GASOLINE

結成25年、三重県は四日市のGASOLINEさんが通算6枚目となるアルバム『FUCK YEAH!』をリリース。いつ死んでもおかしくないような命を削ったライブで、全国の酔っ払い達を相手に最高のロックンロールとグッドメロディで沸かし続けている彼ら。今作には彼らがずっと歌ってきた土曜日最高、ロックンロール最高、酒最高といった愛すべき駄目な大人の人間賛歌が詰め込まれた全12曲されている。お酒とロックンロールであんたを楽しくさせたい。そんなGASOLINEの生き様が詰め込まれたアルバム『FUCK YEAH!』を完成させたGAN氏にインタビューを決行。ビールでもテキーラでもバーボンでもなくクリームソーダを飲みながら。

Q.GASOLINEはかなりコンスタントにアルバムのリリースがありますが。
GAN:ずっとライブやってるから定期的にアルバムが作らないと飽きるんちゃうかな(笑)。ほら、ライブはやってることあんまり変わらないやん俺ら(笑)。

Q.そうですね…っていうのも失礼かもしれませんが(笑)。でもドリフやジェームス・ブラウンを観てる感覚で僕はGASOLINEを観てますよ。
GAN:あははは。吉本新喜劇とかね(笑)。ああいうのってもはや伝統芸能やん。みんなオチも分かってるけど演者も客もみんなやりきるっていう。GASOLINEのライブもそうなんとちゃうかな。しらこい顔してやるっていう。

Q.もうずっと同じことをやっているのにGANさんも初めてやるような顔してやりますからね(笑)。
GAN:それは鉄則でしょ(笑)。ジェームス・ブラウンだってしらこい顔してマントショーするやん。そこは受け継いでるつもりよ(笑)。

Q.語弊があるかもしれないですけど、GASOLINEってライブであまり気付かないですがメロディが凄く良いですよね。
GAN:あははは。こう見えて俺も一応ソングライターやからね(笑)。エモが流行って以降、美メロ過ぎるとダサイ風潮ってあるでしょ。俺はあれが許せやんくて。俺らはガレージパンク出身やから、シャウトやったり勢いやったり雑音やったり、そういうかっこ良さも好きやけど、ガレージのノリが通用しないところでも戦うためにはやっぱりグッドメロディーやと思う。

Q.今作も色んなエッセンスが注入されていますよね。
GAN:ただ60年代のガレージをリバイバルするんじゃなくて、それ以降に出てきた音楽をガレージ解釈する面白さってあるやん。

Q.例えば「Get Back」からはHi-STANDARDやモーターヘッドへのリスペクトも感じられます。
GAN:ハイスタに似てるのは後から気付いたんやけど(笑)。

Q.『MAKING THE ROAD』の「TURNING BACK」から「STANDING STILL」の流れですよね。
GAN:やっぱり分かる?2曲目にいく時の「いこう!次!」みたいな感じな(笑)。最後の掛け合いとかもハイスタっぽいやろ?あとさっき言ってくれたモーターヘッドの「ACE OF SPADES」のリフもこの曲に落とし込んでるんやけど、そういう「ウォーリーを探せ」みたいなことが好きなんよね。「Saturday man」のイントロもドッグスの「SLASH YOUR FACE」のイントロをそのまま引用してるから(笑)。そういうジョークみたいなことはずっとやっていきたいと思ってる。自分であまり言いたくないけど、普通に音楽オタクなのでね。こういう遊びはやる方も聴く方も面白いんとちゃうかな。

Q.「Saturday man」はGANさんの娘さんがコーラスで参加していますが、確か娘さんは学校の友達に「お父さんのバンドは解散した」と言ってませんでしたっけ(笑)。
GAN:あははは。そうなんよ(笑)。ほら、今ってSNSで何でも見れちゃうから学校の友達にバレたら裸でビール飲んでるおっさんを観られるのが嫌で「解散した」って言ってるらしい(笑)。でも今回で少し分かってくれたかな(笑)。

