上げた最高傑作について、鈴木奈津美、中西詠美、内田愛子、茄子川に話を訊く。
Q.『ポタリの2』本当に素晴らしいです。
中西:ううう!
鈴木:めちゃくちゃ嬉しい!
Q.コンスタントにシングルをリリースしながらポタリが積み上げてきたものが凝縮されたアルバムだと思いました。そういうポタリらしさがありつつ、新しいポタリの顔を知ることも出来て、4人が音楽に正面から向き合って作ったことが伝わる最高傑作だと思います。
鈴木:ありがとうございます。今回のアルバムでこれまでの色んなことを越えたいと思っているんですけど、完成するまでには悩むことも多くて。ポタリらしさはちゃんと残したままそれを越えて進化していくポタリも出したくて、その間で悩んだんです。曲も中々出来なくて。そんなときに詠美が書いてきた「夏の言い訳」が出来てメンバーが書いた歌詞を歌うのってそれまであまりなかったから私にとっても挑戦だったんですけど、それを消化することで守ってきたものと改めて向き合えたんです。
Q.なるほど。向き合った結果の「ミュージック」ですね。
鈴木:はい。「ミュージック」ってタイトルを曲に付けたのは自分の中では勝負だし覚悟でもあって。私達は音楽を発信する側だけど同時に受け取る側でもあるじゃないですか。だから自分がかっこいい音楽を聴いたときに受ける衝撃に着目して歌詞を書いてみたんです。私が音楽を聴いて音楽に救われたときの感覚をポタリを聴いてくれる人に発信出来ないかなって。
Q.良いミュージシャンはいいリスナーですからね。そういう意味ではポタリのみんなとは名古屋のライブハウスで本当によく会いますから(笑)。音楽を発信しつつ受け取る側でもあることって大事なことだと思います。ちなみに「夏の言い訳」で詠美ちゃんの書いた歌詞を歌ってみてどう感じました?
鈴木:メンバーが書いた歌詞を歌うことがほぼ初めてだったんですけど最初歌詞を読んだときは理解出来る部分と出来ない部分があって。そこを詠美と話し合って自分の中で納得してから歌ったんです。単純に歌詞を書いた人が違うとこんなに違うんだなって思いました。
中西:「季節の曲が欲しい」ってなってみんなもそれぞれ夏の曲を書いていたんですよ。それまではみんなナツに頼っていたんですけど「これだ!」って曲が出来ない時期だったのでみんなで歌詞を書いてみようって。それで私の思う夏を書いたら採用されたんです。
茄子川:みんなのイメージする夏ってハッピーなものが多かったんですけど、その中で詠美が持ってきた曲が「夏の言い訳」だったので新鮮で。
鈴木:「夏の終わりってこういうことあるよね」って凄く共感したんですよ。
Q.季節の曲といえば「ハルノカゼ」も良いですね。春って出会いと別れの季節だと思うのですがその不安と期待が入り乱れていて。この曲はワクワクしながらも不安を抱える人の背中を押す曲だと思うのですが、歩み出せるかどうかはその人次第だと最後の一歩は聴き手に委ねているのが凄く良い。
茄子川:うわ、めっちゃ聴いてくれてますね。びっくりした。
鈴木:まさに今言ってもらったように、この曲は最後まで花が咲かないのがポイントなんですよ。花が咲かないことは、その時が終わらない、続いていくってことを表現しているんです。春って不安も期待も同じくらいあるけどそういう季節を一緒に越えると絆がより深くなってより大切に感じられると思うんですよ。そこが伝えたくて書いた曲でもあります。
Q.「Scope」はまずイントロのギターでやられました。このギター、めちゃくちゃ可愛くないですか。
中西:ありがとうございます!
