松岡直哉、落合悠、菊田隆太朗、菊田大二朗の4人から成る名古屋シティポップスバンド、ロストフィルム。2012年の活動開始よりコンスタントに音源のリリースを重ね、現在のラインナップが揃ったのが2015年。バックボーンにあるソウル、ファンク、ロック、HIP-HOP、AORなどを独自の解釈で消化したサウンドは音楽愛で満ち溢れており、文字通り音楽を最大限に楽しんでいるのが楽曲の隅々から感じることが出来る。2018年末にはライブ音源を含む全7曲収録の1st mini album『Everyday Is A New Day』をリリースした彼ら。音楽への飽くなき欲求が詰め込まれた同作について、松岡、落合、大二朗とサポートメンバーのNATTSU(OLD LACY BED)を迎え話を訊く。
Q.今作『Everyday Is A New Day』はディスコファンク的なアプローチだった前作『片思いはスコール』とはまた違うロストフィルムの側面を感じることが出来る作品だなと。
松岡:この1年半、ライブを重ねてきた中でバンドの雰囲気が変わってきて。単純に「こういうライブをすると楽しい」っていうのが分かったというか。それが作品に反映されているのかも。
落合:ライブを通してコミュニケーションをより取るようになったんですよ。その結果、メンバーのやりたいことを以前よりも遠慮なくやれるようになったんです。
Q.「Everyday Is A New Day」なんてまさかのツービートで。
松岡:そうなんですよ(笑)。この曲は落くん(落合)がメロコアをやろうってアイデアを出してくれて。
落合:元々メロコアが好きだったんですけど、あのエッセンスをロストフィルムに落とし込んだら面白いだろうなと思ったんです。
大二朗:今までバンドが得てきたことと、バンドがやったことのないものをチャレンジングにプレイ出来たことが合わさったのがこの曲なのかなって。
Q.手法としてのジャニーズ感も感じるんですよね。
松岡:あははは。
落合:それは新しい意見(笑)。
Q.ジャニーズソングってファンクやジャズをアイドルソングに落とし込むのが上手なんですけど、その感じをロストフィルムから凄く感じていて。
松岡:ああ、でも仲良いバンドの友達にも「SMAPみたいだね」って言われました。ビートがパンキッシュだったり、ハウスっぽいセクションもあって、そこにソウルのメロディを乗せたら上手くハマって。最初はメロコアっぽいメロディを乗せようと思ってフォーリミ(04 Limited Sazabys)を参考に聴いてみたりしたんですけど中々上手く出来なくて。結局戻って70年代のアメリカのソウルになるっていう。
Q.そういうルーツが垣間見えるのは聴いていて楽しいですよね。ファンキーなビートとラップにギターのユニゾンが絡む「Move」とかメンバーの個性が出まくっているなと。
松岡:あのユニゾン、実はQUEENみたいにコーラスでやるアイデアもあったんですよ。でもクラシカルなユニゾンで弾いてみようかって。
NATTSU:ロストフィルムって色んな曲があると思うんですけど、その中でも「Move」はズバ抜けてハッピーな曲だなって思います。サポートで弾かせてもらって凄く楽しいです。
Q.「What About」はメロディに対するビート感が面白い。
大二朗:あれはゆっくりなメロディの動きに相反する電子っぽい細かいビートをやってみたんです。
松岡:HIP-HOPのトラップ以降の感じをソウルの文脈で人力でやるっていうね。
Q.そうやって新しい音楽から古き良き音楽まで貪欲に取り入れるのがロストフィルムらしさだと思うのですが、曲を作る上でバンドが意識していることってありますか?
松岡:うーん、なんだろう。スタジオでもぎゃはははって笑ってばかりだし(笑)。
落合:基本、褒め合ってるからね(笑)。
松岡:ああ、それはでも大きいかも。メンバーのアレンジで「こうくるか!」みたいなのがあるとすぐ褒めるもんね(笑)。それにこのメンバーで音を鳴らすことがとにかく楽しいので。
Q.「お楽しみはこれから」というタイトルもロストフィルムらしさが炸裂していますね。
松岡:映画狂の和田誠さんの著書で「お楽しみはこれからだ」という映画の名台詞を紹介している本があるんですけど、世界初のトーキー映画(発声映画)の第一声が「お前はまだ何も聞いていない。お楽しみはこれからだ」っていう台詞らしくて。それを引用して、僕らも年齢を重ねてきているけど「これからだ」って気持ちを込めて書きました。
Q.この曲は落合くんのギターも凄く良い。
落合:結構アレンジは悩んだんですよ。僕の家で松岡さんと宅録しながら試行錯誤しました。
松岡:これはthe ARROWSリスペクトだよね(笑)。
Q.確かにthe ARROWSの遺伝子を感じます。
松岡:坂井竜二さんに顔が似てるってよく言われますし。(一同笑)
Q.この曲もですけど、ロストフィルムの楽曲からは制作の過程で音楽を楽しみながら作っていることが凄く伝わるんですよ。バンドが楽しくて仕方ないんだろうなって。
落合:本当に楽しいですからね(笑)。前のバンドをやっている頃の話なんですけど、ストイックになり過ぎると褒め合うことを忘れちゃうじゃないですか。それでツキホトトギスのメンバーさんに「バンドは褒め合わないといけないよ」って言われたことがずっと残っていて。ロストフィルムではそういう空気を松岡さんが作ってくれるし、やっぱりこれから先もそういう気持ちを持って音楽をやっていきたいなって思っています。
Q.松岡くんは褒め上手そうだし褒められ好きっぽいですもんね(笑)。
松岡:その通り!(一同笑)
落合:それにメンバーそれぞれが勝手にストイックだから(笑)。
Q.ビートルズの映画「LET IT BE」とかストイックが行き過ぎてギスギスですからね。「Two of us」でのポール・マッカートニーとジョージ・ハリスンの口論とか(笑)。
松岡:あははは。
落合:一緒に音楽を作っている中で間違い探しになっちゃうのは嫌ですよね。
Q.正解は無限にありますからね。そういう可能性を出し合って笑い合えるのがロストフィルムだと。
松岡:うん。本当に良いバンド!(一同笑)
ロストフィルム
タイトル:Everyday Is A New Day
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