ワッペリン


ポップで奇妙、絶妙、名古屋の突然変異、ワッペリンが結成10年目にして初のアルバム、その名も『ワ』をリリースする。ガタゴトガタゴト走り続けてきたこの10年でメンバーチェンジや活動休止を経験しつつ、マイペースながらも着実と進化を繰り返してきた彼らのこれまでとこれからをギュギュっと詰め込んだ今作には初期の名曲「でんち」「森林伐採の歌」や転機となった「目ん玉飛び出る」「生命の誕生」、そして新たなワッペリンが開花した「ノーフューチャー」 など全9曲が収録。満を持してアルバムを完成させたフウジン&長谷川ひろしにワッペリンの歴史を振り返りつつ語ってもらった。ワッペリンと音楽で遊ぼう。

 

 

Q.ワッペリンは今年結成10周年を迎えるそうですが。

フウジン:はい。10年やってます。

ひろし:最初はワッペンさんが始めて。

 

Q.えっと誰ですか(笑)。

ひろし:ワッペンさんです(笑)。あとレッドって奴がいて、前身バンドみたいな感じでワッペンさんとレッドと僕の3人で始めました。それが2008年で、ワッペンさんが辞めてフウジンが入ったのが2009年です。ちょうど10年前ですね。

フウジン:私が入るまではワッペンさんが歌ってたんですよ。

 

Q.すみません、誰ですか(笑)。

ひろし:ワッペンさんです(笑)。

フウジン:ワッペンさんって言いたいだけじゃないですか(笑)。

 

Q.そのワッペンさんがいた頃はどんなバンドだったんですか?

ひろし:ワッペンさんがゆらゆら帝国が好きだったので、そんな感じの曲を僕とレッドで壊すアレンジをするっていう。今のワッペリンの原型みたいな感じですね。

 

Q.フウジンさんはその頃のワッペリンを観ているのですか?

フウジン:はい。でも全然興味なかったです。

ひろし:あははは。ライブもサークルの演奏会でやってたくらいなので。

 

Q.二人の出会いは?

ひろし:サークルですね。変わった声の変わったギターを弾く変わった女の子だなって。

フウジン:当時私はギターだったんですけど、演奏している姿を見て面白いと思ってくれたみたいなんですよ。

ひろし:面白いっていうか、うん、変だなって(笑)。

 

Q.フウジンさんはどんな音楽を聴いてきたのですか?

フウジン:高校までは宇多田ヒカルとか普通にJ-POPが好きでした。ピアノはずっとやっていたんですけどギターを始めたのも大学に入ってからだし色んな音楽を聴くようになったのはひろしの影響が大きいと思います。こんな世界があるんだなってどんどん脳みそに入れていきました。

 

Q.それがここまでおかしく…あ、いや。

フウジン:今「おかしく」って言いましたよね(笑)。

ひろし:あははは。

フウジン:でも本当に何も知らなかったんですよ。そこにひろしの世界観がぶつかってきたんです。

ひろし:当時から変わってる子でしたけどね。服装も見た目も奇抜だったし。

フウジン:私は全然変わってると思っていないんですけどね。でもみんなに変だって言われ続けてきました。小さい頃からアニメやゲームが好きで、その一部になりたい願望が強いんですよ。だからなのかな。

 

Q.一部になりたい願望?

フウジン:例えば鳥になりたかったり怪獣になりたかったり。鳥の羽とか足とか自分にくっつかないかなって本気で思っているので。

 

Q.かめはめ波を撃ちたいとか空を飛びたいとかじゃなくて。

フウジン:そのものになりたいんです。それが今でもずっと続いているんですよ。小学生の頃からずっと。

ひろし:「朝起きたら鳥の足が生えていたらいいな」って本気で言ってますからね。

 

Q.確かにフウジンさんのファッションってカラスの羽が付いていたりストッキングにリアルな鱗が付いていたりしますもんね。

フウジン:それは完全に憧れが出ちゃってるんだと思います。本当は生えたら嬉しいんですけど、生えないんですよね。だからせめて近づきたいなって。

 

Q.そんなフウジンさんがひろしくんと出会うことで音楽的にも目覚めるなんて運命ですよね。足りなかったパーツを見つけるような。

フウジン:ひろしが新しい世界を見せてくれたから、もっとやって良いんだって気持ちになったのでとても大きな出会いだったと思いますね。

 

Q.その出会いがフウジンさんをどんどんアーティストとしてのフウジンさんにさせていくという。

ひろし:初期の頃はフウジンに無機質な言葉を言わせるのが面白くて歌詞を考えていたんですけど、段々フウジンのライブのパフォーマンスが変わってきて歌詞の書き方も変わっていって。最初は本当に無機質だったので。

 

Q.最初に作った曲って何だったのですか?