鈴木:これも詠美が持ってきた曲ですね。
内田:ギターのミックス、凄く頑張ってたよね。
中西:サウンド的にごちゃごちゃしないようにアレンジを考えたんですけど凄くかっこいい仕上がりになったと思っています。
Q.ポタリのアレンジって各パートが主張しつつも、なっちゃんの歌が軸にあって、どう歌を活かすかがポイントになっていますよね。
中西:やっぱりナツの歌を引き立てるというか、ナツの歌をどう良く見せるかは常に考えていることで。今回のアルバムでもそれぞれの楽器もちゃんと目立つところがありながら最後にはちゃんと歌が前に来るように曲を組み立てています。最初はみんな好きなようにやるからごちゃごちゃしてるんですよ。でもそこからナツの歌を活かすために引き算していくんです。
Q.その中でちゃんと見せ場があるのが曲の随所から感じられます。例えば「セツナジェットコ-スター」のベースとか。過去にリリースしたときとベースラインが変わっていますよね?
内田:分かります?今回、ベースラインをライブでやってきたアレンジで録り直したんですよ。なので「JUST!」のカップリングで出したときとは違うベースラインなんです。
Q.曲とバンドが一緒に成長してきたことが分かるアレンジですよね。アルバムを聴いていて何か違うと思ってシングルと聴き比べたんですよ。それでベースラインが変わったことに気付いたんですけど。
内田:やばい。そんな聴き方をしてくれたなんて。
鈴木:「セツナジェットコースター」は自分達でも大事にしてきた曲なんですけど、シングルのカップリングで、そのシングル自体が廃盤なので最近ポタリを知ってくれた人がCDで聴けないのは勿体無いなって。それで今回アルバムで再録することにしたんです。ここから先も続いていくポタリを詰め込んだアルバムにこの曲を入れられたのは凄く嬉しいです。
Q.ライブといえば「AGFG」はかなりライブ映えしそうですよね。
中西:早くライブでやりたい!
鈴木:この曲は想像以上にかっこよくなりました。レコーディングが終わってミックスで音のバランスをとったら見違えるほどかっこよくなって。曲のタネは私が持っていったんですけど歌詞は愛子に任せたんですよ。きっと私が書くと歌謡曲みたいになっちゃうなって(笑)。こういう詰め込んだ歌詞も私には新鮮だったのでチャレンジの曲でもありますね。
Q.歌詞の毛色が全然違いますもんね。「AGFG」は歌詞の2人の登場人物の心理線をゲームに例えて描いた歌詞が面白かったです。ちなみに「AGFG」というタイトルはどういう意味なんでしょうか?
内田:うふふふ。
茄子川:気付かないですか?
鈴木:これ、サビのコード進行なんですよ。仮タイトルがそのままタイトルになったんです(笑)。
Q.色々深読みしていたんですけど…悔しいです(笑)。
鈴木:あははは。
中西:コード進行だからこのままコピー出来るんですよ(笑)。
内田:私達もコードを間違えないしね(笑)。
Q.この曲もベースソロがかっこいいですね。
内田:メンバーが「ここはベースソロにしよう」って言ってくれて。そうやって曲がかっこよく成り立つアレンジをみんなで話し合って決まったベースが曲にハマると嬉しいですね。
Q.そういうメンバーのアイディアはどの曲にも反映されていますよね。「カメレオンガール」のドラムが他の曲とスネアの鳴り方が違ったり。
茄子川:え!?分かりました!?
中西:凄い!
Q.音の広がり方がこの曲だけ違うなって。
茄子川:そこ始めて突っ込まれたからちょっとびびりました。凄いです。この曲のドラムはまさにそこを拘っていて。「コン!コン!」ってスネアが多いけど、この曲は10年前くらいの音源でよく聴いたスネアの広がりを意識したんです。そこに気付いてくれるのめちゃくちゃ嬉しいです。っていうかちょっと怖い(笑)。そこまで聴いてくれる人がいるなんてびっくりです。
鈴木:凄く拘っていたから、メンバーとしても嬉しいです。
Q.「ナイショナイショ」は可愛さが異常ですね。
鈴木:この曲は私が思う可愛い女の子を想像して書きました。「だって急なんだもん!」とか「そーゆー問題じゃない!!」みたいな言葉だけでも可愛い感じが出せてるんじゃないかなって。だけどそれだけで終わらないように演奏はパンクっぽく拘って作りました。
Q.可愛さとパンクっぽさを併せ持っているのがポタリの魅力ですよね。ちなみにこの曲の主人公に一番近いのはメンバーでは誰ですか?
