BUNS RECORDS発のSideChestが前作シングル「Green / 再三再四」より約半年ぶりとなるミニアルバム『Zap』をリリース。昨年、新メンバーとしてギターに戸田与久を迎え現ラインナップが揃ったことで活動の視野を広げた彼らがバンドの現状をそのまま落とし込んだのが今作『Zap』だ。ツアーを経て培ってきたものがしっかり血となり肉となっていることを証明する全7曲収録のミニアルバムを完成させた4人に話を訊いた。
Q.前作から約半年ぶりの音源となりますが。
伊藤:その前にいいですか?今日は英語禁止でやりましょう!
Q.…分かりました(笑)。では改めて宜しくお願いします。シングルのリリースから…あ。
伊藤:はい負けー!!
戸田:やめましょう(笑)。
Q.じゃあ本当に改めて、シングルを出してバンドの状況は変わりました?
伊藤:ライブに来てくれる人が増えましたね。
松岡:出したことで色んな土地に行けるようになったり…。
伊藤:インタビューっぽいこと言うなよ。爪痕残していこうぜ。
戸田:使えなくなるからちゃんとしようよ(笑)。
伊藤:「松岡くん、かわいい!」みたいな声が増えましたね。
松岡:やめてよ(笑)。
戸田:でもシンプルにお客さんが増えたことでそういう声もよく聞くようになったのは事実ですね。
伊藤:他の3人の人気は全然です(笑)。
戸田:松岡のフォロワーだけどんどん増えるっていうね。(一同笑)
Q.「TRUST NIGHT 2018」ではZepp NAGOYAのステージにも立った訳ですが。
戸田:あの日は立たせてもらった感が強いですね。
伊藤:あの日のライブはDVDにもなっているんですけど松岡がいきなり「TRUST TOUR!」って間違えて叫んでるんですよ。「TRUST NIGHT」なのに(笑)。
Q.あははは。でもあの日のライブやリリースツアーはバンドにとって大きかったんじゃないですか。
伊藤:とにかく金がなくなりましたね。それで滅茶苦茶ピリピリするっていう。
戸田:事故るし、車検もあったし。
小林:これ、真面目な話をしてもいいのかな。
戸田:いいでしょ(笑)。
小林:俺としてはシングルをリリースしたことよりもツアーを回ったことの方が大きくて、本当に色んな経験をさせてもらったしバンドにとって意味のある期間だったなって。
伊藤:え、本当に真面目?(一同笑)
Q.インタビューですから(笑)。シングルのリリース後はかなりの本数のツアーを回ったと思うのですが今作はいつ頃から制作していたのですか?
伊藤:ツアーの終盤にレコーディングがあったんですけど、その1か月前くらいにレーベルに「来月レコーディングするぞ」って言われて。レコーディングの前日まで曲がなかったんですけど。
戸田:短いスパンで曲を上げなきゃいけないっていう。
松岡:レコーディングの週になっても朝まで曲作りをしていましたからね。
Q.でもそれだけ追い込まれて作ったからこその勢いみたいなものがアルバムから感じました。
伊藤:出来ることならスムーズに出したかったですけどね(笑)。わざわざ切羽詰まりたくないです(笑)。
松岡:僕、レコーディングスタジオ付近のインターを降りてすぐ吐きましたからね(笑)。ちょうど胃腸風邪も重なって。そんな中でのレコーディングだったので本当に大変でした(笑)。
Q.そうやって出来上がった今作だからこそバンドの今がそのまま落とし込まれている作品になっていますよね。
伊藤:分かり易く出てますね。
戸田:生まれたものがそのまま出ています。
Q.バンドが前に進んでいく気持ちと、そこに対する戸惑いと、その両方が歌われているなと。
松岡:凄く正直にそのままの気持ちを書いたのでそこは出ていると思います。凄く凝ったものを作ろうと思った時期もあったんですけど、それよりも今自分が思っていることを自分の言葉で書こうと思いました。
伊藤:って言ってるけど歌詞を書いているの殆ど俺だからね。
松岡:俺も書いてるから(笑)。
伊藤:今回は俺が5曲で松岡が2曲だからね。
戸田:喧嘩するなよ!(一同笑)
Q.「Spectator」はまさにバンドの状況を歌った曲ですよね。葛藤を抱えながら進もうとしているなって。
伊藤:周りのバンドが売れてるから羨ましいなっていう気持ちがあって。KUZIRAとかMakiとかmoon dropとかみんな楽しそうじゃないですか。みんな年下だから複雑なんですよ。
戸田:年下のバンドに嫉妬しちゃうのは嫌なんですけどね。
伊藤:「Spectator」って観客とか傍観者って意味なんですけど、キッズだった頃はかっこいいバンドにはかっこいいって素直に思えていたのが自分がバンドをやるようになって悔しさのほうが先にくるようになったんですよ。だから全然ポジティブな歌ではないっていう。
Q.でもそれが原動力にもなりますからね。この曲で言えば後半のオクターブ下がって歌うパートからの畳みかけや落ちサビ後のスネアの連打は悔しさをモチベーションに爆発する感じがありますし。
小林:嬉しい。
戸田:うん。悔しさを糧にこの曲が出来たことはバンドにとって大きいと思いますね。
Q.「Days」でもオクターブ下がるじゃないですか。これはSideChestの必殺技なんだろうなって。
小林:確かに。
伊藤:オクターブ下げがち(笑)。
戸田:シンプルに好きなんですよね。
Q.しかし「Days」も悩んでますよね(笑)。
伊藤:これは会社を辞めるときに書いた曲ですね。俺、バンドをやる為に会社を辞めたんですよ。そのときの心情を書きました。あと、俺達って何故かぽっと出だと思われることが多いんですよ。それもムカついていて、そういううっぷんも歌詞に出てる気がします。
戸田:キレてるよね。
伊藤:いつだってキレてるよ(笑)。だって俺が「頑張ろうよ!」背中を押すような歌を書くのキモいじゃん。
Q.「Act」では「片手間で背中を押されることに飽きてしまった」とも歌っていますしね。
伊藤:ばり尖ってますよね(笑)。ライブとか見てても「そんなことばっか言ってんじゃねえよ」って思ったりしちゃうんですよ。
戸田:それ中々のディスだね(笑)。
伊藤:でもそうじゃない?〇〇の歌詞で元気出る奴なんているのかって。
Q.ではSideChestとしてはどんなメッセージを歌っていきたいのでしょう?