ひろし:デモ音源に入っていた「ジャングルジムの上で」という曲ですね。ただサビでジャングルジムの上でって言ってるだけの曲なんですけど、先輩達にはよく「ジャングルジムの上で何?」って言われました(笑)。

フウジン:私も歌ってて何も理解してませんでしたから(笑)。とにかく振り切って一生懸命歌っていました(笑)。

 

Q.当時はフウジンさんのスイッチをひろしくんが入れてワッペリンになるみたいなイメージがありましたからね。

ひろし:ああ、それはそうかも。

 

Q.でもここ数年はそれが全然なくなってフウジンさんがどんどん前に出て来ているように感じるんですけど。

ひろし:そこは自分達でも意識している部分ですね。前はMCやライブの進め方も僕が決めていましたけど最近はそこまで介入しなくなって。

フウジン:メンバーが抜けて二人になったときに色々考えたんですよ。やっぱりレッドやその後に入った舟橋さんがバンドを抜けてバンドが低迷しているときだったので色んなことを考えないといけない時期で。

 

Q.その結果、一時は活動休止もしていましたもんね。

フウジン:そうですね。1年くらい休止していました。そんな時期を経て10年目にしてやっとアルバムが出せるので嬉しいですね。本当に。

 

Q.しかし凄いアルバムですね。なんか本当に…なんですかこれ?

フウジン:あははは。そんなインタビューありますか!?こっちは大真面目です!

 

Q.10年間が詰め込まれているので曲の振り幅がとんでもないなと。

ひろし:「でんち」とか「森林伐採の歌」とか最初の頃からやっていますからね(笑)。

 

Q.「でんち」なんて何本目かってくらいアレンジも変わっていますしね。

ひろし:あははは。5本目くらいですかね(笑)。細かいアレンジ含めると5回は変わっています。

Q.「でんち」とか「まめもやし」とか「マイマイ」とか何かを題材に広げていくのはワッペリンの武器のひとつですよね。

ひろし:曲の作り方は結構バラバラなんですけど、言葉先行で作ることが多かった初期はこういう曲がよく出来ましたね。「でんち」は携帯の電池が切れそうになったフウジンが「でででんちでんち切れる!」って言ってたのをそのまま曲にしたんですけど(笑)。

 

Q.そんなポロっと言った言葉が10年も歌われ続けるなんて(笑)。

フウジン:かなり形は変わりましたけどね。

ひろし:僕が結構既存曲をアレンジするのが好きなんですよ。

フウジン:ひろしは飽き性なんです(笑)。

 

Q.「マイマイ」も結構変わりましたよね。

ひろし:「マイマイ」は実はレッドがいる頃にライブでやってるんですけど思いっきり滑りまして(笑)。それでしばらく封印していたんですけど、活動休止を経てフウジンがギターからキーボードに変わったタイミングでアレンジし直して復活させたんです。

 

Q.パートチェンジをしたのはどういう理由だったのですか?

フウジン:変化を求めていたからですね。

ひろし:休止から再開して、そこから1年くらいはギターを弾いていたんですけど、サポートメンバーにギターが入ったしバンドの空気を変える為にパートチェンジすることにしたんです。

 

Q.活動再開後はライブの度にアレンジが変わったりしていましたよね。

フウジン:どん底だったんです。とにかく迷走していました。

 

Q.そこからどう抜け出したのですか?

ひろし:個人的にはフウジンの意識の変化が大きいと思っています。

フウジン:それまではワッペリンはひろしのバンドだって意識が強かったんですよ。でも私が覚悟を決めないと駄目だなって。メンバーも二人しかいないので。

ひろし:それを感じたタイミングでキーボードに転向する提案をしたんです。そこから色々状況が変わっていきました。

 

Q.ワッペリンのひとつのバロメーターとして「目ん玉飛び出る」の良し悪しがあると思っていて。バンドの状態が良い時はライブでの「目ん玉飛び出る」がめちゃくちゃかっこいいんですよ。その逆もしかり。

ひろし:ああ、それはあるかもしれないです。

 

Q.あの曲はワッペリンの代名詞のひとつでもあると思うのですが。

ひろし:バンドが今の方向性になるきっかけの曲ですからね。それまで変てこな曲ばかり作っていたけど「目ん玉飛び出る」が出来てポップな曲が出来るようになったので。

フウジン:メインとして打ち出すつもりはなかったけど結果的にそういう曲になっていったイメージですね。

 