内田:完全にナツですね。
茄子川:逆に他のメンバーは全員違います。歌詞を読んだときも「こういう女子いるよね」って思ったくらい(笑)。それがナツっていう(笑)。
中西:私は少女漫画が好きだからこの感じ分かるなあ。
Q.そういう可愛さとはまた違う大人の魅力を感じさせる「最終列車」も素晴らしいです。この曲のアコギの音色はアルバムを通してフックにもなっているなと。
中西:アルバムにハッとする瞬間が欲しくて。イントロが流れた瞬間に「何か違うな」って思ってもらいたくてアコギを入れたんです。
Q.ポタリって元気なイメージが強いけど、その中でこのアコギの音色は大人の一面が見えた気がしました。
内田:こういうシャッフルっぽい曲もこれまであまりなかったですし。
中西:インストアライブをやらせてもらうことが多くて、それでアコースティックの良さを実感したことも大きいですね。バンドの良さとアコースティックの良さを上手く合わせることが出来たんじゃないかなって。
内田:中間感はあるよね。
Q.こういうタイプのラブソングはポタリとしては珍しいですよね。
鈴木:詠美が書いてくれたんですけど、私が歌うことを想定して書いてくれたんだなって思うくらいスッと歌詞が入ってきました。
中西:こんな風に愛されたいって思いながら書いた歌詞なんですよ。
内田:わー!
茄子川:きゃー!
中西:理想の愛され方を妄想して書いたんです。願望です(笑)。
Q.「最終列車」というワードはもう既にエモいです。
中西:これは「君との恋が最後の恋だよ」って意味なんです。そういう妄想ばっかりしてます。妄想は無限なので(笑)。
Q.最後の恋を歌った「最終列車」とは逆で何度失敗してもまた恋してしまう「scratch」もめちゃくちゃ女の子な歌詞ですよね。槇原敬之さんの「もう恋なんてしない」へのアンサーソング的な要素もあったりして。
内田:偉大な方のお名前が(笑)。この曲は女の子に是非聴いて欲しいですね。私の周りにも駄目な恋をしている子がいてよく相談に乗るんですけど、失敗に終わった恋を無駄だと思って欲しくないなって。恋に失敗してもう恋なんてしないって思ってもそれでもまた恋に落ちちゃうんですよ。
Q.ほら、槇原敬之さんだ。
中西:あははは。
内田:本当ですね(笑)。
Q.この曲は歌の後ろで弾いているギターと疾走するリズムが本当にかっこいい。
鈴木:そこ!
茄子川:あのスピード感はかっこいいですよね。
中西:ギターもギラギラしてますからね。攻撃力高めです。
Q.恋に落ちたときの気持ちがよく表れているなと。
内田:突進していく感じは出てますよね(笑)。
Q.あと「君とアワー」は本当に名曲だと思います。名古屋駅に時計台で流して欲しいです。
茄子川:流して欲しい!
鈴木:名古屋の待ち合わせといったら時計台ですよね!