Q.娘さんとは普段バンドの話をしたりするのですか?
GAN:しないしない。友達にバレたら恥ずかしいから娘と友達の間でが親父のバンドは解散したって話になってるみたいやし(笑)。でも娘も少なからず音楽に興味を持ち始めてきたみたいよ。まだ小さい頃から休みの日も家にいたことがなかったしゴールデンウィークなんて全部ライブでいなかったから「親父は何をしてるんやろう」って思ってたんちゃうかな。でも今回一緒に歌えて感慨深いものはありましたね。

Q.「君がいないと仕事にならない」って歌詞は娘さんに歌っているように聴こえました。
GAN:そうやって言われるとめっちゃ恥ずかしいな。でも愛の歌やね。

Q.今作はGANさんが伝えたいことがより分かり易くなっている気がしました。
GAN:何年か前からSNSをやるようになって短い文章を書くことが増えたけど、あれも誰かが読んでくれてるから書いてる訳で、人がおらんと成立せんよね。それと同じように音楽でもちゃんと伝えたいから、よりテーマが鮮明になったんやと思う。

Q.GANさんの熱いツイートにグッとくることが多々ありますからね。
GAN:本当はキラーの方がかっこいいんだけどね(笑)。現実的な話をすれば、震災以降みんな愛に傾いたでしょ。やっぱりどうやっても3月11日は大きくて、俺らは何の力にもならんかったけど、あの日は日本のロックを変えた日やと思う。もちろん不幸なことだけど、そのお陰で日本のロックは生き残ったと思うから。

Q.GASOLINEのライブで笑顔になった人は沢山いると思いますよ。
GAN:だから求めてくれる人がいたらそれが1人でも行きたい。好きな話があって、毎日のように全国各地でライブしているあるミュージシャンはお客さんが0人でも途中から入ってくるかもしれないからライブをキャンセルしないんやって。だから俺も欲してくれる人がいるなら歌いたいよね。そして一緒にお酒を飲みたい。

Q.「Bottom up blues」はライブで飲まされるでしょうね(笑)。
GAN:飲むやろうね(笑)。お陰でGASOLINEのライブはビールがめちゃくちゃ出るから店が喜んでくれる(笑)。

Q.ビール、テキーラ、バーボン、スコッチ…と歌っておいて最後の最後で「水でもいい」っていうのが最高ですね。
GAN:オチよね(笑)。いつも今池HUCK FINNでライブするときは「水でもやれる」ってバーテンに言ってるんよ。なのに毎回ビールが出てくる(笑)。あれは店長のクロちゃん(今池HUCKFINN/黒崎)の教育がなってないな(笑)。

Q.そんな今池の酔いどれジプシー的な「Drunk dog」も良いです。
GAN:お客さんがあまり来なくなった時期に俺らを救ってくれたのが今池の酔っ払い達なんよ。今池祭に出させてもらったんだけど、それ以降、今池の酔っ払いがライブに来るようになったから、名古屋の主力は間違いなく今池の酔っ払い達です(笑)。

Q.「ROCK is my life」ではチャゲ&飛鳥のオマージュもあってめちゃくちゃ笑いました。GAN:アウトよね(笑)。歌詞を考えているときにラジオから某事件のニュースが流れてきて、何となく書いただけだから歌詞に意味はないんやけど。でも意味のない歌詞をロックンロールはかっこよく聴かせてくれるよね。

Q.全編英語の「I don’t want to say」とか、歌詞を読みながら訳したんですけど何も意味がなかったです(笑)。
GAN:そうやろ?そういうのがいいよね(笑)。

Q.ザ・フーやザ・キンクスっぽいリフに語呂の良い英語が乗れば意味なんかどうでもいいくらいかっこよくなる。
GAN:そうなんよ。これは俺の推測でしかないけど、ザ・フーだって「My Generation」の歌詞に意味なんかないと思うよ。それが歌っているうちに意味が出てきたんやと思う。それかファンが勝手に意味を持たせたか。それが成立するからロックンロールって面白いし、長くやっていく中で曲の意味合いが変わっていくのって面白いよね。