Q.あの時期のワッペリンを象徴する曲ですよね。それが今だと「ノーフューチャー」だと思いますし。

フウジン:あー。

ひろし:僕もそう感じます。「ノーフューチャー」はまずフウジンに「ノーフューチャー」って言わせたかったのと、ニュースを見ていて温暖化で地球がヤバイって言っていたので調べたら50億年後の話だったのを知って「おい!」って思ったことを書いた曲なんですけど(笑)。

 

Q.「森林伐採の歌」も「伐採伐採伐採伐採」ってフウジンさんに言わせたくて書いたと聞いたことがあります(笑)。

ひろし:あははは。しかもこれもニュースを見て「自然がなくなるな」って思って書きました(笑)。基本的にフウジンに言わせたい言葉があってニュースを見ると曲が出来るのかもしれません(笑)。

 

Q.「まめもやし」という言葉のチョイスもですか?

フウジン:私。絶対やりたくなかったんですよ。「まめもやし」って歌いたくなかった。

ひろし:大反対されましたからね。

 

Q.それは何故ですか?

フウジン:「でんち」とかは何の疑問もなかったけど「まめもやし」は何が面白いか分からなかった(笑)。

ひろし:スーパーに突如現れた豆もやしの存在がポップでキャッチーだった時代があったと僕は思っていて。そこを突きたかったんです。

フウジン:絶妙過ぎて全然分からない(笑)。

ひろし:ちょっとニッチだけどね。

 

Q.そんな「まめもやし」をライブでは小さなフリ付きでフウジンさんも歌っているじゃないですか。

フウジン:あれが私の答えです。

ひろし:あははは。

 

Q.ワッペリンの曲って凄く小さな目の前のことを歌っていると思うんですけど、アルバム全体を見ると実は地球規模の生命を歌っている気はするんですよね。ただどれも言葉足らずなだけで。

ひろし:あははは。言葉足らず(笑)。

 

Q.歌詞にならない部分を想像させるというか。

ひろし:確かに想像して欲しいのはあります。

フウジン:「まめもやし」も熱心に聴いてくれた人が「人類がひ弱になったり、草食系という言葉が生まれたことも関係している」って分析してくれていて。

ひろし:そんなこと1ミリも考えてないんだけどね(笑)。

フウジン:でもそうやって想像して遊んでくれたら嬉しいですね。

 

Q.子供の頃に憧れた職業を連呼する「ユメ」も良いですね。

ひろし:あれは大人もときめく夢ソングですね。

フウジン:あの曲で連呼しているものは全部私がなりたかったものなんですよ。ケーキ屋さん、警察官、消防車、バレリーナ、ピアニスト、セーラームーン、お姫様っていう。

ひろし:消防士じゃなくて消防車なのが面白い(笑)。

 

Q.でも怪獣になりたいフウジンさんだから消防車になりたいのかなって(笑)。

フウジン:どれにもなれなかったですね。

 

Q.でも子供の頃には想像出来なかった「フウジン」というものになっている訳で。

フウジン:そうですね。考えてもなかったです(笑)。

 

Q.フウジンさんもワッペリンも規格外ですからね。だからこそこんなにバラエティに富んだアルバムが出来た訳で。

フウジン:ワッペリンらしさがやっと表現出来たので嬉しいです。1曲じゃ出し切れないので。

 

Q.確かに「でんち」だけ聴いたことのある人が「森林伐採の歌」を聴いたら同じバンドとは思えないですしね。でもアルバムとして聴くとどの曲もしっかりワッペリンワールドだし、やっとワッペリンというバンドの全貌が分かるという。それか余計分からなくなるか(笑)。

フウジン:あははは。

ひろし:アルバムを聴いて「?」が浮かぶのはある意味正解かも(笑)。

 

Q.そう言われるとアルバムタイトルの『ワ』もなんとなく「?」に見えてきました。

ひろし:それは考えたことなかったですけど(笑)。でも確かに頭に「?」を浮かばせたいですね。ワッペリンってきっとそういうバンドなんだと思います。

 

リリース情報

タイトル:ワ
2019年6月12日発売
OBOCD-032
1600円(+税)

https://wapperin3.wixsite.com/wapperin

LIVE情報

ワッペリン1stアルバム『ワ』発売記念ライブ
対面式デスマッチ
ワッペリン VS パイプカツトマミヰズ
2019年6月16日(日)
OPEN19:00 START19:30
2000YEN/2500YEN