伊藤:松岡はどう?
松岡:特にないです。
戸田:ないんかい(笑)。
松岡:知らないことを想像で書いても意味がないと思うので僕は自分が経験したことだけを書いていますね。
Q.「半醒」も松岡くんの実体験ですか?
松岡:あれは夢の中で好きな子に振られたときに書いた曲ですね。ガンガン泣いて目が覚めたら夢だったっていう。
伊藤:夢オチかよ(笑)。
Q.「離れていないと好きかどうか分からない」という台詞が歌詞の中に出てきますが。
松岡:あれは夢の中で言われた言葉です。遠距離恋愛中の恋人の歌なんですけど。
伊藤:それ、松岡のことだったらバンドの人気に影響が出るから章人(小林)の実体験ってことにしようよ(笑)。
小林:俺はそんなことで泣かないから。
戸田:よく泣くじゃん(笑)。
小林:それは映画を観たときの話だから。(一同笑)
Q.松岡くんと伊藤くんで歌詞の書き方が結構違いますよね。
伊藤:松岡の歌詞は含ませる書き方をするじゃないですか。だからパッと聴いて分からないこともあって「これどういう意味?」って聞くこともあります。
Q.松岡くんは自分が書いた歌詞と伊藤くんが書いた歌詞では歌うときに何か違ったりします?
松岡:かなり違いますね。僕が書いてない歌詞は勝手に解釈して歌っています。歌う僕は僕の解釈でいいのかなって。
戸田:それは聴く人も一緒だろうしね。
Q.解釈という意味では「248」は聴いた人がそれぞれの故郷を思い浮かべるんじゃないかなと。
伊藤:この曲は僕の地元や家族と、地元の友達を想像しながら書いた歌ですね。
松岡:「愛しているよ」って歌詞は誰に向けての「愛しているよ」なの?
伊藤:え?町だから(笑)。
小林:でも家族とか友達とか言ってたから。
伊藤:だって俺彼女いないし。愛する相手がいないから。
小林:別に彼女じゃなくても愛することは出来るでしょ。
伊藤:町、町、豊田市!(一同笑)
小林:家族にだって愛はあるでしょ?
伊藤:まあ、有難いことにバンドを応援してくれているからね。
Q.ではここで2YOUを通して家族への感謝の気持ちを聞かせてください。
戸田:こんな機会中々ないよ。
小林:ちゃんと伝えた方がいいよ。
伊藤:分かった分かった。あまり他のバンドのCDの感想ばかり送ってこないでください。
小林:そこは「愛しているよ」でしょ!(一同笑)
Q.そしてシングルとしてもリリースされた「Green」ですが、アルバムとして聴くとまた違って聴こえますね。
戸田:元々パンチのある良い曲だと思っていたんですけど、アルバムのあの位置に置くことでスルメ曲としての役割もあるんだなって。ツアーを一緒に回ってきた仲間みたいな曲でもあるので思い入れは深いですね。
Q.アルバムのラストを飾る「天晴」のショートチューンも勢いがあって最高です。
松岡:めちゃくちゃ勢いありますよね。
戸田:曲自体はショートチューンなんですけど仕上げるまで一番時間が掛かった曲なんですよ。
松岡:スタジオに入るたびに変わりましたからね。結局レコーディングの前日まで作り直していて。
伊藤:「天晴」はボーナストラックっぽい立ち位置の曲なので、後半のドラムのフィルに戸田さんの「ワンツー!」ってカウントも入れたんですけど、そこはレーベルNGが出ました(笑)。
Q.あははは。改めてどんな作品になりました?
松岡:世に出して恥ずかしくないです。
伊藤:娘か(笑)
松岡:シングルは挨拶替わりだったけど、ツアーを回って自分達に自信も付いたのでそれがちゃんと表れていると思っています。
Q.この作品に『Zap』と名付けたのは?
伊藤:色んな意味があるんですけど、ぶっ飛ばすって意味があって。舐めてる奴らをぶっ飛ばすっていう。
松岡:ぽっと出がこんな凄いアルバムを作ったぞっていうことを叩きつけたいですね。
Q.その説得力がこのアルバムにはあると思います。
戸田:僕ら、本物になりたいんですよ。それが楽曲にも落とし込めたと思うので、あとは聴いて見極めてもらえたら嬉しいです。
伊藤:その日のライブが最後のライブになっても後悔しないような、そんなライブを常に重ねて説得力のあるバンドになっていこうと思っています。
BUNSタイトル:Zap
5/8(水)発売
¥1600(税抜)
BURC-011