Q.GASOLINEの曲で昔と意味合いが変わった曲ってありますか?
GAN:あるある。「Aflo Cow」とか、弦1本で毎回やることになるなって思ってもいなかったから(笑)。「Aflo Cow」はデトロイトでライブしたときに弦が2本くらい切れてしまったからやけっぱちで弦を引きちぎってやったら受けたから今でもやってるっていう(笑)。

Q.「SHOUT&SIMMY」の一気飲みも?
GAN:あの一気飲みは元々全然お客さんがいなくて集まった7、8人でお酒を回し飲みしたことから生まれたんよ。それをもうずっとやってるっていう。「いつもお酒が飲めるのはGASOLINEさんのおかげです」っていうのも昔は勿論なかったからね。

Q.ここ数年で「SHOUT&SIMMY」をやらなかったライブってあるのですか?
GAN:1回だけ。でもそれ以外は絶対やってるね。っていうかさ、なんで「GASOLINEさん」で俺が「GANちゃん」なんやろう(笑)。GANさんやんな(笑)。どっちでもいいけど(笑)。

Q.あははは。しかし、そう思うとこれから何が定番になるか分かりませんね。
GAN:それは自分でも分からんなあ。まあ続けてきた中でお約束も増えたし、これからも増え続けていくと思うから飽きずに楽しくやっていこうと思うよ。ガイの物真似もOASISのカバーも偶然生まれたものが定番になっていくし、そういう意味ではまだ幼虫みたいなこのアルバムがどう成虫になっていくか、自分でも楽しみやね。

Q.カバーといえば今回のアルバムでもカバーが2曲収録されています。ゴダイゴの「Thank you baby」は選曲が渋いですね。
GAN:この曲、めっちゃ好きなんよ。ドラマ「西遊記」で溶解が死ぬときに流れていた曲なんだけど、子供ながらにめちゃ好きで。なんか胸は締め付けられるんよね。

Q.もう1曲、「Buffalo Buffalo」というカバー曲がありますが、これは?
GAN:ワタル君(WATARU BUSTER:Oi-SKALL MATES)と正月に飲んだときにワタル君が「バッファローバッファロー」って手拍子しながら鼻歌を歌って変顔するっていう遊びをしていて。そのカバーです(笑)。

Q.調べても出てこないはずです(笑)。
GAN:出る訳ないよね(笑)。ワタル君の鼻歌やもん(笑)。カバーするにあたって一応本人に電話したら「好きにしてください」って言ってた(笑)。

Q.GASOLINEさん、本当に何でもありですね(笑)。そして最後にはエンディングソングにぴったりの「Do you feel alright」でアルバムが締まると。
GAN:「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ!!」で最後にスージー・クアトロの「The Wild One」が流れるような感じをアルバムでやりたくて。そういうブギーで終わりたいんよね。アルバムでこの曲を聴いたらライブに来たくなると思うし。

Q.確かにいつものライブの光景が歌われていますからね。
GAN:俺らのライブを観たことがない人は想像してもらえるやろうし、いつも来てくれてる人はニヤッとしてくれるやろうしね。最後に「あんたらのおかげ」って歌っているのはライブに来てくれる人への愛と感謝ですよ。

Q.「四日市の狂牛」の筈なのに(笑)
GAN:まあこれまで散々狂ってきたからね(笑)。もう25年やってますから。まさかこんなに長くやるなんて思ってなかったし。なんでこんなことになったんやろう。

Q.知りませんよ(笑)。でもGASOLINEさんのおかげで楽しい土曜日をいつも迎えられていますよ。
GAN:こんな格好をして酒を飲みながら「土曜日最高!」ってみんなと乾杯出来るなんて、本当に最高よね(笑)。毎日毎日仕事でさ、ライブに行く気分じゃないときもあると思うけど、俺達はいつも馬鹿みたいにパーティーしてるから、気が向いたらフラッと遊びにきて欲しいよね。そこでは俺達が思いっきり馬鹿やってるから。俺が馬鹿で負ける訳にはいかんからね。まだまだやりまっせ!


GASOLINE
タイトル:FUCK YEAH!
2018年2月21日発売
PX335
2,315円(+税)

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