Q.この曲は歌が始まった瞬間にドキッとするんですよ。「時計台の下はラッシュアワー」っていう歌詞も情景がパッと浮かぶ素晴らしい歌詞だなと。
鈴木:その歌詞は私も本当に気に入ってます。私、場所って気持ちや思い出が宿っていると思っていて。その大切さを書きたかったんですよ。音楽を聴いて思い出がフラッシュバックするみたいにその場所に行くと思い出すことってあるじゃないですか。その場所に宿るパワーを曲にしたかったんです。
Q.場所に宿るパワーって絶対にありますよね。昔、今池に深夜しかやっていないラーメン屋さんがあって、今でもあの道を通ると色んな思い出がフラッシュバックしますから。
鈴木:分かります。その場所に行くだけで初心に返ることの出来る場所ってそこに宿るパワーだと思います。
Q.アルバム最後を飾る「走る」ですがこの曲も「ミュージック」同様ポタリらしさと新しいポタリの間で揺れながらもバンドが成長していく様が描かれているように感じました。
鈴木:はい。これまでのポタリらしさと新しいポタリの間で悩んで曲が出来なくなったときにその闇を抜け出せたのはこの曲が出来たからなんですよ。「走る」が出来たことで安心して「ミュージック」を歌えたんです。「走る」はこれまでのポタリからの脱出でもあるのでアレンジに新しさを盛り込んだりもしていて。
Q.確かになっちゃんの歌もいつもと違う手法で歌っていますよね。
鈴木:サビの頭をファルセットで歌っているんですけど、私にとっては凄くチャレンジで。こんなアップテンポなロックチューンでサビの頭にファルセットを持ってくるなんてこれまでだったら絶対に出来ないけど挑戦してみたかったんです。レコーディング中もディレクターさんに「得意な地声で歌ったほうがいいんじゃない?」って意見も頂いたんですけど半ば意地でファルセットで歌ったんです。ファルセットありきで歌詞も書いていたので。自分の迷いや不安を苦手なファルセットで表現しながら突き進むことが今のポタリには大事だと思ったんですよね。なので歌い方も含めて新しいポタリへのチャレンジにもなった曲が「走る」なんです。こういう挑戦がアルバムで出来たからこそ「ミュージック」という王道の曲を自信を持って作れたんだと思います。私の音楽人生の中で大きな出来事ですね。
Q.今回のアルバムはメンバー全員が新しい挑戦をすることで新しいポタリを提示しつつもこれまでの自分達らしさを再確認出来たアルバムなのかもしれませんね。そういう意味では脱皮アルバムなのかも。
鈴木:半年ごとにシングルを出してきてその都度ワンマンもやってきた中でポタリのロックを追求したアルバムが出来たと思っています。
中西:メンバー間でのコミュニケーションもこれまで以上に取るようになったし、関係性もより深くなった気がしていて。ただ闇雲に話すだけじゃなくてちゃんとコミュニケーションを取れている感じが今のポタリの強みだと思います。今のこの4人でしか作れないものが出来たと思っているので本当に沢山の人に聴い欲しいです。
茄子川:良いことも悪いことも本当に色んなことがあった1年だったけどこのアルバムが出来上がってみたら全てがこのアルバムの為だったんだなって思えるんですよ。私達の日々の生活がそのままアルバムに出ていると思うので、これを聴いて駄目ならもう駄目かもしれない(笑)。それくらい自信があるので絶対に聴いて欲しいです。
内田:色んなことをメンバーで乗り越えてきて、それが作品になっているので歌詞も曲もアレンジも含め、音楽をみんなで作り上げた感覚が凄くあります。私達の生活がそのまま音楽になるなんて、音楽って凄いなって改めて思いました。みんながいたから出来たアルバムなのでCDを再生するのが今は本当に楽しいです。
鈴木:この4人で音楽を続けてくってずっと言い続けてきたんですけど、はっきりとその未来が見えるようになってきて。それがこれからも形になっていくんだろうなって思っています。その先にポタリの目標である武道館2DAYSがあって、まだまだ段階を踏まないとそこには辿り付けないけど、そこに向かって走る覚悟は全員あります。それを口に出しても恥ずかしくない自信がこのアルバムが出来たことでより沸きましたね。
Q.その武道館2DAYはしっかり2YOUでレポートするので絶対に実現してくださいね。
鈴木:ああ、泣いちゃうな。絶対に実現させます!
鈴木 奈津美(Vo)
中西 詠美(Gt)
内田 愛子(Ba)
茄子川(Dr)
ポタリ
タイトル:ポタリの2
2018年1月17日発売
¥2,500(tax in) TRISE-0025
2018年 東名阪ワンマンライブ
2018年3月24日(土) 心斎橋Pangea
2018年3月25日(日) 渋谷TSUTAYA O-Crest
2018年3月29日(木) 名古屋CLUB QUATTRO
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